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本「学び方を学ばせるイギリス式ゆとりの教育」by 宮北恵子

著者は日本人のご主人とともにイギリスに移り住んでそこで3人の子どもを生み育てた人。子ども達を育てるなかで感じたイギリスの教育の特色について、日本と比較しながら書いておられる。

いいなぁと思ったのは「ギャップ・イヤー」とか「サンドイッチ・イヤー」という制度。
「ギャップイヤー」とは、大学入学が決定した後、高校からそのまま大学に進むのではなく、一年間休みをとって大学入学を遅らせるシステム。強制ではないけれど、多くの大学で奨励しているそうで、たくさんの生徒達がこの一年間をいろいろな計画をして過ごすそうだ。学費を準備するために働く者もいれば、海外旅行へ出かける者、英語の先生として海外へ行く者など。著者の娘さんは半年間は保険会社でアルバイトをして資金を作り、あと半年で、日本語の勉強のため日本へ行ったそうだ。

「サンドイッチ・イヤー」(あるいはワーク・プレースメント・イヤー)というのは、大学3年のときに、社会人実体験をするチャンスが与えられるのだそうだ。自分の学部に関連のある職業を体験するもので、これも学生の希望によるもののようだ。

大学入学前に1年間の自由な時間をもてたり、在学中に低賃金でも自分の希望する業界で働くチャンスが得られるというのは(必ずしも簡単に職が見つかるわけではないようだが)とてもいい制度だと思う。日本ではニートとかフリーターに冷たい目が向けられがちだけど、高校時代に進みたい学部をはっきり決めて4年間そこで学習してそれに関連した仕事に就いて満足できる人はいったいどれほどいるのだろうか。自分の進路を見直してみたり、違うことをしてみたりする時間は決してその後の人生でムダになることはないだろうと思う。

また、イギリスには、"Life begins at forty." (人生は40歳から)という言葉があるそうだ。子育てが一段落して時間のできた人たちは、どんどん学校に出かけて学んだり、積極的にいろんなことにチャレンジしているという。それも素敵だなと思う。

著者はイギリスの水が性にあったようで、イギリスの教育に肯定的だ。読んでいて、ふうん、いいなぁと思うことは多かった。ただ、アマゾンの書評を読んでいると、イギリスに住んでいても同じように感じていない人もいるようだ。著者はおそらく生活にゆとりのある階級の方のようで、私立学校に子どもを通わせたり習い事をさせていたけれど、たとえばそこまでのゆとりのない人たちだとまた違う感想があるのかもしれない。とはいえ、著者の経験は読んでいて楽しいものだった。

学び方を学ばせるイギリス式ゆとりの教育学び方を学ばせるイギリス式ゆとりの教育
宮北 恵子

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コメント

お久しぶりです。

そうですね、日本にもそういう制度があればだいぶ違うような気がしますね。
残念ながら日本は、エスカレーターで滞りなく上がってきた人間だけが「マトモ」と見られる風潮があるんで、それがイジメとか息苦しさに繋がっているんだと思いますね。

投稿: カルロス | 2006.11.05 00:39

じゃりんこさん、たびたびすみません。 カルロスさん、はじめまして。

同じ方向に向かうエスカレーターが一つだけあるのか、それとも乗り継いだり方向を変えたりできるのかが大きいでしょうねえ。 じゃりんこさんも書かれているように「それに乗っかったことでうまく行ったと満足している」人の話を聞いたのでは、アメリカはアメリカがいい、イギリスはイギリスがいい、日本は日本がいいになってしまうだけな訳で、「エスカレーター」に乗らなくてもこんないいことがあったとか、落ちこぼれたけれど立ち直った(自分のことか?)という話の方が私は好きですけれど…。

投稿: axbxcx | 2006.11.05 03:45

カルロスさん、お久しぶりです(^^)。

ほんと、高校を卒業したら進学するか就職するかで、まだ自分が何をしたいのかはっきりわからないからいろいろなことに挑戦してみたいって、そういう雰囲気があればいいと思うんですけど、なんとなくそれが許されないような雰囲気がありますよね。

axbxcx さん、コメントはいつでも何度でも歓迎ですよ(^^)。

ええ、紆余曲折のある人生のほうが話としてはおもしろいですよね。axbxcx さんの話もある意味ドラマチックですから聞いていておもしろいです(^^)。でも最終的にとてもうまくいっておられるわけですからうらやましいです。

投稿: じゃりんこ | 2006.11.05 08:40

じゃりんこさん、それでは再び。 私の場合は「成果主義」が大嫌いで、その瞬間(それで"No Day But Today"であり「いまを生きる」な訳です)をどう活かしているか、何を目指しているかが全てだと思っているのです。 したがって結果がどうかは二の次ですし、もちろん一喜一憂はしますけれど、たいしたことではないと思っています。 生きている限りはですけれど…。

イギリスの教育を語るのであれば、やはり植民地の教育のことも語らなければならない、そしてイギリスの場合はフランスとは違い、「文化」には触れず技術職業訓練に絞ったというところがポイントと理解しています。 また大学で言えば、貴族の趣味?としての学問であるarts & sciencesが柱で、実学は(エンジニアを養成する工学部、法律家を養成する法学部も、そして経済学部や農学部も)全て外だったという歴史があります。 アメリカを含む旧植民地の大学もその歴史を引き継いでいると思います。

私の同級でいまフルタイムで大学院に通っている人を二人知っていますし、例えばガーナにもケニアにもマラウイにもそれぞれ50人を超す日本の海外青年協力隊員がいます。 自らが違うエスカレーターを見つけさえすれば、機会はいろいろあるのではないかというのが実感です。

上の娘も卒業を1年遅らせて、タイに留学するという道を自分で選びました。 どんな仕事に就くことになるのか、楽しみです。

投稿: axbxcx | 2006.11.05 20:01

axbxcx さん、

いつも「教えてクン」になってしまってダメだなぁとは思うのですが、質問させてくださいm(_ _)m。

イギリスの場合は、植民地では実学を推進し、本国では純粋な学問を追求する、という傾向があった、ということなのでしょうか。そしてフランスは植民地にも文化を輸出しようとした、ということなのですか。確かにアメリカでは実学重視という感じはありますよね。

>自らが違うエスカレーターを見つけさえすれば、機会は
>いろいろあるのではないかというのが実感です。

私もそう思いますが、ただ、日本で、子供たちが自分で違うエスカレーターを見つけることを奨励しているかどうかというと、どうかなぁと思います。「大学へ行く前にこんなことをしてみたい」と子どもが言ったとして、親や教師はそれを認めてあげられるだろうか。とにかく大学へ、と言う対応をする場合のほうが多いんじゃないかなぁと思うのです。違うエスカレーターに乗るよりも、みんなと同じエスカレーターに乗っているほうが何かと都合がいいよって。そういう意味で、ギャップイヤーを奨励しているというイギリスはいいなぁと思いました。

投稿: じゃりんこ | 2006.11.05 22:21

じゃりんこさん、何だかいつも余計なことばかり書いているようですみません。 フランス政府の場合はその通りだと思いますが、イギリス政府の場合は良くも悪くももっと実利的で、植民地からは原材料さえ来ればよい、だから本当の学問は必要ないと考えたのではないかと思われます。 また国内でも純粋な学問は大学、工学・経済学などの応用は専門学校だったと思います。 「ニュートンに消された男」という本がありましたが、あの世界でしょうか。 それからミャンマーやマレイシアなどでも大学にはarts and sciencesしかなく、経済大学も工科大学も外という形が残っています。

また、"Beautiful Mind"で知ったのですが、MITも戦前はいまのような有名大学ではなく、「ニューヨークのユダヤ人が行く工業学校」というイメージだったようです。 アメリカの場合も、州で一番古い大学(一般にUniversity of~)には元々はarts and sciencesしかなく、工学部と農学部はA&MのState Universityとして後から作られています。 その後、どちらも総合大学になって区別がなくなりましたが、例えばインディアナのように名残りが残っている州もあります。

日本のエスカレーターの話ですが、私は「長いもの」が好きではないので、基本的に親の責任は重いと思っています。 残念ながら自分が少数派である以上、教育政策に多くは望めませんので、自分の信念・考え方だけは「背中を見せてでも」娘たちに理解して欲しいと思っています。 逆に進路そのものについては、彼女たちが自ら選ぶ道が本人にとってはベストなことが多いと思っているので、アドバイスを求められない限り干渉せずを貫いています。 それが親を反面教師にして?自分が学んだことでもあります。 ご存知のように父は大学教員でしたが、母方の祖父は高校教員(最後は校長・教育委員長)で、叔母にも中学教員がいました。 この歳になれば反抗期と呼ばれることはありませんが…。(^_^;

投稿: axbxcx | 2006.11.06 02:12

axbxcx さん、いつも丁寧に書いていただいて本当にありがとうございますm(^^)m。

academic という言葉は、実学を重視してないという印象はありますから、もともと大学とはそういうものという気はします。実際社会の役にたたなくても純粋に学問を追求する場が大学なのでしょうね。「ニュートンに消された男」は知りませんでした。ちょっと興味をそそられます。

Beautiful Mind は好きな作品でした(英雄的な役をするラッセル・クロウより、こういう役をやる彼のほうがいいなぁと思います)が、おっしゃっているようなことは全然記憶にありません(^^;)。axbxcx さんと映画のことを話していると、人によって見るところが違うんだなぁと思うことが時々あります。それも結局、経験や関心の違いからなんでしょうが。

axbxcx さんのところでは、娘さん達はそれぞれ好きなことを見つけておられるようですし、自分で進路も選んでおられるわけだから問題ないですよね。しっかり親の背中を見て育ってこられたのでしょう。ただ、axbxcx さんのように、自信をもって子どもに背中を見せられる親はそんなに多くはないのでは、という気がします。そして、子どもも自分で選択をすることができない。何をやりたいのかわからない。とりあえずどこか入れる大学へ、という図式がある気がします。

投稿: じゃりんこ | 2006.11.06 20:08

じゃりんこさん、世の中の常識から言えば全く外れたコースを歩いて来たと思っています。 生活も極めて不安定です。 いつ仕事がなくなっても、またいつ倒れても、不思議はありません。 1998年に独立したときにも特に成算があった訳ではありませんでした。 その日その日に好きなことを一生懸命?やっていたら、何とかここまで来られた、そんなところです。 1991年に会社をやめてこの世界に飛び込んだときも、母親の強い反対があったりして、実にフラフラしたものでした。 幸か不幸か、やめる前に母が亡くなってしまったので、摩擦を避けることができましたが…。

Beautiful Mind、多分本で読んだんだろうと思います。 あの感激のラストシーンは実はフィクションです。 離婚してますから…。 したがって、あんな受賞演説もしてません。

投稿: axbxcx | 2006.11.07 03:04

axbxcx さん、

収入の安定している仕事をやめるとなれば、たいていの親は反対するでしょうね...axbxcx さんの場合はうまくいったわけですけど、そういかない場合も少なくないでしょうから... 親としては子どもの力を信じたくても、生活の安定をまず考えてしまうというのもわかります。

Beautiful Mind は、そうですか、事実とは違うのですね。映画として気持ちいい作品にしあげるためにはそうなったということですね。

投稿: じゃりんこ | 2006.11.07 20:49

普通の民間企業から外郭団体の研究所に転職しただけだったのですが、反対は強かったです。 理系から文系に変わると言ったら大騒ぎした人ですから…。 まあ信用がなかったこともありますが、転職するということ自体に抵抗があったのでしょう。 父からは「留学する人もどんどん増えているから、若い人たちと競争しなければならないだろう、その自信はあるか?」と言われました。 また1991年に亡くなった義理の父は「国際協力も景気がよくないとできない。景気が悪くなったときが大変だろう」と言っていたそうです。 どちらもおっしゃる通りです。 いずれにせよ、妻のサポートがなければ転職も独立もあり得なかったのは間違いありません。

投稿: axbxcx | 2006.11.08 05:29

axbxcx さん、

理解のある奥様でよかったですね(^^)。転職や離職で一番影響を受けるのは、親よりも誰よりも、一緒に暮らしている家族ですから。私の夫も何度か転職していますが、転職先でも、一家が食べていけるお給料をもらえることはわかっていたので、反対する理由はありませんでした。彼の移りたいという転職先がもっと不安定なものだったら...私が職を持っていれば「いいよ」と言ったと思いますが、もし私が安定した職を持っていなかったら、「よく考えようよ」とは言ったでしょうね...でも、それがどうしても彼のやりたいことなんだと納得したら、やっぱりやりたいことをやってほしいと思ったと思います(^^)。

投稿: じゃりんこ | 2006.11.08 20:30

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