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本「世界から貧しさをなくす30の方法」by 田中優、樫田秀樹、マエキタミヤコ

知らなかったことをたくさん知ることができた。

開発援助の多くが、援助される国のためのものであるというよりも援助する側の国のためのものであるという実態。日本の行なっている「援助」の多くは借款の形、つまり利子をとってお金を貸しているのだ、ということ。そして途上国の多くがその返済に苦しんでいる。そして今では、その年の日本からの援助額より日本への返済額のほうが上回る、という国が48カ国にものぼるのだという。そしてその日本の援助のお金を使って行なわれた事業がはたして貧しい人のためのものになっていたかというと、ダム建設のため無理やり立ち退かされた住民が苦しい生活をすることになったり、政権の上層部にいる人が私物化してしまって国民のために使われていなかったり...

それなら、ものをタダであげるのはどうか。かつて食糧難のアフリカに世界中から食糧援助が届いたとき、タダで配給されるものが市場にも流れ、値段が暴落し、結果的にその地域の農業を壊滅させてしまった。

必要なのは、問題に直面している人々自身が、自分の力を信じて行動すること。それがあってはじめて、外部からの応援が活きてくる。そこに住んでいる人たちの誇りを奪ってしまうような援助のあり方は何かがまちがっている。

ボルネオの先住民は、森に囲まれて食べ物にまったく不自由なく暮らしていたのに、アブラヤシプランテーションに森を壊されてしまってからは、森の産物も動物も自由に獲ることができず、食べ物を買うための金を稼がなければならなくなった。ところが、人々の生活は苦しくなったというのに、国民総生産(GDP)は上がる。自然から採集された産物で暮らしているときはゼロだったGDPが、食べるために外で働くとGDPにカウントされ、コンビニで食べ物を買うとGDPが上がる。それって何かおかしいんじゃないか。

放送大学の「途上国の開発」を聞いていると、基本的に農業化から工業化へ、という道をとることが貧困解消になるのだ、という立場だと思えるけど、そんなふうには言い切れないのかもしれないなぁと思う。

このほか、ストリートチルドレンの実践をやってみた小学校の先生の報告も興味深かった。どの記事もとてもわかりやすく書かれている。できればたくさんの人に読んでほしい本だと思う。

4772603778世界から貧しさをなくす30の方法
田中 優 樫田 秀樹 マエキタ ミヤコ
合同出版 2006-12

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書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

いろいろ問題はありますが、私は昔に比べればずいぶんよくなって来ていると思います。 いわゆるヒモ付き援助(tied)については、以前、カナダの援助機関CIDAのホームページを見て驚いたことがあります。 開発援助に使われるお金のうちどれだけがカナダに戻ってきているか、カナダにどれだけの雇用をもたらしているかなどを大きく書いてあったからです。 進んでいると言われている援助機関も、国内の納税者のた
めにはそのような宣伝をしなければいけないのかと、ちょっと意外でした。

また有償(一般の利子よりはずっと低いのでソフト・ローンと呼ばれたりします。これを有利に使いこなせる国がある一方、足枷になる国がたくさんあります。)・無償を問わず、現場の声にいかに答えるか、現場の意志をどう反映するかが勝負だろうと思っています。(実は国内の開発も同じだろうと思っていますが…。) それがここ10年ほど現場の声を聞き現場で考えること、あるいは参加型開発にこだわって来た理由でもあります。 そして特定の場所で問題を解決するようなプロジェクトでなく、必ず面的に問題を捉え面的に解決する方向を目指すこと。 要するに特定の人や場所だけを利するようなことは最初からしないということです。

また残念なことに途上国の首都の人たちは我々以上に現場のことを知らなかったり、現場の人の気持ちで考えることができなかったりしますから、いまの段階では我々が現場に行くしかないだろうと思っているのです。 首都で意思決定したり現場の組織やグループの書いた提案書を首都で審査したのではダメだというのが持論です。 それは国際機関・国・NGO問わずです。

この本自体は読んでいませんのでコメントできませんが、基本的には貧しさはどの国にもあると思っていますので、貧しさを語るときに途上国で語るつもりはありません。 問題は「格差」をどう押さえ込むか、つまり競争原理やグローバリゼーションのもたらす弊害をどう減らして行くかだろうと考えています。

投稿: axbxcx | 2007.06.20 16:02

axbxcx さん、コメントありがとうございます。

この本に書いてあることは、axbxcx さんはもうすでにご存知のことばかりでしょう。援助というと、相手のためにやっているものだ、と漠然と思っていた私のような輩には「そうだったのか」と思うことがたくさんありましたが。財政的にきびしい日本が国際貢献をするために使っているのは郵便貯金などの国民の貯金で、そのため利益をださなくてはいけない。援助は実はビジネスで、でも、それならお金を貸すにあたって借り手に返す能力があるのかどうかきちんと調査されていたのかというとそれもあやしい。そんなことも知りませんでした。

そうですよね、先進国といわれる国の中にも貧しさはありますよね。日本の「ワーキングプア」も現実の問題だし、途上国にもすごいお金持ちの人がいるわけだし、おっしゃるとおり格差が問題なんだと思います。

先進国から見て途上国が物質的に貧しく見えた、だから援助を、って、本当のところどちらが豊かな暮らしをしているのかわからないわけですが。結局、先進国のものの見方をおしつけてしまう、っていうのも問題なんでしょうね。ただ、人々の安全がおびやかされているようなところだと、まずはそれをなんとかしなければ、という話になるのでしょうけど。それでも部外者が見ただけではわからないことも多いでしょうから、現場の声を聞くのが何より必要なのでしょうね。

この本が出版されたのは2006年12月となっています。でも、axbxcx さんによれば「昔に比べればよくなってきている」とのことですから、同じように考える人が増えてきて、少しずついい方向に向かっている、ということなのかもしれませんね。

投稿: じゃりんこ | 2007.06.20 20:16

こんにちは じゃりんこさん。

よく円借款って耳にしますが、
単純に日本が援助しているって思ってました。

>必要なのは、問題に直面している人々自身が、自分の力を信じて行動すること。
それがあってはじめて、外部からの応援が活きてくる。そこに住んでいる人たちの誇りを奪ってしまうような援助のあり方は何かがまちがっている。

・・・なんだか、子供の教育論と似てますね。

じゃりんこさんとaxbxcxさんの往復書簡をいつも感心しながら読ませていただいてます。
私の知らない事を知る事ができてうれしいです。
(ちょっと、お利口さんになったみたい)

この本はまだ古本で出ていなかったので、
まず、「戦争をしなくてすむ世界を作る30の方法」を購入しました。
賛同するところもあり???のありでしたが。
まずは、論理の出発点が良く分かりました。

今、放送大学の中国社会の歴史的展開ってのを勉強していますが、
他の国の歴史を勉強する事は、自分の国を見直すって事に通じますね。
しかし、勉強すればするほど、戦争はなくならないような気がします。

申し訳ありません、いつも支離滅裂な文章で。
思った事を書いてしまったので、ごめんなさい。

投稿: まみ | 2007.06.28 10:37

まみさん、こんにちは(^^)。

放送大学を始められたのですか。面接授業などでお会いすることがあるかもしれませんね(^^)。

「戦争をしなくてすむ世界を作る30の方法」は私は読んでいませんが、この「世界から貧しさをなくす30の方法」は、私には本当によい本でした。本はたいてい図書館で借りるので、この本も図書館で借りたのですが、結局、購入しました。もし近くに図書館があれば、ぜひ読んでみてください。

往復書簡ですか(^^;)...ものわかりの悪い私に対して、いつも根気よく相手をしてくださる axbxcx さんには本当に感謝しています。
axbxcx さんに限らず、コメントをつけてくださる方からいろんなことに気づかされるし、ちょこっと感想をもらうだけでもいつも嬉しく思っています。私も自分で支離滅裂っぽい文を書いてるなぁと思うことありますが(^^;)、ここに何か書いておくと後から思い出す手助けになったりすることもあるので便利なんです。
というわけで、思うことがあっておヒマがありましたら、またいつでもコメントつけてくださいね(^^)。

投稿: じゃりんこ | 2007.06.28 21:18

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