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映画「花はどこへいった」

冒頭の、女性の澄んだのびやかな歌声にまず魅せられた。"What have they done to the rain?" 「ほんの少しの雨。雨の中に立っていた男の子。草は枯れ、男の子はいなくなった。あの人たちは雨に何をしたのか...」この歌は知らなかったけど、声には聞き覚えがあった。Joan Baez. ジョーン・バエズ。ボブ・ディランの「風に吹かれて」などを歌っていたのをCDで聞いたことがある。

監督の坂田雅子さんの夫グレッグ・デイビスさんはフォトジャーナリストだった。2003年春、体調が悪く入院したところ癌であったことがわかり、あっというまに亡くなってしまった。友人の写真家から「彼の死はベトナムで受けた枯葉剤のせいではないか」という示唆を受け、坂田さんは枯葉剤について調べ始める。そしてこの映画ができあがった。

最初の枯葉剤の散布が行われたのは1961年。それから米軍によって10年間続けられた。坂田さんは戦後30年以上も経ってベトナムに行き、枯葉剤の取材をしようとしても、その影響を見るためにはかなり奥地まで行かなければならないのではないか、と思っていたが、枯葉剤の被害者はそこここで見受けられた。子ども、孫の代になっても、その影響で障がいをもった子どもが生まれているのだ。ここでは戦争は終わっていないー本当にそうだ、と思った。

障がいを持って生まれてきた子どもも、家族の愛情を受けて育っているし、子どもたちの表情がとても明るいことに驚かされた。家族も米軍への恨みを口にするのではなく(口にしても当然だと思うけど)、こういう子どもが家族になったという事実を受け入れ、ただ、現実的な援助を期待している。そして米軍は枯葉剤の影響を調査しようとはしない。調査すれば因果関係が明らかになって補償問題が起きるのがわかっているからだ...

坂田さんの映画からは、静かだけど明確なメッセージが感じとれた。また、ご主人をはじめ、米軍の兵士としてベトナム戦争を戦った人たちも傷ついていることも知ることができた。米軍の兵士だった人が、戦後、ベトナムを訪れて現地の人とした会話を聞いたときには思わず涙してしまった。ドキュメンタリーって眠くなってしまうようなことも結構あるんだけど、この映画には全然そういうところがなかった。とてもいい映画だったと思う。

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