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本「砂漠の女ディリー」byワリス・ディリー

とてもおもしろかった。
ソマリアで遊牧民の子どもとして育ったワリス・ディリーがニューヨークでスーパーモデルとして活躍するようになるまでの半生記。
砂漠での暮らしについて彼女は淡々と語っているけれど、これがすごい。

「万が一、夕食になにも食べるものがなくても、わたしたちは騒ぎ立てたりはしなかった。だれも泣いたり、文句を言ったりはしない。もちろん小さなこどもは泣くかもしれない。けれど少し大きくなれば、それが砂漠の掟だということを知り、なにも言わずに横になって寝る。食べ物がなくても落ち込んだり、大騒ぎしたりはしない。明日になれば、道は開けるだろう。インシャッラー、神のご加護があれば、きっと食べ物は見つかるだろう。それがわたしたちの哲学だった。わたしたちの暮らしは自然に頼っていて、自然を動かしているのはわたしたちではなく、神だったから。」(p.28)

このような子供時代をすごした人が私とは違った感じ方をするのは当然だろうな、と思える。

彼女は13歳の時、らくだ5頭とひきかえに老人と結婚させられることになり、それがいやで家族のもとを逃げ出した。紆余曲折を経てロンドンで暮らすこととなり、大きなカルチャーショックを受けながら、やがて自分の生きる道を見出していく。いろいろなことにとまどいながら、きっと神への信仰が支えになっているところがあるのだろう(彼女はそれほど敬虔なイスラム教徒という感じではないけれど)、自分は自分らしく生きていけばいいんだ、と未来を信じられる強さがあるのが気持ちいい。

中でFGMについての経験が語られる。とてもショッキングな内容だけれど、こうして実際に切除を受けた人の話を聞くと、やっぱり部外者と言われようと声をあげなければ、と思う。「FGMはその部族の伝統的な慣習なのだから、他の文化に口出しすべきではない」とか、「何事も西洋の価値観を押し付けるのはよくない」と言う人もいるが、FGM は女性に苦痛を与えるのが確実で、部外者が何か言わないことには内部から声をあげるのは大変だし、きっとこれからもこのために苦しむ女性達を作りつづけるのだろうから。そしてワリスも、女性達が苦しむことになるこんな慣習をなくすために、大変な思いをして自分の体験を語っているのだから。

4794209207砂漠の女ディリー
Waris Dirie 武者 圭子
草思社 1999-10

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コメント

『砂漠の女ディーリー』を読みました。割礼の事実を知りとてもショックを受けました。

>部外者が何か言わないことには内部から声をあげるのは大変だし、きっとこれからもこのために苦しむ女性達を作りつづけるのだろうから。

おっしゃる通り声を上げることは大切ですね。また、何よりも多くの人がこのような事実を知らないことが、根源的な問題なのではと思いました。

素晴らしい著書との出会いに感謝です。

投稿: ETCマンツーマン英会話 | 2014.06.10 22:49

ETCマンツーマン英会話さん、

お返事が遅くなってすみません。
FGMのことを初めて知った時は私も大変ショックを受けました。
今もこの慣習は廃止されるべきであると思っていますが、「この慣習はばかげたものだ」という上から目線の態度でのぞむことは問題があるのだろうな、と思っています。
また非常にデリケートな問題でもあるのでなかなかおおっぴらに議論しにくいのも難しいところだな、と感じています。
おっしゃるように、まずはみんながこの問題を知ることが大事だと思うし、ディリーもそう思ってこの本を書いたのでしょう。本はとてもおもしろいのでいろいろな人に読んでほしいですね…

投稿: じゃりんこ | 2014.06.24 21:02

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ほんの少しいいことが起きるまでに、あとどのくらい待たなければならないのだろう?こうした絶望的な状況に、まだあとどれほど耐えなければならないのだろう?わたしは自分の行く先に、なにかいいことが待っているに違いないと信じていた。その希望をつなぎながら、がんばってきたの... [続きを読む]

受信: 2005.06.12 00:11

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