ハマスの圧勝とムハンマドの風刺画の関係
「パレスチナ子どものキャンペーン」が主催する講演会「パレスチナ選挙を読み解く」に行ってきた。講師は板垣雄三氏。ゲストスピーカーがイスラム政治思想研究所所長のアッザーム・タミーミさん。タミーミさんはイギリス在住のパレスチナ人で現在ハマスについての本を執筆中とのこと。
1月末に行われたパレスチナ評議会選挙でハマスが圧勝したことについて、アメリカなどは「中東和平の弊害になる」と言っているし、イスラエルは「交渉の相手とは考えない」と言っている。しかし、ハマスが勝利することは十分予想されたことだった。パレスチナ自治政府を担ってきたファタハの腐敗、イスラエルとの関係改善がすすまない現実、そんななか、教育や福祉事業を積極的に行ってきたのがハマスだった。日本にいると、ハマスはイスラム過激派、とのイメージが強調されているが、大変民主的に行われたこの間の選挙で、パレスチナの人たちの支持を集めたのはハマスなのだ。
一つ興味深かったことは、何故ムハンマドの風刺画問題が今頃になって持ち出されてきたのか、ということ。デンマークの新聞が風刺画を掲載したのは去年の夏のことだ。それをこの時期にわざわざ持ってきたのは、イスラムはこわいもの、わけのわからないもの、というようなイメージを与えることで、ハマス勝利の意味を薄めようという意図がある。また、最近になってイラクのシーア派とスンニー派の衝突が伝えられているが、このようにイスラム内部の宗派抗争を強調することで、イスラム過激派のイメージをダウンさせ、ハマスは中東和平の担い手にはなりえない、という印象を与えようとしている。ハマスの躍進はイスラエルとの関係を重視するアメリカにとっては都合の悪いこと。「穏健なイスラムはよいが、過激なイスラムは問題」というイメージを作り、自分達、つまりイスラエルに都合のよいような和平案をまとめようとしている...
板垣氏の話し方は私にはちょっと要領を得ない感じだったけど、タミーミさんの話は簡潔でわかりやすかった。とりわけ、「パレスチナ問題というのは、ユダヤ教対イスラム教というような宗教問題では決してない」ということ。領土の問題、政治的な問題なのだ。誰が領土を奪ったのかは明らかだ。ハマスがイスラエル国家の正当性を認めることはありえない。しかしイスラエルが現実に存在することは認めており、停戦交渉に入る用意はある...
今日の記事を読んで、あまりにもパレスチナ寄りの一面的な見方だ、と感じる人がおられるかもしれないけど、私たちがふだんマスコミによって得る情報がアメリカ、イスラエル寄りのものである、というのも事実なのだと思う。そういう意味では、パレスチナ側からの見方を知ることも大切だと思う。
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