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本「封印作品の謎」by 安藤健二

”Passion for the Future" で紹介されていて読みたくなり、図書館にリクエストしていたのが先日ようやく来た。

なんらかの理由で発売元が自主規制して世の中に出ることのなくなった封印作品。それらの作品が封印されたのにはどんな事情があったのかを探った本で、とりあげられているのは、「ウルトラセブン」「怪奇大作戦」というテレビ番組のなかのそれぞれ一話、「ブラックジャック」という漫画のなかの二話、映画「ノストラダムスの大予言」、パソコンソフト(?)「O157予防ゲーム」。

ウルトラセブンやブラックジャックにも封印されている作品があるとは知らなかった。
封印された理由は、被爆者、「障害者」団体などからの抗議を受けて。結局、作り手の側が、作品で描かれた側の痛みに気づかなかった、間違った認識を持っていた、と感じて封印した、という印象を受ける。

封印してしまうことで、作品で提起されていた問題について議論する機会も封印してしまうのが残念、というものもある。たとえば、「怪奇大作戦」の「狂鬼人間」という作品は、「心神喪失者の行為は罰しない」とする刑法39条への問題を提起したものだったという。私もこの規定を疑問に感じることがあるし、考えてみたい問題だ。ただ、やはり、精神障害をもった人に対する偏見を植え付ける可能性があるなら、封印されてしまうのもしかたないかな、と思う。

でもこの本のなかで一番生き生きと書かれていたのは、やはり著者自身が関わりを持った「O157ゲーム」だ。埼玉県がO157予防のための教育ソフトを小中学校に配布することを計画していたのだが、そのソフトのキャラクターに18禁ソフトのキャラクターが使われていたことが問題となって県は監修を降りた。一般ソフトとしては発売されたので封印作品ではないが、その当時新聞記者だった著者は、このことを記事としてとりあげたため「封印」に関わったと感じ、それがこの本を書くきっかけになったのだという。

著者は97年、神戸児童連続殺傷事件が起きたとき、「容疑者が未成年であるという理由で情報を隠匿するのはおかしい、写真や実名を公表すべき」という立場でホームページを立ち上げた人。私は未成年の容疑者の実名や写真を公表すべきではない、と思っているから、著者とは立場が違う。自由の国だから、どんな表現も可能で、誰でも何でも知る権利があるか、というと、違うだろう、と思う。たとえば手塚治虫氏の場合は、自分から封印したい、と考えておられたふしがあり、作者が望むならそのままにしておくのがいい気もする。自分の認識の過ちがあった作品を残しておきたくはないのだろう。

でも、封印されるとかえって、どうしてなんだ、と知りたくなるのが人情。だからこんな本も書かれるし、読まれもする(私もそのひとりだ)。封印作品にはプレミアがつき、オークションで高い値で取引されたりしているらしい。いったん世に出た作品は、完全に消し去ってしまうことはできないのだ。「間違っていた」と認めることは可能だけれど、自分のしたこと、作り出したものには、責任をもたなければならない、ということなのだろう。(って、これが、著者の言いたかったことではないと思うけど。)

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コメント

私も昨年この本に興味を持って読みました。
ところでこの著者ですが、今度は『封印された『電車男』 』というのを2月に出しています。
封印シリーズをずっと書いていくのでしょうかね?:-)

投稿: fumi_o | 2005.03.22 18:24

fumi_o さん、コメントありがとうございます(^^)。

「封印された電車男」なんていう本があるんですね。アマゾンで見てきました。
「電車男」は膨大な生ログの約6パーセントしか収録していなかったとは知りませんでした。でも、2ちゃんねるの書き込みってどうでもいい部分もたくさんありそうだし、誰かが取捨選択してくれたらいいなっていう気分もあります。「真実」じゃないかもしれないけど。
実は「電車男」も図書館でリクエスト中なんですが、すごい待ちが出ていたので、読めるのは当分先になりそうです。

投稿: じゃりんこ | 2005.03.22 21:29

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