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「セプテンバー11」

2001年9月11日の世界貿易センター崩壊事件をモチーフに、世界の11人の監督がそれぞれ11分9秒の映画を作った。それを一本にまとめたオムニバス映画。監督が、アメリカ、イギリス、フランス、日本、イラン、エジプト、ブルキナファソ、メキシコ、ボスニア、イスラエル、インド...と本当に世界各国からで、日本の作品を除いて、実際の9月11日にからめた日を描いており、世界にはいろいろな文化があること、また、そんなにいろいろな国があるのに、一様に、この事件は大きな衝撃を与えたのだなぁ、と感じさせられる。

(以下ネタバレ)

私が一番好きだったのは、インドの監督の作品だ。ニューヨークに住むパキスタン出身のイスラム教徒の家族。彼らの息子がテロ事件の犯人のひとりなのではないか、と疑われ、近所の人たちの家族への視線も冷たいものに変わり始める。母は息子が生きていることをアッラーに祈りつづけ、やがて、事件の跡地から息子の死体が発見されて、彼は人々を助けるためにそこへかけつけたのだ、ということがわかり、疑いは晴れる。

同じ事件も、違う立場の人たちからは、違って見える。9月11日のテロ事件が起きて、ムスリムの人たちは、あるいは中東の出身者は、ただそれだけの理由で、冷たい視線を向けられたりしたのだろう。本当のことが何かわからないままに。怒りの矛先を向けることのできる具体的な何かが必要だった。

同じ事件を違う視点から、というのは、どの作品にも共通していることだが、「アメリカだけが被害者なのか」「アメリカは何をしてきたのか」ということに気づかされるのが、
イギリス、エジプトの作品だ。

イギリスの監督ケン・ローチの作品では、チリからの亡命者が9.11事件の被害者へ手紙を書く、という形で、アメリカのしてきたことが語られる。1973年の9月11日、チリではアメリカに後押しされた軍部がクーデターを起こし、民主的な政権が崩壊させられた。私はこのことは全然知らなかった。

エジプトの作品では、レバノンでの自爆テロで死亡したアメリカ軍兵士とある映画監督との対話の中で、アメリカによって死亡した人の数について、ベトナムで、広島長崎で、パレスチナ、アフリカで...と具体的な数字をあげ、あるいは無数、という言葉で語られる。「罪もない人をまきこむテロというのはまちがっている」というアメリカ軍兵士の言葉に対し、「アメリカもイスラエルも民主国家で、政府は民主的に選ばれた。それを選んだ国民にも責任はある。」と、テロを起こす側の論理も示される。

イラン、ブルキナファソの作品は子ども達が主人公となっていて、私は好きだった。

イランのアフガン難民キャンプ。教師が一所懸命子ども達を学校に連れてこようとし、ニューヨークの事件の悲惨さを伝えようとする。決してゆとりある生活をしているとは思えない子ども達の、教師の話を聞く瞳、率直な物言いが好きだ。ある種悲惨と思えるような状況下で、子ども達はどうしてあんなに明るいのだろう。「これは映画なの?」と思うくらい、子ども達の自然な表情が印象的だった。

ブルキナファソ、アフリカの一国。それ以上のことを何も知らないが、こんな映画が撮られるんだ、ということが驚きだった。子ども達がオサマ・ビンラディンが自分達の村にいるのを見つけ(?)、捕まえて賞金を獲得しようとする。賞金が手に入れば、病気の母親の薬が買える。エイズで苦しむ人を救うことができる。大人には言えない。大人はお金をろくなことに使わないからだ...奮闘する子ども達の様子がいとおしい。どんな社会でも、子どもは希望のとりでとなるかもしれない。

多分私が歴史を知らないせいでよくわからないもの(ボスニア・ヘルツェゴビナ)もあったが、ひとつひとつなかなかおもしろいものだった。

日本の作品は、映画としては悪くないと思うが(私にはあまりピンとくるものがないけど)、11作品のうちこれだけが9・11をからめていないのでちょっと残念な気はする。明らかな反戦メッセージはあるけれど、個人的には、こういう作品であるのなら、現代の日本を描いてほしかった。

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