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本「なぜ戦争は終わらないか」by 千田善

副題は「ユーゴ問題で民族・紛争・国際政治を考える」。今週末の放送大学面接授業「現代の国際政治」で、「読んでおくのが望ましい」とされていたので読んでみた。読んでみて「なぜ戦争は終わらないか」ということがわかったわけじゃないし(著者も、「紛争の原因をさぐり、それを取り除いていこう」という立場だから、もう少し違う題名をつけてもよかったのかもしれない。これだと、「戦争は終わらない」ということが真理であるように聞こえてしまう)、ユーゴ問題がわかったともいえないけど、いくつか、へぇ、と思ったり、なるほど、と思ったところがあるので、3点だけ(といってもずいぶん長い(^^;))、書き留めておきたい。

1:国際法は、一般社会の法律とはかなり違う。たとえば、戦争のやり方は国際法で定められていて、戦争中に兵士が相手の兵士を撃ち殺しても、罪に問われない。兵士ではない民間人を殺したり、捕虜を虐待するなどした場合は「戦争犯罪」となる。つまり、ある意味で殺人も合法化しているのが国際法だ。

「何をもって戦争とするか」ということについて明確に定めている条約はなく、NATO によるコソボ空爆について、アメリカは「戦争ではない」という立場をとっている。「戦争ではなく、人道的介入」だとする立場だ。

いままでの国際法は、各国の国家主権を基礎にして成立してきていたので、「独立国内部のことはその国が決める」という前提で、「国家主権尊重」「内政不干渉」が原則だった。ところが、ある国の内部でひどい人権抑圧が行われている場合(たとえば、南アフリカでは少数派の白人が政治権力を握り、多数派の有色人種の国民を厳しく抑圧していた)、国連が介入してもよい、という考えがうまれ、それにもとづいて、武器輸出禁止や経済文化交流の禁止などの制裁が課された。こうして「人権問題は単なる国内問題ではない」という考え方が広く支持されるようになった。

コソボでは多数派のアルバニア人がセルビア人によって虐待されている、という事実があったのだが、アメリカが空爆に参加したのが純粋に「人道的介入」であるかについては疑問が残る。アメリカは「人道的な問題」があるときにはいつも介入しているわけではなく、介入することで自国に利益が生まれる場合に介入しているようにみえる...

2:1999年3月に始まった NATO によるコソボの空爆の背景として、コンピュータの2000年問題(Y2K)があったのではないか、と考えられている。コンピュータ上の日付が、99年から00年に変わるとき、コンピュータが誤作動を起こすことが恐れられていたが、軍事技術についても例外ではなく、戦闘機の航行システムや核兵器の発射装置など、場合によっては大事故につながる危険があるため、大規模な修理が必要だった。修理よりも廃棄のほうが面倒でない、という考えもあり、それよりさらにいいのが、実際の戦争で使用・消費することだった...

3:旧ユーゴスラビアで、一箇所だけ戦争が起こらなかったのがマケドニアである。独立マケドニアの初代大統領キーロ・グリゴロフは「絶対的平和主義」政策をとり、軍事的あるいは経済的に不利になる条件でも、紛争の激化につながりそうなことでは争わず、黙って全面的に譲歩した。「平和」こそが守るべきものである、という立場をとった。

これは現実にはかなりむずかしいだろうな、と思う。たとえば、竹島とか尖閣諸島の問題で、日本が全面譲歩すれば、紛争は避けられるだろう。でも、納得しない人も多いだろう。竹島とか尖閣諸島の問題の経緯を私はよく知らないまま、言うならば、「日本のものである」と主張する必要があるのだろうか。明らかにどちらかに所属する、というものでないのなら、共同管理とかそういうことができないんだろうか。日本だけが豊かになる必要はないのに...と思ってしまう。

まだ頭の中はすっきりした状態じゃないけど、今週末には、著者の先生から直接授業を受けられるのは楽しみだ(^^)。どうしたら戦争を防げるのか、終わらせられるのか、そのためにはやはり軍事力を持つ必要があるのか...そんなことを考えてみたい。

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コメント

じゃりんこさん、こんにちは^^
>介入することで自国に利益が生まれる場合に介入しているようにみえる
これは、良し悪し好き嫌いなく考えて「せやろな」と思います。

>コンピュータの2000年問題(Y2K)
これは知りませんでした。ショックでした。
「人道」なんて口にする人がこういうことしないでよ、と思います。

>竹島とか尖閣諸島
私もよく知りませんが共同管理って、思いつかなかったです。
できたらおもしろいなぁ

>日本だけが豊かになる必要はないのに...
お互いが自分とこのことだけじゃなく共に栄えるという
考えができればいいのにと思いますね、純粋に。

投稿: ぴよ♪ | 2005.05.14 09:07

ぴよ♪さん、ども(^^)。こんな記事にコメントつけてくれて嬉しいです。コメントはいつも嬉しいけど、これは、書いたものの、読んでくれる人なんているかなぁ、って思ったから(^^;)。

うん、Y2Kの問題は、私も「そうだったのかー」という感じでした。もちろん、アメリカは公式にそんなことを認めているわけではないのですが、修理の必要なシステムの数が空爆後に激減したり、などの数字が残っているそうです。

今日は、千田先生の授業を受けてきたのですが、アメリカの勝手なやり方はそこでも話されていました。誰にも止められないのかなぁ。

共同管理っていうのは、私も思いつきだけなので(^^;)...でも、この本のなかでも言われていたのは、民族主義だけが原因で戦争が起こるわけじゃないっていうことです。領土とかお金とか自国の利益がからんでくる。竹島をめぐって戦争が起こる可能性は否定しきれないけど、戦争はなんとしても避けたいですね。

投稿: じゃりんこ | 2005.05.14 22:15

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