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映画「ガーダ パレスチナの詩」

ガーダというパレスチナ人女性が23歳で結婚し、35歳になるまでの12年間の日常の生き様を追ったドキュメンタリー。

パレスチナでは親の決めた相手と伝統的な式をあげて結婚するしきたりになっているが、ガーダは古いしきたりに縛られることを嫌っている。それでも家族のために披露パーティを開いたものの、式はあげずに新婚旅行に出発。ふたりの生活も、夫のほうが料理熱心だったり、と伝統的な男女の役割分担にこだわらないものだ。パレスチナというと、占領下の暗い生活をイメージしがちだけど、結婚を祝う人々の明るい表情や、若い夫婦の「新しい」生き方が新鮮に映る。出産の場面も近代的な病院で、夫が立ち会っている姿におやっと思う。

でも、そういう明るい面ばかりではない。突然鳴り響く銃声。人々は慣れっこになってしまっていて、パニックになることもない。「イスラエル兵の目のつくところに出るな」と注意するくらいだ。突然、封鎖される道路。自分の家はその道の向こうなのに帰ることができない。いつ封鎖が解かれるのかもわからない。道路が封鎖されてしまったために、自分の子どもが病院で瀕死の状態だというのにすぐに駆けつけてやることができなかった親。その子はイスラエル兵に背後から頭を撃たれたのだ...13歳の子どもが何をしたというのか。イスラエル兵に石を投げたから死ななければならなかったのか...こんな「日常」を過ごしていれば、イスラエルを憎む気持ちが生まれてくるのは当然かなぁと思う。

ただ、映画は、イスラエルの非を正面から告発するというものではない。道路を封鎖されたとき、ガーダは監視しているイスラエル兵に「どうしても向こうに行かなければならない」と訴えかける。対応するイスラエル兵は若く、とまどっている様子が見える。ガーダは「パレスチナの女性達の歴史を書きたい」と聞き取りを始めるが、オリーブやオレンジの実る豊かなパレスチナのイメージ、歌のあふれた生活など、あくまでもパレスチナの人たちのふだんの生活に主眼がおかれている。

撮影、監督は古居みずえさん。古居さんは取材を始めた1988年には40歳だったそうで、長い年月をかけて500時間以上のテープを記録した。今日は上映のあと、古居監督と編集の安岡卓治さんによるトークショーがあり、「写真を撮影するときは被写体になる人との信頼関係みたいなものが重要だと思うのだけど、どういう点に注意すればよいのか」という参加者からの質問が出た。これに対し、古居監督は確かにそれが大事だ、と話され、相手がいやがった場合は撮影しない、という話をされていた。ただ、通訳であったガーダの助けで撮影させてもらったこともあるという。ご自身、この映画を撮ったことで取材を受けることが多くなり、プライバシーを明かすことに抵抗を感じることもあるのに、ガーダをはじめ、多くの人が撮影に協力してくれたことに感謝されていた。「ゲストをもてなす」というイスラムの精神にも触れられ、トルコのことを思い出して、そういう雰囲気はあるんだろうなぁ、と思った。

ちょうど「あたりまえを疑う社会学」という本を読んでいて、フィールドワークとか社会調査を行う者の態度とかセンスがとりあげられていたので、その点からも興味深いトークショーだった。その本のなかでは、「フィールドワークを行う者が「傍観者」として調査対象の外側とか高みにいるのでは、なかなか生き生きとした研究成果は得られない」ということが述べられている。古居監督の場合は、実際、パレスチナの人のなかに入って一緒に生活したのだ、ということが感じられる作品だった。

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コメント

はじめまして。
映画、旅、コーヒー、放送大学、はてなブログ(ですよね?)と、共通点が多く、気になってお邪魔しました。

私も先日「ガーダ」を観て、じゃりんこさんと、同じような感想を持ちました。
被写体との距離のとり方は、制作者によってそれぞれ。古居さんのスタンツはとても“優しい”ですよね。

放送大学はこの春からで、要領がよく分からないのですが(^^ゞ ぼちぼちやってます。

投稿: tabeo | 2006.05.16 12:37

tabeo さん、こんにちは(^^)。
そんなに共通点があるんですか。(これは「はてな」ではないですが。)
ガーダを早速ごらんになったところまで、なんか興味の対象が共通しているようですね。
ゴールデンウィークにパレスチナ映画祭をやっていたのに、仕事と体調がいまいちだったのとでひとつも見に行けず、残念でした。でも、またすぐに「エドワード・サイード OUT OF PLACE 」とかがありますね。

私も保育園の子ども達の写真をよく撮りますが、「私だからよく撮れる」って思うこと、あります(^^)。撮影者と被写体の関係って重要ですよね。

もし、またコメントをつけていただくことがあれば、さしつかえなければURLを記入してくださいね(^^)。

投稿: じゃりんこ | 2006.05.16 21:07

「はてな」では無いのですね。思い込みでした。失礼しましたm(__)m

GW、米軍基地だと日本の祝祭日は関係ないのでしょうか?お疲れさまです。
私は別府の国際平和映画祭に。私は東京在住なのですが、遠出した価値ありでした。

私のブログで、一部米軍についてもふれているため、もしかしたら失礼な表現もあるかと思い、URLは控えさせて頂きました。
が、やはり、そうですね。。。記入致しました。ご不快に思われなければいいのですが。


放送大学の先輩という事もあるので、ときどきお邪魔させて頂ければ幸いです。よろしくお願い致します。

投稿: tabeo | 2006.05.17 12:37

tabeo さん、

URLを記入されなかったのはそういう配慮をしてっくださったのですね。ありがとうございますm(__)m。

はい、ゴールデンウィークはまるっきり仕事でした。tabeo さんは別府まで行かれたのですね。私も 「Little Birds」 も見たいと思っているのですが、なかなか日程があわなくて。

放送大学の通信指導課題もそろそろやらなくちゃ、と思いながら、すすんでいません。「フィールド社会心理学」、ラジオの講義はおもしろいのですが、レポートの課題がちょっと難儀です(--;)。

私も時々おじゃまさせていただこうと思います。
こちらこそどうぞよろしくお願いします(^^)。

投稿: じゃりんこ | 2006.05.17 21:04

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「ガーダ −パレスチナの詩−」が5月20日(土) から渋谷のアップリンクXにて劇場公開します。 お忙しいとは存じますが、ぜひ足をお運びください。 ********************************* [続きを読む]

受信: 2006.05.19 12:08

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