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映画「シッコ」Sicko

うーん、そうなのかぁ...と思ってしまう。アメリカは日本のように国民皆保険制度がなく、医療費が高い、ということは聞いていたけど、ここまでひどい状態だとは...。

最初に出てきたのが、足を怪我して傷口が結構深い人の映像。その人はなんと自分で傷口を縫っている!彼は保険に入っていない。医療費は高いから自分で治療すると言う。

保険には誰でも入れるわけではない。既往症があったりすると保険に入ることはできない。保険に加入できない既往症のリストをプリントアウトしたら家一軒くるめるほどだという。健康でないと保険には入れないのだ。

それでも、幸運にして保険に加入することができれば安心かというと...いざ、治療費が必要となったときには、保険会社はなんやかやと難癖をつけて払おうとしない。「そんな治療は実験的であり必要ではない」とか「(とっても小さな)病気の申告漏れがあったので契約は無効」とか...。治療費が払えないため、治療ができず、命を落とした人が何人もいるのだ...愛する娘や夫を失った人の話は胸につきささった...

アメリカでは、皆保険制度というのは社会主義的だと考えられていて、そんなことをしたら治療を自由に選べなくなる、と言われている。ヒラリー夫人が国民皆保険制度を打ち出したことがあったけど、結局つぶされてしまった。それはなぜ?誰のため?

そこで、監督のマイケル・ムーアは、他の自由主義の国に医療の現状を確かめに行く。カナダ、イギリス、フランス。どこでも医療は無料で、病気にかかったときに、治療費の心配をする必要はない。では、社会主義国のキューバではどうか。治療を担当しているのは政府系機関だからお粗末で効率の悪いものに違いない...と思ったら、ハバナ病院は近代的な設備を備えていて、治療は無料、薬代も格安。それらの国では医師は患者の病状を改善することだけに専念すればよく、この治療は保険でカバーされるか、とかどうしたら利益をあげられるか、なんて考える必要はない...(もちろんそれが当然だと思えるけど...)

そういう事実を提示されたら、確かにアメリカの制度ってヘンだ、と思えてくる。実際、アメリカの医療制度に泣いた人も相当数いるようだ。この映画がきっかけとなって、何か動きが起きればいいな、と思う。そしてその可能性もなくはないと思える。監督のマイケル・ムーアが「保険で悔しい思いをした人の体験談」を募集したところ、あっというまにたくさんの話が集まった。そのなかのひとりの話。彼の2歳の難聴の娘の治療に関して、保険会社は右耳のみの治療を認め、左耳は必要ない、との決定を下した。それに納得できなかった彼は保険会社に対し、「貴社の対応について、マイケル・ムーアに知らせる」と手紙を書いたところ、「左耳の治療も認める」との決定が下されたのだ。

ただ、映画の中で、カナダやイギリス、フランス、キューバの制度はとてもいいものとして描かれているけど、実際は完璧なものというわけではないだろう。フランスで、あれほどいろんなことにデモが起きているということは、今の生活に満足していない人もたくさんいるのだろうから。キューバにしても、ハバナ病院の施設はちょっと信じられないくらい素晴らしかったし、アメリカでそんな高価な薬がキューバで簡単に手に入るというのも...きっとそれは事実だったのだとは思うけど、いつもそんなにうまくいくとは思えない。
この夏キューバに旅行したときには、「ハバナ大学にはお金がなくて、パソコンやコピー機などの設備も十分にない」という話を聞いた。また、民宿では「トイレットペーパーは自分で用意するように」と言われたのでいくつかの店を探したのだけど、手に入れることができなかった。(というわけで、結局、おかみさんが用意してくれた。)
生活必需品が簡単に手に入らない(キューバの人たちには配給があるからそんなに苦労することはないのかもしれない。そのあたりの実態は私にはわからない)のに、薬は手に入るのだろうか。医療には力を入れているから?ありえないことではないとは思うけど...

そういう疑問点はあるにしても、一般のアメリカ人が普通のこととして受け入れてしまっている制度に「これって普通なの?」と問いかけた意味は大きいと思う。彼の "Do something" という姿勢はやっぱり好きだな。

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コメント

初めまして。
先日「シッコ」を検索していて初めて伺ったら、
マンチキン君のキリ番を踏んだふぴこママと申します。
私も観て来たので、TBさせていただきました。

アメリカのあまりの酷さにびっくりしました。
日本でよかった、と思うと同時に
アメリカのようになりかねないとも思ったりしました。


投稿: ふぴこママ | 2007.09.19 21:43

ふびこママさん、初めまして(^^)。
マンチキンの相手もしてくださったそうで、ありがとうございます(^^)。

ほんとに「これがアメリカなの?」っていう感じでしたね。今やアメリカというと、「利益追求が第一」っていう印象があります...

アメリカのやり方が好きな日本が、アメリカの医療制度を真似しなければいいのですが。

投稿: じゃりんこ | 2007.09.19 22:40

>アメリカのやり方が好きな日本が、アメリカの医療制度を真似しなければいいのですが。

そうですね。
でもテレビのCM枠を握っているのがアメリカの生保会社だったりして、だんだんと外堀が埋まりつつありますね。

たぶん、日本が国民皆保険が崩れるきっかけは、どこかの役所に不祥事だったりしますけどね。
本質をおざなりにして、国民保険なんかダメだ~とか叫ぶ指導者にずるずると・・・いくのが日本の姿だったりします。
郵政民営化と同じでアメリカから要望書という名の脅迫状が政府には届いているはずですから

投稿: カルロス | 2007.09.21 00:25

カルロスさん、横レスです。 ご存知と思いますが、下記に米国政府要望書の仮訳(駐日米国大使館)があります。 友人に教えて貰いました。

内橋克人のファンとしては、ネオリベラリズムの悪夢が去ることを願うのみですが…。

投稿: axbxcx | 2007.09.21 08:00

すみません。 サイトのアドレスを忘れました。

http://tokyo.usembassy.gov/pdfs/wwwfj-20061205-regref.pdf

投稿: axbxcx | 2007.09.21 08:00

カルロスさん、

確かに外資系保険会社のCMはよく見ますね。
いいことばかり書かれているようですが、実際支払いの段階になったらなんやかやと難癖をつけて払わない、というようなことがあるのでしょうかね。まあ、日本の生保会社もそういうことはあったようですが。

axbxcx さん、

紹介していただいたサイトの要望書で、該当部分と思われるところを読んでみると、好き勝手言ってるなぁ、という印象ですね。訳文で読んでいるせいもあるのでしょうが。私は国粋主義者ではないですが、日本としても対等の立場で物言いをしてほしいなぁと思ってしまいます。

投稿: じゃりんこ | 2007.09.21 20:02

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