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本「ニッポン貧困最前線」 by 久田恵

副題は「ケースワーカーと呼ばれる人々」で、福祉事務所で働く人々の日常がつづられている。
まず、生活保護を担当するケースワーカー達が、受給者を侮蔑するような川柳を作っていた、ということが問題となった話が紹介される。

「訪問日 ケース(受給者)元気で留守がいい」
「金がない それがどうした ここくんな」

など、ひどい内容で、福祉事務所ではこんな人たちが生活保護受給者に対応しているのか、と唖然とさせられる。
当然、福祉事務所はマスコミその他からの激しい批判にさらされる。
あるいは「福祉事務所の担当者が死ねと言ったから死にます」という遺書を残して亡くなった老女。
あるいは「暴力団が生活保護を不正受給している、福祉事務所は何をやっているんだ」という批判。

新聞やテレビでそんなニュースを聞けば、たいていの人はまったくだ、と思い、福祉事務所の職員を非難するだろう。しかし、著者は、福祉事務所の職員達の仕事を見るなかで、そんな川柳のひとつも詠みたくなるような現状、マスコミでセンセーショナルに報道される事件の裏にある真実を説き明かしていく。

アル中で入退院を繰り返す人がなんとか仕事に就いて自立してくれるように、と必死で手助けするワーカー。
生活保護を受けようとする人たちには多くの場合、人に知られたくないような事情があり、仕事上、その事情を聞かなければならない。そして自分も同じように悩み苦しむワーカー。
そして制度の悪用をする人の存在...

外から批判することはたやすい。
以前、学校で働いていた時、学校批判の記事などを見るたびに思っていた。
多くの教師は必死で子どもと向き合っている。その実態を知りもしないで、と。

ケースワーカーの人たちの大変な日常がよくわかる本でした。

4167529033ニッポン貧困最前線―ケースワーカーと呼ばれる人々 (文春文庫)
久田 恵
文藝春秋 1999-03

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書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。お邪魔します。
私はその川柳のニュース記憶があります。たしか今から18年位前だったように記憶しております。
当時はケースという言葉自体知らなくて、いったい何なのかさっぱり不明でしたが、今になってよく判りました。

この乱暴な侮辱とも取れる川柳ですが、ケースワーカーの実態を良く知れば、この程度は容易いのではないかとも思ってきました。
生活保護の不正受給は数え切れないくらいある中で、この件は単にとんでもない福祉事務所だ、だけで済ましていいものか考えます。
卑怯な人間は、弱者の立場を利用し、或いは自ら弱者に成りすまし、国からの保護を当然の如くせしめ、以降はその『既得利権』を手放さぬようありとあらゆる嘘をつき、工作をします。

そういう現場において一方だけを責め立てるような風潮がこのまま続けば、日本は国挙げてのモラハラ大国になってしまうのではないかと考えます。

投稿: 名がありません | 2010.12.21 02:22

こんにちは。
コメントありがとうございます。

この本自体は、そういう大変なケースワーカーの日常に言及しており、川柳を見て「なんてひどい人達」だというだけでは何もならない、ということを言っていると思います。

ただ、不正受給があるのは確かでしょうけれど、本当に生活保護を必要としている人がいることも確かでしょう。生活保護を受けている人はみんな悪者、みたいな見方が広まったら、本当に生活保護を必要とする人がますます受けにくくなることでしょう。

生活保護というシステム自体にやはり問題があるのかもしれません。ベーシックインカムのようなシステムについてもっと考えていくべきなのかもしれません。

投稿: じゃりんこ | 2010.12.21 10:15

そのとおりですね。

働かざるもの食うべからず、という格言がありますが、これはマッカーサー元帥が言ったよりも太古の昔、旧約聖書に書かれているものです。

ここで気をつけねばならないのは、働かざるものと、働けないものを同等に見做してはいけないということだと思います。

働かざるもの、と働けないものの区別をいち人間であるケースワーカーがどのように判断するのかが焦点になってくるのだと思います。

大阪市は全国でもダントツの生活保護受給者ですが、他の自治体では申請に訪れた人に対し、受給を渋り、大阪に行くように説得する事例があるのだそうです。なんでも大阪市は審査が甘いとか。

先の中国人集団生活保護受給もありましたが、大阪市ではもっと根深い問題があるような気がします。

投稿: | 2010.12.22 02:49

「働かざる者食うべからず」という文を読んで思い出したのが、やはりベーシックインカムのことでした。
「働かざる者食うべからず」よりも「衣食足りて礼節を知る」というのがベーシックインカムの考え方のようです。
以前、「ベーシックインカム入門」という本を読んだときに感想を書いたことがあります。
http://jarinko.tea-nifty.com/blog/2009/04/by-eb83.

生活保護を申請するのって大変なことだと思うんです。自分で申請しなければならないような状況になったとしたら、と考えると。もちろん、申請を審査するのだって大変です。

だから、生活保護をやめて、ベーシックインカム制度にするのはありじゃないかなぁと思っています。

投稿: じゃりんこ | 2010.12.23 09:35

あけましておめでとうございます。本年もいい年でありますように。

さて、おっしゃってるベーシックインカム制度ですが、既に実施している諸外国もあるようで。
公共事業に莫大な投資をするよりはある程度の生活保障を国が行うのは、考え方の一つとしてありなのかと思いますが、結論から言わせていただきますと私は反対です。

理由としては、
・小さな政府=政府の弱体化になる。
・勤労意欲の低下。技術力、競争力の低下。
・考え方そのものが国家主義、社会主義的(ある程度の生活保障を国が行い、以降は必要に応じて働く考え方は社会主義の思想。配給制度となんら変わらない)
・政府が倒れれば国民は共倒れ(20年前のソ連東欧諸国や今の北朝鮮ですね)
・インフラが行き届かず国民の生活は苦行になる。
・雇用が生まれない
・外国人の不法移住の殺到

などです。
日本の某政党も、マニフェストとして掲げていましたが、私は現実的ではないような気がします。
本来、衣食住があれば生きては行けるのでしょうが、国が補償する、しかし生活レベルは原始レベルというのは今の日本人に耐えられるでしょうか。

私は、現実問題として高校無償化や子供手当てのような『配給制度』には反対の考え方です。
それが叶わない人にだけ保護が行き渡る制度の充実で足りると思います。

投稿: | 2011.01.03 12:07

すみません、先日、ベーシックインカムに関する本の感想を書いたページにリンクをはったつもりでしたが、ちゃんとはれれていませんでしたね。
http://jarinko.tea-nifty.com/blog/2009/04/by-eb83.html
です。

現在、ベーシックインカムを実施している国というのはどこでしょうか。ドイツで実験的にスタートする、という話は出ていたようですが。

すみませんが、ベーシックインカムに反対しておられる理由がよくわからなくて。どうして政府が弱体化するとよくないのかがわからないし、ベーシックインカムが社会主義的なら政府は弱体化するはずないんじゃないか、とか、思ってしまいます。

私はベーシックインカムのことをあまり勉強していませんので、議論のお相手となれず、申し訳ありません。

投稿: じゃりんこ | 2011.01.03 17:57

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