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映画「光州5・18」 May 18

1980年の光州事件のニュースを聞いた覚えはある。それが具体的にどんなものだったのかをこの映画を通してある程度感じることができた。

軍によって人々が虐殺された事件、くらいのイメージはあったので、重苦しい雰囲気の映画だろうと思っていたら、話は拍子抜けするほど明るいトーンで始まる。タクシー運転手のミヌは看護士のシネに恋していた。なんとか彼女の気持ちを自分に向かせたい、と同僚のインボンからアドバイスを受けているが、このインボンという人が実におちゃらけたキャラで笑わせてくれる(^^)。弟をだしに使ってなんとかデートにこぎつけ、一緒に映画を見ているときに事件は起きた...

一般の人々に暴力を振るう自国の軍隊。そんな信じられない光景が展開するなか、普通の人々が軍に抵抗せざるをえなかった心理がよくわかる。最初の明るいトーンが、「こんな事件がなかったら、みんな楽しい毎日を過ごせたのに違いないのに」という思いを強くさせる。

ただ、兵士の側については、同胞に対してどうしてあんなひどいことをすることができたのか、という疑問は残る。シネの父親に挨拶に来た兵士のように、軍のやり方に疑問を感じていた兵士もいるだろう。韓国では徴兵制があるようだから、一般の人たちが兵士になっているはずで、軍隊で訓練を受けたとしても、一般市民の感覚とそれほどかけはなれているとは思えない。市民に銃を向けることに迷いはなかったのだろうか。軍では上官の命令は絶対で逆らうことができなかったのだろうとは思うけど。

でも、市民の側の思いは本当によく伝わってきて、最後まで目がはなせなかった。シネ(イ・ヨウォン)、インボン(パク・チョルミン)役の人が特によかった。

衝撃を受けた場面は(以下、完全ネタバレなので映画を見ていない人は読まないほうがいいと思います)

シネが思わず兵士を撃ってしまうところ。その後の彼女の狼狽ぶりに胸が痛くなった。目の見えないおかあさんが自分の子どもの遺体を手でさわって確かめながら、自分の子であるはずがないと否定する場面。生徒がデモに向かうのを止めていた先生が、もう止めない、と歯磨きを目の下に塗ってやる場面。

最後のミヌの決断について、名誉を捨ててシネを守る、という選択はなかったのかなぁとちょっと思う。暴徒であったことを認め武器を捨てて投降すれば命は助けてやる、と言われた。自分は暴徒じゃない。だからこそ戦ったのだ。暴徒であると認めるわけにはいかない。彼は自分の誇りを守った。でも、明日からシネを守る人はいないのだ。シネは父親も失ってしまったのに...。投降するのはかっこ悪いけど、本当は一番思いやりのある行為なんじゃないだろうか。

その後、光州の人たちはどうなったんだろう。暴徒は鎮圧されたということで町は次第に平常にもどっていったのだろう。ほんの30年前にお隣の国で起こっていたこと...そして現在でも、ミャンマーではサイクロンの被害に対して国際社会からの援助を軍が拒むという事態が起きている。軍隊って人間の感覚を異常にするものなのかもしれない。

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コメント

ご覧になったのですね。私は、歯磨き粉のシーンで号泣でした。それに続くシーンで、生徒の机の上の白い花が、いつのまにか増えているシーン。泣きました。

同じ光州事件を扱った「ペパーミント・キャンディー」は見ていないので、ツタヤディスカスを待ってます。じゃりんこさんはご覧になりました?
 

投稿: tabe | 2008.05.18 01:39

tabe さん、

あの歯磨き粉のシーンはこたえますね。私もこの映画、途中から涙が出て涙が出て...映画を見てあんなに泣いたのは久しぶりです。

ペパーミント・キャンディは見てないです。ディスカス見てみたけど、借りにくくなってますね。みんな考えることは同じ(^^;)。見ておもしろかったら教えてね。

投稿: じゃりんこ | 2008.05.18 07:38

自分だったら、やっぱ投降するだろうな、、と思いつつも、ワンワンないちゃったっす。

投稿: yoshy5.18 | 2008.05.30 07:57

yoshy5.18 さん、はじめまして(^^)。

この映画、確かにかなり泣いてしまいますよね。
投降するのは、ほんとは一番思いやりのある行為じゃないかって、本文にも書いたけど、思います。
最後の花嫁姿のシネが悲しい顔をしているけど、ミヌが生きていたら、彼女もにっこりできたかもしれないのに。
なんとなく"Billy, don't be a hero" という歌を思い出しました。この歌も聴くだけでちょっと涙がでてしまいます(^^;)...

投稿: じゃりんこ | 2008.05.30 22:40

はじめまして。
私自身この映画を観ました。
「光州5.18」のじゃりんこさんのコメント、なかなかのものと感じます。
韓国軍による市民虐殺および、市民側の武装蜂起、この「光州事件」が映画となり、日本においても劇場公開されることは、かなり重たい意味があると思います。
その事件を背景にして、映画化のためにある程度脚色されていることは、理解できます。
実際としては、「光州市民軍」の中でも事態収拾させ投降の方向に動く人も結構多かったようです。
軍の弾で一般市民が犠牲になることは、絶対さけたいと、つくづく感じている者であります。
ご存知でしょうが、1988年の盧泰愚政権の時に、韓国政府は光州事件での軍の行動について謝罪しました。
かつ、「光州市民軍」の行動も、韓国政府によって、肯定的に評価されています。
Wikipedia の 「光州事件」貼っておきます。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%89%E5%B7%9E%E4%BA%8B%E4%BB%B6

投稿: どとうとしや | 2008.06.01 20:38

どとうとしやさん、はじめまして(^^)。

映画館でこの映画の予告編を見たときに、友人が「韓国ではこういう事件が映画化されるっていうの、すごいよね」と話していました。他には「ユゴ 大統領有故」とか。その時代を生きていても、その出来事の意味をまったくわかっていなかったりする(^^;)ので、こういうふうに映画にしてもらって初めて、ああそういうことだったのか、とわかる、という感じです。

韓国政府によって光州事件がどういうふうに評価されているのか、ということも知りませんでした。解説ありがとうございましたm(_ _)m。

投稿: じゃりんこ | 2008.06.01 21:01

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