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本「不実な美女か 貞淑な醜女か」by 米原万里

ちょっと前の記事「続・母国語にない音」 でもちらっと書いたけど、ロシア語同時通訳者の方が書かれた本。通訳という仕事をしていれば、おもしろい話はいっぱい転がっていそうだけど、実際そのとおり(^^)。笑えるエピソードが満載、でもって、言葉のことをあれこれ考えるのは私の好きなことだったりするので、とても楽しく読めた。

通訳が大変だろうな、と思うのは、他人の黒子に徹しなくてはならないこと。自分の信条に反することでも、仕事上、とにかく正確に訳さなくてはならないし、私情をはさむわけにはいかない。

また、その言葉に対応するような言葉がもう一方の言語にはない、ということはよくある話。たとえば、日本語には姉、妹、という区別があるけど、英語だと、普通は sister ですませてしまう。必要があるときだけ、older とか younger という言葉をつけるけど、何もなくその言葉が登場する場合のほうが多いから、それを日本語になおすときは姉というのか妹というのかちょっと困ってしまう。「彼女は私の姉妹です」とは普通は言わないもの。一方、日本語で「いとこ」で表される概念は、中国語では、父方か母方か、女か男か、年上か年下かによって8通りの言い方があり、それをひとつにくくる言葉(つまり、「いとこ」に相当する言葉)はないのだそうだ。

中国語に関するエピソードでもうひとつ、えーっと驚いたのは、中国人の青年に大変にお世話になった日本の年配の方が、感謝と親しみをこめて「君は私の息子だ」と言ったところ、相手は怒りのあまり顔面蒼白になった、というもの。どうして?と思われた方は、この本を読むなり、ネットで調べるなり、なさってください(^^)。

子どもがバイリンガルになる過程や、バイリンガルの子どもの思考方法とかに興味のある私に気になったのは、幼児期に複数の言語に触れさせることについての否定的な見解。米原さんもそう思っておられるようだ。紹介されていた、外山滋比古さんの「日本語の論理」という本をそのうち読んでみようと思う。

同時通訳は私にはできそうにないな、と前から思っていたけど、この本を読んでますますその思いを強くした(^^;)。逐次通訳をするとしたら参考になるような話はいろいろあった...けど、私はプロにはなれそうにない(^^;)...

4101465215不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か
米原 万里
新潮社 1997-12

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コメント

「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」を夢中で読んで、しばらくしたら米原さんの訃報でした。何か因縁を感じました...。

「不実な...」も読みました。エリツィンの話があったと記憶していますが、なんだかロシアの政治化を身近に感じたことでした。

投稿: Shira | 2007.07.22 22:14

Shira さん、

そういうこと、ありますねぇ。
私も、本屋でサルトルの本(新潮文庫)を手にとって友人とぐちゃぐちゃ話していた翌日だったかに訃報を聞いてびっくりしたことがあります。
Shira さんと違って、読んでたわけじゃない、ってところが決まりませんが...っていうか、私とサルトルにそんな因縁があるわけないですね(^^;)。

エリツィンはワガママで子どもみたいなところがあるんだけど、米原さんは扱い方を心得てたっていう話が出てました。何日か同行して、最後の日には、エリツィンが米原さんの頬にキスさせてくれ、と頼んだ、とか。あとがきか何かで別の人が書いていたと思います。

投稿: じゃりんこ | 2007.07.22 23:05

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