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映画「ブラインドサイト」

目の見えない子どもたちがヒマラヤ登頂をめざす、と聞いて、「いったい何のために?」と思った。目の見える者なら、山の頂上に立ったとき、素晴らしい景色をのぞむことができるだろう。山に登っている間も。でも、それらのものを何も見ることができないのに、苦しい思いをして何故登るのか。

チベットでは、盲目の人たちは、前世に悪いことをしたのだと考えられていて、差別を受けている。身内からすら疎まれていることがあり、子どもたちは十分な教育を受ける機会もなく、自分自身に誇りを持てずにいる状況だった。そこへドイツからやってきた盲目の女性サブリエが目の見えない子どもたちのための学校を作り、子どもたちにチベット語、中国語、英語を教え、いろいろな経験をさせたり、技術を身につけさせて、盲人であることを恥じる必要はないのだと知らせていく。

そんななか、盲人として初めてエベレスト登頂に成功したエリックのことを知ったサブリエは、エリックにメールを出して、学校を訪問してほしいと頼む。それがきっかけとなって、子どもたちがヒマラヤ山系の7000m級の山ラクパリ登頂をめざすプロジェクトがスタートする。

子どもたちは自分の可能性を試したいのだ。盲目だからといって何もできないわけじゃない。エベレストを目指した者のうち20パーセントは死亡しているという。そんな大変なことに挑戦できる...その機会に手をあげたのは6人の子どもたち(14歳から19歳)だった。優秀な山岳ガイドがひとりひとりの子どもにつき、山を登るためのトレーニングを経て、いよいよヒマラヤへと向かう。

山の景色は圧倒的だ。子どもたちはこの景色を見ることはできないけど、全身で感じてはいる。ただ、体力的には多くの子どもたちにとってはかなりきつい行程で、ついていくのが大変な子どもも出始める。高度が高くなるにつれてさらに...。そして、子どもたちにやはり頂上をめざせさせるか、それとも何人かはあきらめさせるか、それともいっそのこと全員下山するか、ということについて、スタッフの間で意見が対立。その議論の様子もカメラに収められていて、私自身、どうしたらいいんだろう、と映画を見ながら一緒に悩んでしまった。子どもたちの気持ちやそれぞれのスタッフの気持ちが痛いほど伝わってきて、そんなふうに感じさせてくれた、という点で、この映画はすごいと思う。

ただ(以下完全ネタバレなので、まだ見ていない人は読まないほうがいいと思います)

映画を見た後、先にこの映画を見た友人と話したところ、彼女が言うには、「この映画は子どものほうを向いていない」。「対立だって大人の話で、子どもの気持ちをあまり考えていない」。私が「でも、サブリエは子どものことを考えてたでしょ」と言うと、「子どもたちに何かあったら学校が非難される、と恐れていた」と言う。

確かにそうかもしれない。山頂を目の前にして、高山病にかかったソナムは、翌日、「もう大丈夫だから。」「今やめたら、すべてが無駄になる」と泣いていた。それでも死の危険があるなら、登頂を止めるのは大人の責任だろう。ただ、体力的に頂上をめざすことの可能だった子どもたちまで下山させてしまったことがよかったのかどうか私にはわからない。スタッフ達が議論の末、出した結論なのだから、それを支持したいと思うけど、子どもたちは本当に満足したのかなぁとは思う。

子どもたちが一番楽しそうに見えたのは、氷の宮殿で遊んでいるときだ。ヒマラヤ登頂という偉業に挑戦する必要があったのか、それは大人の気持ちではなかったのか。...

まあ、それでも、これに挑戦した子どもたちが何かを得たのは確かで、この後、ずいぶん変化を見せた子どももいるという。また、盲目の登山家エリックが、「今回の登山では、山に登ることそのものよりも、友情とか一緒に仲間がいることの大切さを感じた」と言っていたのが印象的だった。

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コメント

あれ、ニアミスでしょうか? 今日、昼前にこの映画観ました。 あの景色と太鼓の音だけでも何だかスーッと惹きこまれる感じでしたが、最後の緊迫感がまた…。 それと子どもの一人が「前世で悪いことをしたかも知れないけれど人は殺していないと思う」と言っていたのが強烈に印象に残りました。

教育も開発も同じだと思うのですが、目に見える成果(成功するか失敗するか、あるいは勝つか負けるか)を追いかけるのか、それとも自分たちに力がつくこと(あるいは仲間とのconnectionやtogetherness)のためなのか。 開発の世界では前者を「期間限定・地域限定」のプロジェクト・アプローチ、後者をプロセス・アプローチと呼んだりしてますが…。

The Turtlesの"Happy Together"は大好きな曲だったので、何だか嬉しかったです。 先日DVDで観た「Dear Wendy」に使われていたThe Zombiesの"Time of the Season"も好きでしたが…。

http://www.youtube.com/watch?v=XSV1URdtgTc

お昼は吉祥寺でパエリアを食べて、それから歩いて帰りました。 速足で1時間20分、およそ1万歩でした。

投稿: axbxcx | 2007.11.18 23:57

じゃりんこさん、一応ネタバレの部分についてのコメントを。 私は子どもの方を向いていないと言うよりも、自分の思い・価値観が優先しているということだと思いました。

でもそれって当たり前で、そうじゃない人は少ないし、いても「聖人」なんじゃないかと…。 さらに言えば、監督はそれがわかるように作っている訳で、それぞれの個人(スタッフの一人一人、6人の子どもたちの一人一人)の異なる「思い」を表に出そうと努めて、それに成功しているということなんだろうと感じました。 極めて人間的な、リアルな映画に仕上がっていると…。 結果として、私はそれぞれの登場人物に親近感を持ちました。 決して英雄とかスゴイことをやった人としてではなく、それぞれ一人の人間として…。

あの氷の宮殿のシーンが入っている意味も、いろいろあったけれどこれでよかったんだ、頂上になんか行かなくても目的は達成されたんだ、激論もしてよかったんだ…ということの象徴なのだろうと理解しました。

ちなみに監督もプロデューサーも女性ですね。

http://www.blindsightthemovie.com/characters.html

投稿: axbxcx | 2007.11.19 00:42

あ、axbxcx さんもご覧になったんですね(^^)。私は土曜日でした。相変わらず下高井戸シネマはおもしろいのをやってますね。歩いて行けるような距離ならいいのですが(^^)。

土曜はこの映画を見た後、渋谷でごはんを食べてからイメージフォーラムで「いのちの食べかた」を見ました。同じくイメージフォーラムでやっている「ヴィットリオ広場のオーケストラ」というのも見たかったのですが、さすがに1日3本はちょっときつく...。もし放送大学の通信課題がさっさと片付けば見に行きたいと思っています。

私もこの映画、かなり好きでした。山岳映画っていうのにともかく惹かれる、というのもありますが、「作りすぎ」のドキュメンタリーと「まったく作らない」ドキュメンタリーを見たりすると、この映画は、対立の過程を隠したり編集したりすることなくそのまま残していて、観客としてかなり感情移入しやすかったと思います。

ただ、頂上まであと少しというところで、子どもたちに「ここまで来たんだ、すごいねー」とスタッフが盛り上げている場面がありましたが、彼自身無理してるのを感じたし(そう思おうとしていたのは認めますが)、子どもたちもそう感じただろうな、と思って...。でも、確かにおっしゃるように、氷の宮殿の場面を見ながら、これでよかったんだな、という気がしたのも事実です。

"Happy Together"、私は知りませんでしたが、いい曲ですね(^^)。

投稿: じゃりんこ | 2007.11.19 00:58

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