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本「となりのクレーマー」by 関根眞一

副題が「『苦情を言う人』との交渉術」で、著者は長年、大手百貨店のお客様相談室を担当してきた人。「お客様相談室」っていやな仕事だろうなぁ、と思ってしまうのだけど、この著者は、「人間の様々な面を見ることができて楽しい」とまで言っておられる。確かに人間の心理を読んで対応しなければならない仕事だし、奥が深いんだろうなぁ。

「クレーマー」というのは無理難題をふっかけてくる人で、普通に苦情を言う人のことはクレーマーとは言わない。「クレームは宝の山」という言葉があるそうで、確かに、苦情からいろいろ学ぶことも多いだろう。また対応の仕方いかんで、よい顧客となってもらえる場合もある。私もパソコンなど電化製品の故障でお客様相談室に電話したり、メールで問い合わせたりすることがあるが、その対応がそのメーカーや店に対する印象を形作る。クレーム対応はそれほど大切なものであるとわかってはいても、普通の苦情でも聞くのはうれしいものではないし、ましてクレーマー相手...なんてできればごめんこうむりたい。

でも、そうやって「とりあえずさっさと片付けてしまおう」というようないい加減な気持ちで臨むとかえって問題が長期化したりする。「いやだな」と思っている気持ちは態度に出るし、客は敏感にそれを感じ取る。基本は、お客様の意見をじっくりお伺いする、という気持ちで臨むこと。相手に間違いがある場合は、やんわりとそれに気付かせる工夫をすること。それでも相手がクレーマーであれば、毅然とした態度で臨み、安易にお金による解決をしないこと、等等。紹介されているいくつかの実例は、必ずしも「美しい解決」とはいえないものも含まれていて、著者が自分に都合のいい例ばかりをあげているわけではないことがわかる。

保育園は「サービス業」という位置づけなので、私たちも毎年サービス従業員としての研修を受ける。一月ほど前に受けた研修では、"Give'em the pickle"(お客様にはピクルスを)というビデオを見た。顧客のほしがっている余分のものを与えよ、それがサービスだ、ということで、「お客様がご主人様だ」(The customer is the boss) という言葉が出てくる。「日本では『お客様は神様だ』という言い方をするそうだ。まあ、私たちの場合は、god まではいかないけど、ご主人様ということだね」とは、解説をしていた人の弁。さらに、「むちゃくちゃな要求をする人がいたらどうするか」という問いを出し、誰も答えないと、「それでもやっぱり『お客様は神様』なんだ」と言っておられた。それを聞いて、「でも、本当に無茶な親だっているのに、それに従うだけでいいんだろうか」と思ったのだが、この本の対応のほうが、"Give'em the pickle" よりも現実的だと思えた。

著者は、百貨店のお客様相談室を退職した後、医者や教師の苦情対応に関わってこられた。医者や教師は、苦情を言われることに慣れていないので大変だ。この本は、百貨店に勤める人だけでなく、一般の人々も苦情対応を学ぶことができるように、という意図で書かれていて、とても読みやすかった。

4121502442となりのクレーマー―「苦情を言う人」との交渉術 (中公新書ラクレ 244)
関根 眞一
中央公論新社 2007-05

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