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はじめに言葉ありき?

放送大学面接授業「心理学実験・実習」(細田一秋先生担当)。明日が最終回で、授業で興味を持ったことをひとつ選んでレポートを書いて提出しなくてはならない。最初、錯視について書くつもりだったのだけど、前回の授業でやった「YG性格検査」(矢田部ギルフォード性格検査)がおもしろかったので、こちらで書くことにした。

YG性格検査は、アメリカの心理学者ギルフォードが開発した手法を、矢田部達郎らが日本人向けに作り直したもの。ギルフォードは、性格を表す言葉をピックアップし、それを分類して性格検査を作り上げたとのことだが、それではギルフォードの作った性格検査と矢田部の作った性格検査とではどのような違いがあったのだろうか、日本語と英語ではどういう違いが出てくるのか、ということに興味を覚え、調べてみようとした。ところが、短期間では、ギルフォードの性格検査がどのようなものであったのかを調べるのはむずかしく、結局、この検査を作るのに依拠したという「言語相対性仮説」について調べて書くことにした。

言語相対性仮説は、この説を主張したアメリカの言語学者の名前にちなんで、「サピア・ウォーフの仮説」とも呼ばれている。 簡単に(乱暴に(^^;))いうと、「言語はそれぞれ独自の仕組みをもっており、人間の思考や認識はその人間の話す言葉によって決定される」という考え方だ。

たとえば、虹が何色(なんしょく)であるかという問いに対する答えは、日本語を話す人と英語を話す人で違う。このことは放送授業「英語Ⅳ」でもとりあげられていた。日本人は七色と答えるが英語を母語とする人にとっては六色なのだそうだ。(へぇ、と思って同僚に聞いてみたけど、みんな答えはバラバラで、必ずしも六色というわけではなかった。)アラビア語にはラクダに関する語彙が豊富だし、エスキモーの言葉には雪に関する語が豊富だ。人間が生きるのに必要かつ重要な語彙は多くなる。色について豊富な語彙をもつ言語もあれば、「濃い」と「薄い」のふたつしか色についての言葉をもたない部族というのもあるという。このような言語の違いが人の認識や思考の仕方に影響を与えると考えられる。

言語が思考や認識の仕方に影響を及ぼすことは確かだと思う。ただ、思考や認識は必ずしも言葉を通じて行われているわけではないから、言語が思考や認識を規定するとまではいえないだろう。

私は基地の保育園で毎日1歳児を見ているわけだけど、1歳児が話すことのできる言葉は大変限られている。単語(bye-bye, dog, hot など)に始まり、2歳近くになると二語文("big dog", "All gone", "Daddy bye-bye"(パパは行ってしまった)"John hit"(ジョンがたたいた)など)、三語文("I did it!" "What is this?" など)が話せるようになっていく。話すことはできなくても理解することのできる言葉もあり、1歳児は大人の簡単な指示を理解することができる(ようになる)。「すわりなさい」「ジャケットを持ってきて」など。これらはもちろん、英語で行われる必要があり、日本語での指示は理解できない(もちろん、それを続けていればできるようになるだろうが)。ということは、彼らは言葉を使って考え始めているわけだ。

その一方で、言葉によらない思考というのも存在する。丸や三角のパズルを同じ形の穴に入れるシェイプソーターと呼ばれるおもちゃがある。同じ形のところに同じものを入れるのに、必ずしも丸とか三角とかひし形などの言葉を知っている必要はない。もちろん、その言葉が理解できるようになれば、多くの場合、正解率は増えていく。また、高いところにあるものを取るために台になるものを持ってくる。その子どもは自分の行動を言葉で説明することはできないだろう。「こうしよう」と言葉を使って考えているわけではない。あるいは、「この保母さんが来るといつも僕のお気に入りの保母さんが行ってしまう」というような状況を子どもは察知することができるが、やはりそれを言葉で考えているわけではない。

こう考えてくると、やはり「はじめに言葉ありき」というわけではないだろう。それとともに、以前「わたし」と「あなた」で書いたように、英語と日本語の違いもあるし、それが子どもの認識の発達にどういう影響を及ぼすのかとか、バイリンガルの場合はどうなるのか、とかいうのはとても興味深い問題だ。両親の母語が違う家庭というのも身近にたくさんあるのでぜひ調べてみたいなぁと思うけど、具体的にどういうふうにアプローチすればいいのかがまだわからない...

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