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映画「アルナの子どもたち」

アルナというのはこの映画の監督ジュリアーノ・メル・ハミース氏の母。彼女はパレスチナの難民キャンプで、子ども達に絵画や演劇を通じて自己表現することを伝えてきた。

パレスチナと聞いて今思い浮かぶのは戦争、難民、貧困だろうか。そこで何故、絵画や演劇なのか。イスラエル軍に家をこわされて呆然としている子どもにアルナが問う。「家をこわされてどんなふうに感じた?」...怒りを感じたら、それを表さなければ。怒りは外に出さなければいけないのよ。紙を破き、怒りの気持ちを絵筆にこめる子ども達。

劇の練習に嬉々として取り組む子ども達が映し出される。アラブの王様とお姫様の物語。演じる子ども達も、見ている子どもやおとなの表情も明るい。将来、役者になれれば、と夢を語る子ども達。これが1990年代に撮影されていたフィルム。

2002年、イスラエルのシャロン首相はかつてない規模でパレスチナ自治区への武力攻撃を開始。アルナの作った「子ども劇場」のあるジェニン難民キャンプへの攻撃はとりわけ激しかった。ジュリアーノ監督はジェニンに入って、「子ども劇場」で活動していた子ども達に会う。彼らは銃を持つ戦士になっていた。

自殺攻撃に向かう前に遺言ビデオを撮影していたユーセフ。「両親も友達も悲しまないで。」...彼の子ども時代の映像がオーバーラップする。ひょうきんものでひときわ明るかったユーセフ。そして、死を決意した硬い表情。どうせ死ぬのだ。何もしないで死ぬよりも、少しでもイスラエルに損害を与えられるなら。「イスラエル兵に撃たれた少女を病院に運ぶ途中、彼女が彼の腕の中で死んだ。それから彼は変わった。笑わなくなった。」と友人が話す。

この映画の上映を主催したのは「パレスチナ子どものキャンペーン」というNGO団体だが、上映にあたっては会のなかでも議論があったという。「結局アラブ人はテロリストになる」というようなイメージを助長してしまうのではないか、と。ジュリアーノ監督にも、「子ども時代、怒りを絵や劇で表現することを学んでも、結局何もならなかったではないか。アルナのしたことは何だったんだ。」というような質問がなされることが多いという。

アルナは子ども達に自分で考えて生きていける力をつけようとした。そして、その結果、子ども達は銃を持つことを選ばざるをえなかった。そういう現実。そういう現実を変えるために私達ができることがあるのではないか...

アルナはユダヤ人で、パレスチナ人の男性と結婚してジュリアーノが生まれた。ジュリアーノは若い頃は、自分のアイデンティティの確立に悩んだそうだが、この特異な立場を映画制作に活かし、パレスチナにもユダヤにも入り込んで取材をすることができた。映画に感傷的な雰囲気はなく、淡々と事実を描いている。そして遊ぶ子ども達の笑顔が印象的だ。そう、子どもは遊ばなくちゃいけない。笑って夢を持っていてほしい。最後の場面で「戦おう」と歌っていた子ども達がもっと違う楽しい歌を歌えるようになってほしい。

パレスチナ子どものキャンペーン」では今各地で上映会を開催しようとしている。パレスチナの現実を知るにはとてもいい映画だと思うので、機会があったらぜひ見てみてください。また、地域やサークルなどでの上映を希望する場合も問い合わせをしてみてください。近いところでは、今週土曜に大阪で上映会があるようです。

「パレスチナ子どものキャンペーン 事務局からのお知らせ」
ここの2005年11月22日の記事です。

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ネタバレ100%(ご注意を!)の「アルナ子どもたち」の感想です。 [続きを読む]

受信: 2005.12.07 16:52

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