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占領のおかしさ

ヨルダン川西岸地区から、パレスチナ人のファトヒ・クデイラートさんが来日され、昨日、その話を聞きに行ってきた。話を聞いていて感じたのは占領のおかしさだ。イスラエルはパレスチナの土地を占領し、そこに自分たちの法律を適用する。たとえば、3年間耕されなかった土地は法律により没収される。パレスチナの農民は、壁で囲われてしまった自分の農地に行くことができず、耕せなかった、そうだとしても、だ。それってすごくヘンなことなのに、そういうことがまかり通っている。そして相変わらず、イスラエルは違法に入植地を増やし続けている。

どうしてそんなことが今も続いているんだろう。ファトヒさんはパレスチナの現状を南アフリカのアパルトヘイトにたとえておられた。黒人は黒人居留区に押し込められていたこと。そんな状況はおかしいと今なら誰もが言うだろう。でも、パレスチナでは今もそんな状況が続いている。パレスチナ人の住むところとユダヤ人の入植地では生活水準もまるで違うのだ。

パレスチナ人の住む地域には水もないし、産業もない。人々は入植地に働きにいかざるをえない。子どもたちですらイスラエルのための安価な労働力となる。児童労働はもちろん違法なのに。そしてパレスチナ側にはものがないから、入植地で生産されたものを買わなければならない...。

どうして未だにそんなことが行われているのか、信じられない気持ちだ。ぜひイスラエルの人の考えを聞いてみたいなぁと思う。入植地の建設は違法ではないんですか、パレスチナの人たちの生活の権利が奪われていることをどう思いますか、と。

ファトヒさんは、これはユダヤ人対パレスチナ人という問題ではない、と言う。問題なのはシオニストだ。ユダヤ人とパレスチナ人が同じ土地に住むことは可能で、そうやって暮らしてきたのに、シオニストがイスラエルを建国して壁を築いてしまった。でも、この地にイスラエルとパレスチナという二国を建設するのは現実的な解決にならない。

で、現在、何が問題になっているかというと、日本(JICA)がこの地で「平和と繁栄の回廊」創設というプロジェクトを開始したこと。パレスチナ自治区のヨルダン渓谷で農業開発支援をしようという構想で、イスラエル、パレスチナという対立する当事者が協力して取り組むことで信頼関係を醸成し、またパレスチナ人に雇用をもたらすとされている。一見、良いことのように思えるけれど、現在、イスラエルがこの地を「管理」(占領)している、という事実については問題視していない。つまり、この状態が固定化されてしまう可能性が強く、利益はイスラエル側の企業にいくと思われる...

日本人として、どのような開発援助が行われているのかについてはもっと関心を持たなければならないだろう。地元の人の望まないような開発にお金が使われているなら、そんな開発はやめるように声をあげなければ...それがあなたたちの責任だ、とファトヒさんは言う。

ファトヒさんの英語は私にはちょっと聞き取りにくく、会場からの質問への答えも、通訳を通すためもあってか的を射ていないものもあった。なんだかわからないことだらけで、どうしてこんな理不尽なことが今も続いているんだろう、という疑問ばかりが大きくなった....でも、そういえば、答えもあったのかもしれない。占領から利益を得ている人がいるから...。だから私たちはイスラエルの製品を買わないようにしなければいけない。イスラエルを支援している企業には投資をしないようにしなければいけない。アパルトヘイトが廃止されたのは国際的な経済制裁という圧力があったからだ。

それにしてもイスラエル支援企業ってなんと大企業が多いことか...私もずいぶんお世話になっている(--;)...。

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コメント

じゃりんこさん、私にはどうしてよいのかわかりませんが、ただ「シオニストが壁を築いた」のは確かだとしても、「シオニストがイスラエルを建国した」というよりも欧米が「厄介払い」したことが根本的な原因ではないかという気がします。 ケニアも候補地になっていましたし、エチオピアあるいはロシア極東もあったかと思いますが、いまのイスラエルに建国すれがこうなることは当然わかっていた訳ですし…。

投稿: axbxcx | 2007.12.03 11:14

axbxcx さん、

ヨーロッパにおける民族主義の高まりがユダヤ人への迫害をきびしくし、そのためヨーロッパを出るユダヤ人が多くなったのだと理解しています。当初は圧倒的にアメリカを移民先として選ぶ人が多かったそうですが、そのうち「ユダヤ人国家」を建設すべき、という考えが出てくる。候補地には、おっしゃるように東アフリカのウガンダなどもあげられていたようですが、結局はパレスチナを選ぶことになった。そうしなければ宗教的なユダヤ人の支持を得られなかったから...。「国のない民へ、民のいない国を」が運動のキャッチフレーズだったそうですが、実際にはそこは民のいない国などではなかったわけです。ただこの段階ではユダヤ人のパレスチナへの流入は土地の買収を通じて行われたそうで、合法的といえるものだった。ところが、1947年、国連がパレスチナ分割決議案を可決したときには、シオニストが所有していた土地はパレスチナの7パーセントに過ぎなかったのに、57パーセントをユダヤ人に割り当てることになっていた。パレスチナ側としては当然受け入れられない内容なわけですが、その後イスラエル側は戦争によって領土を拡大していった...。(放送大学「第三世界の政治」のテキストを見ながら書いてます(^^;))
そういう歴史を見ると、今のパレスチナの状況に対して、国際社会にもずいぶん大きな責任があると思います。

投稿: じゃりんこ | 2007.12.03 17:50

じゃりんこさん、ご説明ありがとうございます。 私もやはりその1947年11月29日(つい先週が60周年だったんですね)の国連決議181号(パレスチナ分割決議)に至るプロセスが問題だと思います。 ユダヤ人が「約束の地」にユダヤ人国家を建設したいと思う、あるいはしようとするということは当然であってそれを責めることはできないと思いますが、それを認めさせた米国・英国などの動きに問題があったという理解です。

それから、ちょっと調べてみたのですが、1903年のロシアでのユダヤ人虐殺事件(ミュージカル「屋根の上のバイオリン弾き」の背景でしょうか)の後にユダヤ人国家建設の候補地になった(英領)ウガンダと言うのは、その後東アフリカ保護領になり、いまはケニアの西部に位置している高原地帯だと思います。 私はケニア人からケニアと聞いていたのですが、当時は英領ウガンダだった場所のようです。

投稿: axbxcx | 2007.12.03 22:19

axbxcx さん、

7パーセントしか土地を所有していなかったユダヤ人にどうして半分以上も与える、という決議になったのか、そのあたりの事情がよくわかりませんが、二次大戦で連合国側にたって戦ったシオニストたちは、しだいに、戦後にユダヤ人国家の樹立を求めるようになっていったようです。それまでは「ナショナル・ホーム」という言葉を使い、「国家」という表現をシオニストは避けてきたのに、国家を求めるようになったのは、自分たちの力に自信をつけてきたのだと思われます。

ウガンダとケニアはそういう関係なのですね、なるほど。

「屋根の上のバイオリン弾き」、私は見ていないのですが、放送大学の「第三世界の政治」のテキストに、ナポレオン後のヨーロッパで「ポグロム」と呼ばれるユダヤ人迫害の動きが起こり、これが「屋根の上のー」の時代背景である、という説明があります。ディスカスの予約リストに入れました。

しばらく前、「太陽の雫」という映画をDVDで見たのですが、ヨーロッパのユダヤ人は大変な思いをしてきたんだなぁと思いました。そのユダヤ人が今度はパレスチナ人を迫害している、というのがまたわかりませんが...。

「国家」は必要ない、共存ができればいい、とパレスチナの人たちは考えているようです。イスラエル側の話を聞く機会がほとんどないので、話を聞く機会があればいいなぁと思っています。

投稿: じゃりんこ | 2007.12.03 23:19


今、手塚治虫のコミック「アドルフに告ぐ」を読んでいます。この話しはあくまでフィクションですが、国家レベルのゴタゴタが個人の生活や心情に影響していく様子が上手く描かれているなーと思います。
 

投稿: tabe | 2007.12.17 13:43

tabe さん、

手塚治虫、おもしろいよね。。。っていうほど読んでいません(^^;)が、「火の鳥」とか好きでした。「アドルフに告ぐ」はユダヤ人が出てきたりするのね。おもしろそう。図書館で借りられそうなので読んでみます。

投稿: じゃりんこ | 2007.12.17 16:13

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 現状がそうである以上、「良くなったことも少しはある」ことなど何の慰めにもならないし、「慰め」という発想をすること自体が不謹慎である。そのことに思い至れば、日本政府の「平和と繁栄の回廊」構想の根本的な罪深さもはっきりしてくる。... [続きを読む]

受信: 2007.12.07 12:56

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