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アメリカ刑務所事情

「現代アメリカのキーワード」という本をようやく読み終わった。アメリカ人なら誰でも知っているようなことでも日本ではそれほど知られていないことは結構あり、それらから「重要でおもしろいこと」(by 編者)を81項目取り出して解説した本。それぞれの項目は確かに、へぇ、と思うようなことが多くておもしろかったけど、ほとんどは左から右へとぬけてしまったかな(^^;)。

そんななかで「刑務所産業複合体」Prison Industrial Complex という項目については強く「へぇ」と思ったので書き留めておきたい。

現在、アメリカの刑務所には200万人以上が収容されているという。これはアメリカの4倍の人口を持つ権力国家中国の刑務所人口より50万人多いんだそうだ。アメリカは自由の国、中国のほうがしめつけがきびしい、というような印象があるのに意外な感じがする。ちなみに日本の刑務所人口を調べてみると、7万人強だそうだ(2006年3月の記事 による。)アメリカの人口は日本の2倍以上だが、それにしてもアメリカの刑務所収容者人数の割合はかなり高い。

「他のいかなる民主主義国家も、アメリカほどの規模で市民を投獄していない。」何故、アメリカはこうなったのか。

犯罪が多いから、という説。確かに先進国のなかでもとりわけ殺人発生率は際立って高い(日本の10倍ほど)そうだが、犯罪と投獄率は必ずしも相関関係がないらしい。

このような刑務所に関わる仕事に携わって生計をたてているアメリカ人は現在230万人を超え、「アメリカ国内の3大民間雇用主であるウォルマート、フォード、ジェネラル・モーターズの総従業員数より多い。」結局、そのような刑務所産業を維持していくため、投獄者は政治的に生み出されているのだ、という説。

そして、「アメリカの人口の約70%は白人であるが、刑務所人口の70%近くは非白人である。」「刑務所や拘置所に入れられているアフリカ系アメリカ人男性の数は、大学に通っている者の数より多い。」また「アメリカの投獄率が急速に増加したのは公民権運動が様々な勝利をおさめたのと同じ頃だった。」というような事実から、「大衆の投獄は、公民権運動と社会福祉国家に対する保守的な反動として理解すべき」だとする説。「露骨な法的差別は解消されるなか、実は人種的、経済的民主主義は後退していることをこの『刑務所ブーム』は示している」

「9・11以降は警察権力と刑事罰が強化され、刑務所収容定員も拡大されている。」...成長を続ける刑務所。

この項目を読んで思い当たったのは、「身内が刑務所に入ったことがある」という話をしていた同僚を少なくとも3人思い出したことだ。お兄さんだったり、元ご主人だったり。私は、日本人の知人のほうがアメリカ人の知人よりずっとずっと多いけど、まわりの日本人で身内が刑務所に入ったという人は知らない。まあ、わざわざそんな話はしない、っていうこともあるかもしれないけど。それでもこれだけ刑務所に収容されている人の割合が高いのであれば、合点がいく話ではある。刑務所制度ははたして本当にアメリカの『自由と民主主義』を守るものになっているんだろうか...

4121018575現代アメリカのキーワード (中公新書)
矢口 祐人
中央公論新社 2006-08

by G-Tools

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経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

アメリカの刑務所は民間会社がやっていると聞いたことがあります。

たくさん囚人がいると儲かるんじゃ(笑)

http://carlos.cocolog-nifty.com/today/2006/04/post_b19b.html

まあ、こんなブログを1年前に書きましたが

投稿: カルロス | 2007.03.28 00:23

カルロスさん、

「刑務所産業複合体」という言葉は、アメリカの刑事司法制度に批判的な者が使う表現だそうです。民間の刑務所会社、巨大な刑務官組合、先導的な政治家たちがインフォーマルに協力し合い、社会の安全よりも利益を重視する巨大な刑罰組織を生み出してきたことへの批判があるようです。

アメリカではお金持ちになることはいいことだ、という感じはありますよね。もちろん日本でもみんなお金持ちになりたいでしょうけど、アメリカの場合、なんでも金儲けの対象にしてしまう、という感じがちょっとします。

投稿: じゃりんこ | 2007.03.28 19:50

司法を金儲けの対象とすることにはさすがの私も違和感を感じます。
株式公開している会社もありますが、投資もする気にはあまりなりません。(笑)

投稿: カルロス | 2007.03.28 23:53

カルロスさん、

それを聞いて安心しました(笑)

投稿: じゃりんこ | 2007.03.29 16:08

アメリカは刑が重い、そして犯罪となることも多い。
たとえば、某動物愛護団体の人が、懲役2年の判決で服役しています
それは、動物実験反対し、動物実験を行っている会社の業務を妨害したから

妨害といっても、ダンプで突っ込んだとか放火とかではなく、ただ単にそういう「○○社の動物実験反対」の言論活動(ブログや公演)を行ったから。
イメージを悪くして、会社を倒産させた、だから威力業務妨害。

投稿: たかゆき | 2009.09.25 01:13

たかゆきさん、はじめまして。

そうなんですか。
アメリカは言論の自由を保障している国かと思っていましたが、そうでもないんですかね。
おっしゃっている動物愛護団体の方のことについては私は何も知らないのでコメントしにくいのですが、もし、動物実験をした、という事実があって、そのことに反対を唱えたというだけなら、懲役2年というのはちょっと解せないですね。でも、それが原因で会社が倒産したようですから、陪審員をして「威力業務妨害」だと判断させるような事実があったんでしょうかね。量刑は裁判官が判断することになっているようですから、陪審制だと刑が重くなる、ということでもないのでしょうが。

投稿: じゃりんこ | 2009.09.25 16:10

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