« 放送大学ラジオ教材インターネット配信 | トップページ | 映画「亀も空を飛ぶ」Turtles can fly »

本「彼女の「正しい」名前とは何か」by 岡真理

副題は「第三世界フェミニズムの思想」。放送大学の面接授業「現代の国際政治」を受講したときに「論文の書き方」という小冊子をもらったのだが、それを書いていたのが岡真理さんだった。明快でわかりやすい文に魅せられてこの人の書いたものを読んでみたいと思い、ネットで検索して見つけたのがこの本。

読んでみると、思っていたより哲学的で、今、私が考えてみたいことと重なる部分があまりなく、思いっきりななめ読みになってしまったが、ひとつ強くそうだなぁ、と思ったことがあったので書き留めておきたい。

主にアフリカで現在も行われている女性性器切除(FGM)という慣習について。私はこの制度のことを知ったとき、「そんなひどいことが行われているなんて」と思い、その廃絶のために何かしたいと思った。「それはその地の文化なのだから、外の者が口出しすべきじゃない」という意見に対しても、現実に、これによって身体的に苦しんでいる女性が大勢いるのだから、文化という名の下にこの制度の存続を許すのはおかしい、アフリカの女性達がなかなか自分達からは声をあげにくい状況にあるのなら、おせっかいでもまわりから廃絶を訴えていくべきだ、と思った。

私は、女子の割礼のような問題にばかり目をやり、それをアフリカやアラブの国々の女だけが異常で野蛮な抑圧を受けていることを示す証拠にする、欧米の女たちの意見には賛成しない。私は、そのような問題だけを孤立させて取り上げ、それらを、至る所で女たちにのしかかる経済的・社会的困難と、先進国および発展途上国の女性に日常的にかけられている抑圧から切り離そうという試みには、全て反対する。(サアダーウィー) p.101
抑圧を受けているのはアフリカやアラブの女たちだけなのか。そこの人たちは自分達の受けているひどい扱われ方に気づいていないから、先進国の女たちが「啓蒙」していかなければいけないのか。先進国の女たちはアフリカの何を知っているというのか。
そうした男性(女性を快楽の道具として扱うような男性)は、おそらくいるだろう。日本にもいるし、アメリカにもいるし、アフリカにだっているだろう。しかし、問題なのは、アメリカで女性が何分に一件という割合でレイプされ、FBIの統計によれば一年間に1400人もの女性が夫に殴り殺されている(ナラヤーン 1997:98)と知っても、私たちは、アメリカ人男性をそういった、たった一つの否定的なイメージだけで理解したりはしない。なぜなら、優しい父親や夫、理解ある恋人といったアメリカ人男性のさまざまなイメージを私たちはすでにもっており、また、アメリカ社会やその文化のすばらしい面についても多々、知っているからである。けれども、アフリカの文化について、それこそ植民地時代と大差ないイメージ以外ほとんど何も知らないで、妻の身体を自分の快楽の道具にして切り裂いたり、縫い合わせたりするアフリカ人男性というイメージが強調されたら、それは、私たちのアフリカ認識にどのような効果をもたらすだろうか。p.134
確かに私はアフリカのことを知らない。知らされる情報はごく限られたものだ。もし、アメリカの映画を見ることもなく、アメリカ文化に日常的にさらされているようなことがなくて、「アメリカでは女性が何分に一件の割合でレイプされている」と聞けば、アメリカに対してどんなイメージを持っただろうか。そんな状況をなんとかしなければ、と立ち上がったとして、そのこと自体は悪いことではないとしても、「なんてかわいそうな国」と言われたアメリカ人は「アメリカをそんな目だけで見るのはやめてちょうだい」と言いたくなるだろう。

多分、それと同じことがアフリカの女子割礼の問題に対しても言えるのだろう。著者もこの制度には基本的に反対している。ただ、先進国の人々がこの廃絶を訴えるやり方が、アフリカの文化を知りもせず、「遅れた」アフリカを先進国並みに、という態度であることに対して反発を覚えるアフリカの人たちがいること。その制度を守ろうとしているわけじゃない。でも、アフリカにあるのはそれだけじゃないのよ、と言いたくなる気持ち。

先進国の女性達がFGM廃絶を訴えるのは、もちろん善意から、ヒューマニズムから出てきた行動であるのだけど、その行動がアフリカの人々の誇りを傷つけている場合もある、ということに気づいていない。私自身、そういう無神経なところがありそうだ(--;)...

|

« 放送大学ラジオ教材インターネット配信 | トップページ | 映画「亀も空を飛ぶ」Turtles can fly »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/17663/6098077

この記事へのトラックバック一覧です: 本「彼女の「正しい」名前とは何か」by 岡真理:

« 放送大学ラジオ教材インターネット配信 | トップページ | 映画「亀も空を飛ぶ」Turtles can fly »