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本「肉体不平等」by 石井政之

「あたりまえ」を疑う社会学」からのおすすめ本で、副題は「ひとはなぜ美しくなりたいのか?」

小さい頃から、色白の妹と比較して「あんたは色が黒い」だの「かわいくない」だのと母に言われ、おしゃれに関心を持つようになると「身をやつすことばっかりに気をとられて」などと非難され、何かおしゃれをすることがよくないことであるかのような感覚を持って育ってきた私は、実際、自分を美しくする努力をあまりしてこなかった(^^;)。私が化粧するのを夫がいやがったのをこれ幸いと(めんどくさがりやなので(^^;))ふだんは化粧もしなかった。だから「自分だけのスタンダードなメイク方法を見つけておくことは、大人のたしなみである」(p.120) なんて言われると「すいません」と小さくなるしかない(^^;)。

身体コンプレックスとどうつきあうか、という話で、私ももちろん身体コンプレックスはあるけれど、多分それをあまり深く考えないようにしてきた(これも身体コンプレックスとつきあうひとつの方法じゃないかと思うのだけど)ためか、読んでいてそれほどピンとくることはあまりなかった。乙武さんの「五体不満足」についての分析は、ちょっとなるほど、と思うところがあったけれど。

一番おもしろかったのが「あとがきにかえて」の部分だった(^^;)。

イラク戦争の報道に関して、米軍に従軍している記者は「戦死した兵士の顔の映像を報道しない」という条件を受け入れて従軍していたのだそうだ。

美容整形産業が決してその「失敗例」の顔や身体を公表しないように、戦争をする国家もまたその犠牲者の死体を隠す。もし、その死体映像が明らかになれば、正義の戦争などあり得ないということが誰の目にも明らかになってしまう。(p.184)
アメリカは、戦争中の虐殺のようすを徹底的に隠蔽し、戦争の「ビフォー」「アフター」だけを世界中に誇らしげに発表するつもりのようだ。「ビフォー」とはサダム・フセイン独裁体制であり、「アフター」とはアメリカによるイラク解放である。その過程で出現する大量の死体は、高性能特殊爆弾によって肉片になって飛び散っていく。(p.185)
顔という個人識別が可能な死体の報道は、なぜその人が死ななければならなかったのかという想像力を刺激する。だから戦争の「現実」は報道しない。テレビに映るのは、堂々としたルックス、身だしなみをもったアメリカ政府の高官だ。

「身体は個人的なものであるようでいて、きわめて社会的なものです。社会からのまなざしに人生を翻弄される人が少しでもいなくなることを祈りつつ...」という最後の言葉にこの著者の思いが凝縮されているのだと思う。

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書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

じゃりんこさん☆
同じだよぅ。色白の兄と比較されて「お兄ちゃんと男女代わっとけばよかったのに」って言われてた^^;
三十台はほぼすっぴんで過ごし、やっと今頃シミが気になって下地化粧品をマジメニ使うようになり、めんどくさくても化粧するようになりました^^;

>なぜその人が死ななければならなかったのかという想像力を刺激する
ですよね。

>「アフター」とはアメリカによるイラク解放である
ここのところを、アメリカはもっと晴れやかなものだと想像してたんだろうか、そうなんでしょうね、多分。でもこれだけ長期にわたってしまうと国土、環境、心に残った傷跡を治すには途方もない時間と労力がかかるでしょうね。
他国からの支援と支配とは違うと思うんだけどねぇ。。。

投稿: ぴよ♪ | 2006.06.26 07:39

ぴよ♪さん、こんにちは(^^)。

あ、ほんと、おんなじだ。実は私も最近、化粧するようになりました。やっぱりシミが気になって(^^;)。でも相変わらず基礎化粧品は使わないし、ファンデーションと口紅だけというシンプルなものです。

うん、アメリカの思い描いていた「アフター」にはなってないですよね、多分。
職場でイラク戦争のことを話題にするのはなかなかむずかしいんだけど、基地の中にも「アメリカがイラク戦争するのは石油がほしいからだ」と言う人がいます。基地に住んでいる人がみんなイラク戦争を支持しているというわけじゃなく...イラクに赴任が決まったとなれば「そう、がんばってね(^^)」なんてことにはならないです、まず。

「死者何人」という言い方で報道されるだけだとピンと来なくても、兵士の顔が報道されれば、死ぬってどういうことなのか、戦争ってどういうことなのかがわかる。この人はどんな人生を送ってきたのか、家族はどんな思いだろう、と考えてしまう。顔が見えなければ、人はもののように扱われてしまう。...

ネットでのつきあいは顔も知らない人とのつきあいであったりするけど、結局人は「顔の見えるつきあい」を求めてオフラインミーティングをしたりするんでしょうね。

投稿: じゃりんこ | 2006.06.26 16:58

顔だけじゃなくて、本国に送り返されるお棺も報道してはいけないのではなかったでしょうか? ベトナム戦争時に、そういう映像が「反戦ムード」を高めたという分析から、徹底的な「報道統制」をしているんだろうと思っていました。

それと、軍隊・軍属も「特殊な」人たちではないのですから、恐らく(少なくとも)半分は、本音ではイラク戦争を支持していないと想像しますが…。 何しろ、現大統領は過半数の得票を得ずに再選されたのですから…。

投稿: axbxcx | 2006.06.28 06:32

axbxcx さん、

>顔だけじゃなくて、本国に送り返されるお棺も報道してはいけないのではなかったでしょうか?

そうなんだ、と思って調べてみたら、確かに、星条旗に包まれた米兵の棺の本国帰還を報じた写真が公開されたことについて、米政府は海外で死亡した米兵の帰還風景の撮影を禁止している、との記事を見つけました。米兵の犠牲者の報道はタブーになっているのですね。

おっしゃるように、イラク戦争の報道に関しては、ベトナム戦争時の報道の「反省」に基づいて徹底的な報道規制がしかれたのですね。それはかなり有効だったようですが、だんだん、イラク戦争で息子を失った人の訴えなどから、イラク戦死者の氏名と顔写真を公開する番組が放映されるようになったりして、いつまでも政府側の思うようにはいかないようですね。

軍に属している人が本音ではイラク戦争を支持していないのでは...というのはそう思います。両親がふたりとも戦地に赴任になって、子どもはおばあちゃんに預けるとか、そんな状態を歓迎している人がいるでしょうか。父あるいは母だけが戦地に行くにしても、子どもも残された方の親も嬉しいはずがありません。少なくとも、実際に戦地に赴かなければならないような立場にある人の多くは本音では行きたくないだろうと思います。9・11の直後は義憤にかられた人もいたようですが。

イラク戦争を批判するアメリカ人に「でも、アメリカ人はブッシュを再選したんじゃないの」と言うと、「ちがうよ。They cheated.」と言う人がいました。「じゃあ、どうしてそんな不正がまかりとおるわけ?」と言うと。「さあ?」という感じでしたが。選挙が公正に行なわれたとは信じていない人もいるわけですね。

投稿: じゃりんこ | 2006.06.28 20:04

Michael Mooreの"Fahrenheit 9/11"がどこまでまともかはともかく、最初の選挙のフロリダは、まったく狐につままれたような気がしました…。

投稿: axbxcx | 2006.06.28 22:13

axbxcx さん、

>Michael Mooreの"Fahrenheit 9/11"がどこまでまともかはともかく

メッセージから入る映画はどうも...でしたか。

基地の映画館ではこの映画は上映されませんでしたが、基地でもDVDは発売されていたようで、それを見た人で「この映画を見てブッシュがいやになった」と言っている人もいました。こういう明確なメッセージを伝える映画も意味があると思います。
時の大統領を正面切って批判できるというのはアメリカの健全なところかなぁと思うとともに、マイケル・ムーアという人がもう一種の権力みたいになっているという感じもしましたが。

投稿: じゃりんこ | 2006.06.29 00:07

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