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放送大学面接授業「人種と民族」

講師は本多俊和(スチュアート・ヘンリ)先生。大変パワフルで楽しい方だった。自分の研究を本当に楽しんでやっておられることがわかるし、ユーモアのある話し方で、生徒をぐんぐん惹きつける。

放送大学の面接授業は、講師によって違うが、とにかく出席すればあとは簡単なレポート等で単位が認定されることが多いらしい。本多先生は「それでは授業じゃなく、カルチャーセンターだ」とおっしゃる。カルチャーセンターも悪くないが、久々の「授業」の雰囲気は楽しかった。先生が質問し、生徒側も疑問点はどんどん出していく。放送大学の面接授業は、基本は135分授業が5回分、という設定で、集中型だとほぼ丸二日かかる、というものなのだが、時間の長さを感じさせない。昨日、先生が「明日はこういうビデオを見せる」と話しておられたのだが、授業が盛り上がってビデオはすっかり忘れられていた。設定された終了時刻がきて、誰かがビデオのことを持ち出し、先生は「じゃあ時間のある人は見ていって」と延長講義。ほとんどの人が残っていた。よき研究者が必ずしもよき教育者であるとは限らないと思うが、本多先生が教育者として素晴らしい人であることはまちがいない。

おもしろいのは、もちろん、内容に興味があるからではある。「文化人類学」は後期の授業で登録を申請中だ。人種、民族、文化、というものについて、ふだん、わかったようなつもりでいるが、きちんと定義しようとすると、結構あいまいなものであることがわかる。

一般に、人種とは、生物学的、身体的特徴によって人間を分類したもので、黒色、白色、黄色、というふうに肌の色による分類が広く行われている。しかし、本多先生は、「人種というのは科学的な分類ではない」と言われる。ヨーロッパ人がアメリカ大陸へやってきて植民地支配を始めた時に、植民地経営をやりやすくするため、人種による役割を固定した。人種というのは差別に利用されてきたので、廃止すべきである、と。

一方、民族とは、共通の文化(宗教、慣習、伝統、生活様式、芸術など...)を持つ集団だが、こちらは尊重されなければならない。とはいえ、民族というのは固定されたものではなく、分裂したり、消滅したり、融合したり、出現したりするものである。

本多先生は、自説について、時間の関係で十分な根拠を示しておられない部分はあるので、自分でもう少し勉強してみたいと思う。いくつかおもしろそうな本も紹介されていたので読んでみるつもりだ。

民族の独自性は尊重すべきだ、と私も思うが、世界各国で起こっている紛争はほとんどが民族紛争であることを思うと、独自性を大切にしながら、どうやって共存していけるのか、というのが問題だと思う。

アメリカは移民の国で、英語以外の言葉を母国語とする人たちの数がどんどん増えてきた時に、その人たちをどう扱うのか、ということが問題となった、と「アメリカの歴史」で習った。移民は合衆国社会の主流と同じような文化や価値観をもつべきだとする同化論。多様な文化や価値観を持った人々が集まってくる合衆国では独特の「アメリカ人」が誕生するのだ、という坩堝論。移民のもちこんだ種々の文化や価値観と合衆国主流の文化とが共存していくべきだとする文化多元論。...現在のアメリカでは、それぞれのエスニックグループの独自性はなるべく尊重しよう、という姿勢はあると思う。しかし、公用語は英語、ということで、どのエスニックグループも「アメリカ人」としてのアイデンティティを持つことが期待されているのだろうか。独自性を主張するばかりでは、共存していくことはむずかしいのでは、という気がする...

いろいろ考えてみたいことがでてきて、本当に有意義な授業だった。

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コメント

おはようございます、
 土・日はご苦労様でした。僕よりも授業を的確にまとめていますね。見習わなくちゃ。
 これからは大学のメールで連絡を取り合いましょう。

投稿: 本多俊和 | 2004.08.16 11:01

わぁ、本多先生からコメントがいただけるなんて、感激です(^^)。

「民族幻想論」、ネットで注文しました。その他、いくつかの本は図書館で探すつもりです。

久々にとても勉強したくなりましたが、この気持ちがいつまで続くか(^^;)...
また先生の授業を受けられればいいのですが、来年は少なくとも放送授業があるのですね。そちらも楽しみにしています。

投稿: じゃりんこ | 2004.08.16 15:35

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