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映画「ミュンヘン」

1972年、ミュンヘンオリンピックの開催中にイスラエル選手団がパレスチナゲリラによって拉致され、殺害された。これに激怒したイスラエル政府は、諜報機関モサドのメンバーによってこの首謀者ら11人を暗殺することを決め、アブナー(エリック・バナ)がそのリーダーに任命される。アブナーには出産をひかえた妻がいたが、彼女と簡単に連絡をとることすらできない、危険な任務だ。しかし、彼は任務を引き受けることを決め、文書偽造のプロ、爆弾製造のプロなど、他の4人のメンバーとともに、行動を開始する。

見終わった後、沈痛な気持ちになる映画だけれど、私は監督の伝えたかったメッセージを感じた。イスラエル総領事館はこの映画について、「イスラエルの秘密情報機関モサドとテロリストを比較することにより、誤った道徳的なメッセージを与える恐れがある」と非難した 、ということだが、実際、それを峻別することにどれほどの意味があるのだろうか。

初めて人を殺すときに逡巡する気持ち。たとえ相手がテロリストであっても。しかし、回を重ねるうちに感覚が麻痺していく。殺す側にも殺される側にもそれぞれの個人的な生活がある。殺された者の仲間は殺した者への憎しみを募らせ、殺した側は今度は自分が標的となり、憎しみの連鎖が止まることはない。殺しを行なった者は、もはや心安らぐ生活を送ることはできないのだ...

重い映画だけど、映画館で見ることができてよかった。

(以下ネタバレ)

アブナーが家に電話をして、子どもの声を聞かせてほしい、と頼む場面がある。妻が赤ちゃんに受話器を向けると、彼女が「ダダ」(パパ)という声を発し、アブナーは思わず顔をくしゃくしゃにして涙ぐむ。ここでは私ももらい泣きしてしまった。

料理の得意なアブナーがキッチンのショールームを見ている場面が何度か出てくる。幸せな家庭生活を送りたいだけなのだ、多分、ほとんどの人は。

アテネの隠れ家で他の組織と鉢合わせしたアブナーたち。アブナーはユダヤ人であることを伏せてPLOのメンバーと会話する。あるいは、ターゲットの泊まっているホテルの部屋の隣に部屋をとり、バルコニーから彼の様子を監視していたとき、ターゲットが出てきて、世間話をする。こうやって「敵」側の人間と直接コンタクトをするときのアブナーに、敵への憎しみはほとんど感じられない。彼が憎しみをあらわにしたのは、仲間を殺した女に復讐に来たときだ。うだうだ考えず、任務だから殺す。アブナーのやり方はビジネスライクだ。多分、パレスチナゲリラ側のほうが、アブナーが女を殺したときに感じていたような怒りをもっている場合が多いのだろう。

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» 『ミュンヘン / MUNICH』 ☆今年20本目☆ [honu☆のつぶやき 〜映画に恋して〜]
『ミュンヘン』公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/syriana/原題:MUNICH製作:2005年アメリカ監督:スティーヴン・スピルバーグ出演:エリック・バナ/ダニエル・クレイグ/キアラン・ハインズ/マチュー・カソヴィッツ/ハンス・ジシュラー/ジェフリー・ラッシュ ....... [続きを読む]

受信: 2006.03.22 06:38

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