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育児放棄された子どもの発達について

放送大学「乳幼児心理学」の第一回目の講義があった。朝からいそいそとビデオの予約をしたのに、手違いがあって録画に失敗。どっちにしても、学生証を作りに一度は学習センターに行かなければ、と思っていたから、午後から出かけた。

視聴覚室でビデオを貸してもらって見る。
第一回目の講義は「人間発達の可塑性」。その中で、育児放棄の状態におかれていた子どもの事例がとりあげられた。小屋に閉じ込められてほとんど世話されない状態だった姉Fと弟Gが救出されたのがそれぞれ6歳と5歳の時。その時は言葉は話せず、歩くこともできず、身体発育も1歳半くらいの状態だったという。施設に収容され、治療プロジェクトが開始された。

身体面はふたりとも環境の改善により著しい発達を示す。言語面、社会的な発達に関しては姉Fのほうが弟Gよりも常に順調だった。Fは担当の保育者にすぐになついたが、Gはなつかなかった。そこで、大人との愛着の度合いを見るために、ストレンジ場面手続き(Strange situation procedure) という手法が用いられた。

子どもと保育者を一定時間一緒に遊ばせる。しばらくすると保育者が立ち上がり、ドアを閉めて出て行ってしまう。そこへ見知らぬ人がやってくる...という設定。
保育者と機嫌よく遊んでいたFは、保育者が突然立ち去ってしまったので後追いし、なんとかドアを開けようとする。見ていて可哀想になってしまった。あの保育者の人はきっとこんな実験はやりたくなかったのではないかなぁと思う。治療プロジェクトを組んでいた大学の先生達にとっては、この子達は興味深い研究の対象だろう。でも、保育者と子どもは懸命に信頼関係を築いてきたのだ。この短時間の実験で信頼関係がくずれてしまうことはないだろうけど、こういう実験には抵抗を感じる。私は学者にはなれないかな。

FとGで救出後の発達の状態に差があったのはどうしてか、という点についていろいろ考察され、ひとつには、Gが生まれた時、家庭は経済的に最悪の状態にあり、GはF以上に母親からかまわれなかった、ということがあげられる。だから、乳幼児期のまわりの大人と子どもの関係が大切なんだ、と言われ、しかし、青年期になっても発達する可能性はあり、「初期の母子関係のみが人間を発達させる決定因ではなく、後からでもやり直しがきくという希望を私たちに抱かせてくれる」と結論されるのがなんとなく中途半端な感じがするが、まあ確かにそのとおりなのかもしれない。

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学問・資格」カテゴリの記事

コメント

じゃりんこさんこんにちは。とても興味深い話題ですね。あとから来る見知らぬ大人がどういうattitudeで接するのか、というところに興味があります。それと余談ですがじゃりんこさんの影響でココログ使い始めました。あちこちいじって楽しんでいます。

投稿: 塩野 | 2004.04.05 16:35

塩野さん、コメントありがとうございます(^^)。
見知らぬ大人は、黒っぽい服装に黒めがねの男性という、子どもの不安をことさらあおるような設定で、態度自体は優しく手をとろうとしたり、という感じでした。が、Fは、その手を払いのけ、なんとかドアを開けようとしていて、見ていて痛々しかったです。

塩野さんのサイト「ない袖は振れない」が更新されなくなってしまうのはちょっと残念なような、でも、ブログになるのもちょっと嬉しいような(^^)。どんなサイトになるのか楽しみです。

投稿: じゃりんこ | 2004.04.05 20:03

はじめまして。
大学のプレゼンのために“strange situation procedure”について調べていてこのBlogにやってきました。
昔、授業で“strange situation procedure”をいろいろな国の人を対象に行った時に
日本人の母親多くがこの実験を拒否したり、
実験後に子どもに謝るという行為を行ったそうです。
教授に「日本人はAttachmentがしっかりと出来てるんでしょ?」
と聞かれた時、今でもちゃんとAttachmentが行われてるか分からなくて、しっかりと答えられませんでした・・・。
でもじゃりんこさんの「あの保育者の人はきっとこんな実験はやりたくなかったのではないかなぁと思う。」という文章を見てうれしくなっちゃいました。

投稿: ユリ | 2005.03.19 06:49

ユリさん、はじめまして(^^)。
海外で学生生活をおくっておられるのでしょうか。
実は私も今の日本の子育ての状況をあまり把握していないので(^^;)、このままじゃ比較文化みたいな卒論は書けないな、と思っています。
母国語が英語か日本語かで、子どもの性格形成に違いがでてくるか、みたいなことをやってみたい気もしているんですが、まだはっきりとテーマが決められずにいます。
子どもの成長を追うにしても、子どもを実験台みたいに扱うことには何か抵抗を感じますね。

投稿: じゃりんこ | 2005.03.19 20:26

日本語を話す子どもについてのジャーナルを読んだ記憶はあるのですが
内容を忘れてしまいました…。
数に関する概念とかそんな感じだった気はするのですが…。
心理学の授業で日本人とポリネシア人だけ脳の構造が違うって習いました。
確かそれも言語によって違いが出てくるとか…。
話す言葉によって子どもの成長や人格形成に違いがあると思います。
おもしろそうなテーマですね。

投稿: ユリ | 2005.03.20 00:45

ユリさん、コメントありがとうございます(^^)。
脳の構造については、黒人と白人で脳の構造が違う、みたいなことが言われて差別的に扱われてきたことがあったようで、気をつけて話を聞いたほうがいい点があるのかもしれません。
言語の違いで性格形成に違いが出てくるか、というような話は、「わたしとあなた」http://jarinko.tea-nifty.com/blog/2005/03/post_6.html
という記事で私の問題意識をちょっと書きました。
興味がおありでしたら読んでみてくださいね。
ユリさんも大学でそういう勉強をされているのでしたら、また私がお世話になることがあるかもしれませんね。今後ともよろしくお願いいたしますm(^^)m。

投稿: じゃりんこ | 2005.03.20 23:25

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