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映画「パラダイス・ナウ」

イスラエル占領下のヨルダン川西岸地区の町ナブルスで。自動車修理工として働くふたりのパレスチナ人の若者が「自爆攻撃者として選ばれた。明日決行だ」と知らされる。当然のことのようにそれを受け入れるふたり。明日には自分は天国へ行ってしまうのだが、そのことは家族やまわりの誰にも気づかれてはならない...

明日死ぬ、というようなことをそんなに簡単に受け入れられるのだろうか。占領下で暮らしていて希望のない毎日だとしても。どんなに篤い信仰を持っていたとしても。...でも、映画を見ていると、それが自然な流れのように見えてきてしまう...

「他人を殺すのはまちがっている。イスラエルに攻撃の口実を与えるべきじゃない。他の方法があるはずだ」と主張する女性。彼女はヨーロッパで生まれてモロッコで育ったパレスチナ人で、最近パレスチナにもどってきたばかり。彼女の感覚は、私達部外者の感覚と通じるものがあるが、生まれてからずっと占領下で暮らしてきた者には空しい議論としか聞こえない。

ただ、彼らのなかに迷いがないかというと...私はあんな結末になるとはまったく予想していなかった。自爆攻撃に向かおうとする人も確かに普通の人間なのだ、と感じさせられた。

監督はイスラエルのパスポートを持つパレスチナ人ハニ・アブ・アサド氏。撮影もほとんどナブルスで行なわれたらしい。イスラエルやアメリカが「テロリスト」と呼ぶ人たちがどんな人たちなのか、多くの人に見てほしい映画だ。

自爆攻撃に向かう前に、決意や父母への別れの言葉をビデオに収めるシーンがある。ビデオカメラの調子が悪く、撮りなおしをすることになるのだが
(以下ネタバレ)


それを見ている組織の上部の人間が、スナックを食べ始める。青年は決死の覚悟を述べているというのに、なんと失礼な...と思ってしまうのだが、この場面は、「組織の人間はわざとそういうことをしているのだ」という解説がパンフレットにあって、そうなのか、と思ってしまった。自爆攻撃をする人間に対して感傷的な気持ちを抱いてしまったら、その人間の体に爆弾を巻きつけることなどできない。だから彼らは「食べる」という日常的な行為を通して、自爆攻撃という非日常的な行為を行なうものに感情移入しないようにしている...この部分の撮影を行なっているときには、モデルとなった組織が撮影現場に立ち会っていたそうだ。監督はこの部分を拒否されるのではないかと恐れていたが、銃の持ち方を注意されただけだったという。

パンフレットは、私は結構興味深く読んだけど、パレスチナに深く関わっている方達には不評のようだ。P-navi info のビーさんは、「数ページで簡単にまとめられるようなことではない事柄をあっさり口でしゃべっている」からなのだろう、と書いておられる。確かに、そんなに簡単に、したり顔でまとめてしまえるようなことじゃないんだろうな...

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コメント

じゃりんこさん、この映画、前売券は買ったのですが、まだ行けずにいます。 その上、先週、飛蚊症が出てしまい、検査の結果、網膜剥離で手術を受けなければいけないことになりました。 明日、入院です。 ということでしばらくアクセスできませんが、また来週。 上の娘は就職活動の真っ最中、下はアルバイトで塾で教えることになりこれから研修ということで、私がいなくてもしっかり世の中は回っているようですが…。

投稿: axbxcx | 2007.04.10 21:05

すみません。 コメント先を間違えました。 前売券は「約束の旅路」です。

投稿: axbxcx | 2007.04.10 22:43

axbxcx さん、

写真美術館では27日までとなっていますから、まだ当分大丈夫そうですね。私が行ったのは日曜でしたが、朝1番の回だったせいもあるのか、観客がまばらで、さみしくなりました。「約束の旅路」は結構人が入っていたのですが...宣伝力の差なのか、パレスチナに関心のある人はやはり少ないのか...パレスチナの人達は、世界がパレスチナに無関心であることにすごく傷ついている、という印象が私にはあって、「この映画、見て見て」と言いたくなってしまいます。

目の手術...って私にはすごく怖いものに思えてしまいます。きっと心配しなくていいものなんでしょうけど...どうか無事に終わって、快適な視力をとりもどされますよう、お祈りしています。

娘さんたちはしっかり自立されているようで、親としては喜ばしいことですね(^^)。うちはふたりとも高校生になりましたが、すでに「親の出番はお金がいるときだけ」という感じになってます(^^;)。

投稿: じゃりんこ | 2007.04.10 22:55

axbxcx さん、

前売り券は「約束の旅路」のほうでしたか。
こちらはまだまだ先までやっているから大丈夫ですね。
「パラダイス・ナウ」も、もしご覧になられましたら
ぜひ感想を聞かせてください。

投稿: じゃりんこ | 2007.04.10 23:02

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