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本「世にも美しい数学入門」by 藤原正彦・小川洋子

しばらく前、「博士の愛した数式」という映画をDVDで見た。「僕の記憶は80分しかもたない」という設定にどうも現実味が感じられなくて、あと、中学の数学の授業風景にも現実味が感じられなくていまいちのれなかったのだけど、話にでてきた数学の話題はおもしろかったので、原作者と数学者の対談であるこの本を読んでみた。

友愛数、完全数、オイラーの定理。確かに、この世には不思議なことがたくさんある。神様はこの世界を作ったときに、いろんな美しいものを隠した。それを見つけていく喜び。世の中の役にたつからではなく、ただ自分で答えを知りたいだけ。私自身は、証明されうるかどうかもわからない命題に一生を費やしたり、今わかっている最大の素数よりより大きい素数を見つけ出す、といったことに夢中にはなれないけど、それに夢中になってしまう人がいる、ということはわかる気がする。私のまわりにいる数学の好きな人たちも、そういうことを語り始めると、生き生きする、というのを見てきたから(^^)。

ただ、この藤原正彦さんという数学者の方が、数学の美しさにこだわるあまり、「美しいものを子どもの頃から見ていないと数学の天才は出ない」というようなことを話しておられるのはちょっとどうかな、とは思った。藤原氏は、ラマヌジャンという天才の生まれたインドへ行ったが、建物も風景も全然美しくない。これでは「数学には美意識が必要」という彼の持論が覆されてしまう、と、もう一度インドへ行って、今度は美しい寺院を見つけ、ラマヌジャンが美しい定理をたくさん発見したことが腑に落ちた、のだそうだ。もしかするとそれは正しいかもしれないけど、これは藤原さんの感じていることを具体的な例をあげて示しているだけで、証明にはなっていない。日本人が神仏にひざまずく心を持っていることも数学の天才が生まれる土壌になっている(確かに日本には関孝和のようにすごい人もいたわけだけど)というような話も、日本人の素晴らしさをちょっと強調しすぎな感じはした。

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コメント

じゃりんこさん、もう20年くらい前になるか、「若き数学者のアメリカ」(だったか)を読んだときは素直な方だなあと思ったのですが…。 
最近の言動は私にはまったく「?」です。

投稿: axbxcx | 2006.10.17 05:54

axbxcx さん、

この本を読む前に、この藤原さんという方が、話題の本「国家の品格」の著者だと知り、「え、あれって数学者の人が書いたの?」と思いました。自分のまわりの数学好きの人たちのイメージとはずいぶん違うので。私は読んでいないので詳しいことは知らないのですが、この本を読んで、この人がそういう本を書くのはありそうだなぁと思いました。「若き数学者のアメリカ」も読んでいませんが、axbxcx さんの場合、アメリカで暮らしておられたことがあったから共感される部分があったのでしょうね。

投稿: じゃりんこ | 2006.10.17 20:19

じゃりんこさん、鋭いところを…。

アメリカンフットボールの試合のチケットを2枚握り締めて、手当たり次第に女学生に声を掛けては断られて、挙句の果てに同じ女学生に二度声を掛けてしまったというエピソードが書かれていたのが強烈に印象に残っています。(同じ経験をしたという訳ではありませんので念のため。)

どうして読んだのか記憶にないのですが、もしかしたら親が送ってくれたからか、あるいは新田次郎のファンだったからか…。

投稿: axbxcx | 2006.10.18 05:30

axbxcx さん、

同じ経験をしたというわけではないけど、強烈に印象に残っているのですね(^^)。

中学の数学の先生をしている友人で、なんかどうでもいいと思えるようなことを正確に覚えている人がいます。あのとき誰がどんなことを言ったとか、そのとき何を食べていたか、どんな服を着てたか、何月何日だったとか。記憶に残るというのはその人にとっては何か意味があるのでしょうね(^^)。

投稿: じゃりんこ | 2006.10.18 19:24

じゃりんこさん

> 同じ経験をしたというわけではないけど、
> 強烈に印象に残っているのですね(^^)。

はい、その通りです。 私もアメリカに行った当初はかなり身構えていましたから…。 いまも自然体と言えるかどうかはわかりませんが…。

日本人ということについては、前にもお話したかも知れませんが、小熊英二の著作が目からウロコでした。 「単一民族神話の起源」それに「日本人の境界」などです。

特に明治の初期、どういう人たちが単一民族説を唱え、一方どういう人たちが多民族説を唱えたかという部分はなるほどと思いました。 大日本帝国では天皇の下みな兄弟で、当然ながら多民族を前提にしていた訳ですが、この本を読むまでまったく頭にありませんでした。

投稿: axbxcx | 2006.10.19 03:34

axbxcx さん、

>大日本帝国では天皇の下みな兄弟で、当然ながら多民族を
>前提にしていた訳ですが、

そうなんですか。昔は日本は単一民族だと考えていた人が多かったのかと思っていました。

小熊英二、おもしろそうですね。そのうち何か読んでみようと思います。

投稿: じゃりんこ | 2006.10.19 19:31

じゃりんこさん

> 昔は日本は単一民族だと考えていた人が多かったのかと思っていました。

私もそう思い込んでいました。 でも、他の国(民族)を「併合」するのに単一民族という訳にはいかない、「帝国」というのは単一民族では成り立たないということでしょう。

明治初期の場合、単純化して言えば、日本人は能力的にも体格的にも欧米人に劣っているから国を閉じた方がよいと考えた人たちは単一民族を唱え、日本人も捨てたものではないと思った人が多民族を唱えたということだったと思います。

投稿: axbxcx | 2006.10.20 04:23

axbxcx さん、

今期、放送大学で「自我の社会学」というのをとっているのですが、それで日本人の自我と西洋人の自我を比較する、みたいな話が出てきました。そういうのはおもしろいと思うのですが、「だから日本人はダメなんだ」とか「だから日本人の方が優秀なんだ」とかいう価値判断が入ってくると、なんかちがうなぁ、という気がしてきます。藤原正彦さんの言い方で気になったのもそういう点でした。

近くの図書館に、「単一民族神話の起源」や「日本人の境界」は置いていないようなのですが、小熊英二の別の作品はあるようなので、来週にでも借りてこようと思います。

投稿: じゃりんこ | 2006.10.20 20:13

はじめまして。藤原正彦先生ファンクラブWEB分室です。「数学」を話題にしたBLOGです。藤原先生の研究されている数学に迫る書籍などについても紹介しています。一度訪問下さい。

投稿: 花山大吉 | 2007.04.28 11:14

花山大吉さん、はじめまして。
藤原先生ファンクラブがあるんですね。私はテレビなどでも見たことがないのですが、ファンクラブができるくらいだからきっと魅力的な方なのでしょうね。

投稿: じゃりんこ | 2007.04.28 21:36

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