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ビデオ「ステップ! ステップ! ステップ!」Mad Hot Ballroom

ニューヨークの公立小学校で、子どもたちに社交ダンスを教えるプログラムがあるそうだ。メレンゲ、ルンバ、タンゴ、スウィングなどのリズムに合わせ、男の子と女の子がペアになって踊る。ふたりが目線をあわせ、姿勢を正して。目標は市のコンテストで優勝すること。このプログラムに取り組む小学生たちとインストラクターや教師達の様子を追ったドキュメンタリー。

大人のほうは、製作者のインタビューに答える形で、撮影されていることを意識しているけど、子ども達どおしの会話はとても自然で、不思議なほど、カメラを意識しているように見えない。会話はダンスのことにとどまらず、アメリカの小学校高学年の子ども達の雰囲気がわかっておもしろい。

小学校高学年といえば、異性を意識するし、社交ダンスに取り組むのに抵抗があるんじゃないかと思うのだが、みんな楽しそうにやっている。先生達の話によれば、結構、なんらかの問題を抱えている子がいたり、移民が多くて英語もろくにわからない子がいたり、とクラス運営もラクではなさそうだ。それでも、このプログラムを通じて子ども達が変わっていく様子が観察されたという。

「ミュージック・オブ・ハート」という映画で、ニューヨークの子どもたちにバイオリンを教えるプログラムのことが扱われていて、このプログラムも子ども達に大きな変化をもたらしたことが紹介されている。音楽とかダンスとかには不思議な力があるようだ。学校で読み書きや知識だけを教えるのではなく、いわゆる情操教育をすることの意義は決して小さなものではないのだろう。

保育園の子ども達もダンスが大好き。3-5歳児クラスでよく踊っていたのは、"We will rock you" "Gonna make you sweat" "Cha cha slide" "Macarena" "Who let the dogs out"...など。この作品のなかで、"Gonna make you sweat"(Everybody dance now! という歌詞で始まる)がかかった時は、そうそうこの曲、みんな好きだったなぁと思い出した。この作品のなかでも、なんだか練習に疲れたときにこの曲がかかって、みんなが元気に踊りだしたのだ。それを見ていると、やっぱり社交ダンスはいろいろな決まりがあって窮屈なんじゃないかなぁとか、ダンスをコンテストで競う、というのはどうなんだろう、とか思わないでもないけど...実際、コンテストでよい成績を残せなかった場合どう対処するかについて先生達が交わしている会話は、そのあたりの矛盾をついている。

それでも、こういう機会に恵まれた子ども達はやはりラッキーだったのだろう。子ども達のことを考える大人がいて、そして子ども達はひとりひとり小さな頭でいろんなことを考えていて...「子ども達」って十把一絡げにはできないものだなぁと感じさせられる映画だった。

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映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

じゃりんこさん、早速どうも。 どうやってカメラ回したんだろうって私も本当に不思議でした。 子どもたち、とにかく自然なんですよねえ。 校長先生の一人が「うちの学区は97%(?)が貧困家庭で、習い事に行ける子が本当に限られている」という説明をするところがありました(アメリカの平均は3割くらいと言われているようで、基準は確か4人世帯で2万3千ドル未満)けれど、ダンスにせよバイオリンにせよ、公立学校でのプログラムがどれだけ大事かということですよね。

ところで、メレンゲになるとみな本当に楽しそうだったでしょう? あれを社交ダンスと呼べるかどうかは疑問ですが…。 ドミニカ共和国というのは踊りが命の国で、どんな村に行ってもディスコがありますし、老夫婦もメレンゲを踊るんです。 サント・ドミンゴのレストランは夜10時頃がピークでそれからディスコに行きますから、平日の0時過ぎでも老若男女を問わず一杯です。 しかも、サルサでも掛かろうものならフロアからお客がスーッといなくなります。 彼らにはサルサでも遅すぎるんです。 我々が使っていた運転手は、待っている間もカーラジオを聞きながら踊りの練習をしていました。

もう一つドミニカ共和国で感じたのは、洋服や化粧に使うお金が我々とは比較にならないということでした。 綺麗に魅せるのが文化というところでしょうか。

不良、あるいは不良になりかけたと言われてた二人の踊り、特に素晴らしかったと思いました。

投稿: axbxcx | 2006.12.16 01:30

じゃりんこさん、補足です。 矛盾の話、実は世の中の矛盾そのものと思いました。 一番怖いのは「単一の価値観による競争」だと考えているのですが、多様性のないところで自由競争をやれば、まさに格差社会になるだけでしょう。 多様性は自由競争の基本だと思います。

多様な競争と拡散(格差の固定)を防ぐための仕組み、特に競争が一度限りではなく常に再挑戦できること、それがない自由競争は危険なだけと思っています。 グローバリゼーションに否定的なのもそのためです。

そこで心に響くのがフランスの大統領候補セゴレーヌ・ロワイヤルの言葉です。 「グローバリゼーションが引き起こす社会の不平等、不安定に立ち向かう」

投稿: axbxcx | 2006.12.16 07:41

axbxcx さん、

おもしろいフィルムを紹介してくださってありがとうございました(^^)。

メレンゲって私は知りませんでした。メレンゲだけでなく、スウィングとかも楽しそうだった気がしますが...ドミニカからの移民が多いところはやはりメレンゲが一番しっくりくる、というのがあったのかもしれませんね。「モーターサイクルダイアリーズ」でも、みんなで踊る場面がありましたが、中南米では踊ることが文化というか生活の一部みたいな感じがあるのでしょうか。老夫婦も踊るっていいですねぇ(^^)。

>綺麗に魅せるのが文化

日本では、「外見にこだわるより内面が大切」みたいなことが強調されているかなぁと、私も基地で働くようになって思うようになりました。
黒人の女の子とか、いつも髪をきれいにしてもらっていたりするのを見ると素敵だなぁと思います。
この映画のなかでも、「セクシーであることは素敵だ」というような感じでインストラクターの人が話している場面がでてきましたが、日本の小学校でそんなことを言う先生はまずいないような気がしてしまいます。

矛盾について、教師どおしの話を聞くのも興味深かったです。子供たちの率直な感想も。「こんなにがんばったのにどうしてセミファイナルに行けないんだ?」って。
競争で優劣を決めるためには、やはりなんらかの単一の価値観というか、基準となる価値観は必要なわけですから、コンテストという方法には限界がある気がします。でも優勝するとうれしいんですよね。子供たちのモチベーションを高めて、しかも多様な価値観を認めるという、そういう見方を身につけさせてって...むずかしいですね。

投稿: じゃりんこ | 2006.12.16 10:32

じゃりんこさん、開発と教育はほとんど同義ですから、競争って本当に必要なのかってことはいつも自問しています。 ただ、末期のソ連を観たときにはやっぱり競争が必要なんだろうと思いましたし、アフリカの田舎でも少なくとも「牽引力」と「脱落者を作らないこと」の両方を常に考えなければいけないと感じています。 私もそうですけれど、やはり何か目標がなければ本気にならないという部分は必ずあるでしょうし、逆に抜け殻みたいな状態も誰にもあり得ますからねえ…。

観ていて、フォックス・トロットが一番つまらなそうで、タンゴが一番難しそうというは素人にもわかりました。 また、決勝でのあの職員室に呼ばれなくなった女の子のルンバの手の動き、それと最後のスイング(よく覚えてないのですが、リーダーだった男の子でしょうか)は素晴らしかったですねえ。 審査員のおばさまがルンバの手の動きを真似するところとか、集計するときの表情とか、審査員や先生の気持ちが痛いようにわかるところもよかったと思いました。

投稿: axbxcx | 2006.12.16 11:03

axbxcx さん、

競争に勝ちたい、とか人間の本能的なものなんでしょうね。確かにそれでやる気になる部分ってありますよね。

私には、フォックストロットが一番つまらなそう、とかわかりませんでした(^^;)。タンゴやフォックストロットには特徴的な動きがありますが、どのダンスにも似たような動きがあるなぁ、と思ってみていました。ダンス、ちょっと習ってみたい気はします。

教師達の思いを聞くのは本当におもしろかったです。現場でこの年頃の子ども達と関わっている人が見たら、また一段と深い感慨があるでしょうね。

投稿: じゃりんこ | 2006.12.16 23:48

じゃりんこさん、でもメレンゲとスウィングが楽しそうだったというところは一致してますよね。(笑) 我が家でもそう言って観てました。 気に入ったのでレンタルで3回観て、「ダーウィンの悪夢」と一緒にAmazon.caに注文した次第です。

昨日は「モーターサイクルダイアリーズ」に主演したガエル・ガルシア・ベルナルの出てる「天国の口 終りの楽園」を途中まで観ましたが、何とも明るいと言うか軽いと言うか…。 メキシコで大ヒットした映画だそうです。 キューバ映画「バスを待ちながら」が素晴らしかったので「苺とチョコレート」も借りて来て観ましたが、こちらはやや重たい感じでした。

投稿: axbxcx | 2006.12.17 09:21

axbxcx さん、

ええ、そのほかに、本文中にも書きましたが、"Gonna make you sweat" がかかってみんなが生き生きと踊りだしたのが印象的でした。音楽を聴いて自然と体が動く、というのは、赤ちゃんでもそうですから(^^)。

「天国の口、終わりの楽園」はずいぶん前に見ましたが、特に好きな作品ということはなかったです。「モーターサイクルダイアリーズ」に出ていたガエル・ガルシア・ベルナルはすごくいいなぁと思ったのですが、他の作品では特に...というほどたくさん見ているわけでもないのですが(^^;)。「バスを待ちながら」はaxbxcx さんがブログで紹介されていたのを読んでちょっと見たくなりました。

投稿: じゃりんこ | 2006.12.17 11:02

「天国の口、終わりの楽園」ですけれど、なぜあれがメキシコでそんなにヒットしたのかが気になります。お金持ちしか映画を観ないというのならわかりますが…。 最後の方で、ようやく原題の意味がわかりました。 Y Tu Mama Tambien / And Your Mother Too

ガエル・ガルシア・ベルナルの出ている「アモーレス・ペロス」は好きな映画の一本です。 ただし彼のことは知りませんでしたし、「モーターサイクルダイアリーズ」を観たときも、同じ役者が出ているとは気づきませんでした。

「バスを待ちながら」は、スーパーエッシャー展を横目で見ながら晩御飯をかきこんで、ユーロスペースのキューバ映画祭で観て来ました。

投稿: axbxcx | 2006.12.17 18:46

axbxcx さん、

「アモーレス・ペロス」はまだ見ていませんでした。一度、ケーブルテレビからの録画に失敗してそのままです。今度見てみたいと思います。

「バスを待ちながら」はスクリーンでご覧になったのですね。レンタルDVD があるといいのですが。

今、下高井戸シネマでも、ヴィム・ヴェンダースやアキ・カウリスマキの旧作をやっていて見てみたいと思うのですが、上映時間が限られているのでなかなか見るのがむずかしいです。でも東京は、おもしろい映画祭があったり美術展があったり、やっぱりいいなぁと思うことがあります。

投稿: じゃりんこ | 2006.12.17 23:24

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