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映画「イントゥ・ザ・ワイルド」

大学を優秀な成績で卒業した若者(クリス・マッカンドレス)が、物質至上主義社会と両親への反発から、誰にも告げずに旅に出る。自然と一体化した暮らしがしたいと、お金も持たずに「食べられる植物」というような本を持って。しばらく農場で働いてそのお金でライフルを手に入れ、獣の捌き方や燻製の仕方も教えてもらった。電話とかコンピューターとか、そういう文明の利器を使うことなく、自分の頭と体を使って自然を相手に生きる。人間よりも自然とともにありたい。

映画を見ながら、私にはできない生活だなぁと思ってしまった。ほんの2週間旅行に行くにも携帯電話を手放せない。水道の水漏れが直せなくて業者に来てもらう。車を定期点検に出す。車もコンピューターも、自分の使っている道具の仕組みをわかっていなくて、自分の生活を維持するために、たくさんの人の力を借りなくてはならない。荒野でひとりで暮らすなんて耐えられない。

彼は人間嫌いというわけじゃない。旅の途中で出会う人たちと、温かな人間関係を築いている。残った学資を貧しい人に寄付するような優しい心の持ち主だし、教育もあり、不躾でもない。でも、物質主義に毒された社会、くだらない法律(ルール)の支配する社会に我慢できず、究極の自由を求めた。アラスカの大地で彼はそれを得た、と思った。幸せだった。

彼の行動は青臭い。両親に告げずに勝手に放浪の旅に出てしまうという行為は、親の立場からは許せない。彼がどんなに両親を嫌っていたのだとしても。でも、彼の純粋さは魅力的だ。そして、彼が旅した場所の景色も本当に魅力的で、アメリカにはすごい自然がたくさんあるんだなぁと思う。彼がメキシコからロサンゼルスにもどってきたとき、街の風景がなんと貧しく見えたことか。聳え立つ立派なビル、そしてそこからはじきだされた人々。大自然のなかではそんなことがない。自然は人をそんなふうに区別しないのだ。

撮影監督が「モーターサイクルダイアリーズ」を撮った人(エリック・ゴーティエ)だと知って、納得。撮っている人がこの風景に感動していることがわかるというか...。また、この彼が実在の人だったのだと知ってびっくり。日記などが本当に残されていたのだろうか。映画の最後は創作だろうけど、実際に彼があんなふうに感じていたのならよかったなぁと思う。

心に残ったのは(以下ネタバレなので、見ていない人は読まないほうがいいと思います)

孤独の中で、空腹と体調不良にさいなまれ、彼がノートに書きつけた言葉。

Happiness only real when shared.
(幸せはわかちあったときにだけ現実のものとなる)

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映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

思っていたよりずっと共感できる部分がありました。 Happiness only real when sharedは忘れられませんね。 それと最後に自分で撮って、カメラに入ったままだったという本人の写真の、ニッコリして穏やかな表情なこと…。 早速原作を注文しました。 生きて帰って、予定どおりハーバードのロースクールにでも行っていたら、どんなことができたか…。

投稿: axbxcx | 2009.01.13 17:45

axbxcx さん、

ご覧になったんですね(^^)。これもスクリーンで見たい作品ですよね。

>思っていたよりずっと共感できる部分がありました。

axbxcx さんはアウトドアの暮らしが得意そうですから、見る前にそんなふうに感じておられたというのはちょっと意外です。

撮ったのはショーン・ペンなんですよね。ハリウッドで活躍してきた人がこういう映画を撮れるんですね。アメリカにはやはりまだまだたくさんの魅力がありそうです。

本当に、戻ることができていたら...と思いますね。でも、親の期待通りに動くのではなく、自分で選んだ道ですから、あんな結果になってもそれを受け入れることができたんでしょうね。

投稿: じゃりんこ | 2009.01.13 20:25

アウトドアは好きですけれど、典型的な現代人ですから…。

観る前は「狩人と犬、最後の旅」みたいな本当のウィルダネスの映画のイメージを持っていたんですが、私にももっとよく理解できると言うか、共感する部分の多い映画でした。

ただ、本人よりも親や出会った老人・年上の人たちの気持ちの方がよくわかったりして、歳を感じてしまいました。

全然ジャンルは違いますが、ずいぶん昔に観たアラン・パーカー監督、オリバー・ストーン脚本の「ミッドナイト・エクスプレス」をちょっと思い出しました。 あれも元は実話でした。

投稿: axbxcx | 2009.01.13 21:01

axbxcx さん、

>典型的な現代人

うーん、そうですか??

彼が出会った人たちもおもしろい人たちでしたね。私も親の立場ですから、同じような思いはあります。

「ミッドナイトエクスプレス」、私は去年DVDで見ました。話の展開はおもしろいし、これが実話だというのはすごいなぁと思いましたが、全体的にトルコ人が悪者という感じで描かれているのに違和感を覚えました。この映画で描かれている時代には刑務所の実態とか、そういう事実があったのかもしれませんが、私がトルコに行ったときはトルコの人たちにはいっぱい親切にしてもらったので、この映画を見た人が「トルコってこんな国なんだ」という印象を持ったらいやだなぁと思いました。
私は「イントゥ・ザ・ワイルド」を見て「ミッドナイト・エクスプレス」は思い出しませんでしたが...

投稿: じゃりんこ | 2009.01.13 22:11

仕事ということもありますが、GPSとPCと携帯電話、必要なら衛星電話を持って、4WDで移動しているだけですから…。

「ミッドナイト・エクスプレス」を観たのは30年前ですから、いま観たらイメージが違うかも知れません。 トルコの当時の政権あるいは制度に対する批判は感じましたが、トルコあるいはトルコ人が悪者という印象は持たなかったと記憶していますが…。

また私は刑務所の所長を殺害するシーンと終わり方が安易なところ(オリバー・ストーンのアイディアなんでしょうね)が気に入りませんでした。 原作を読んだら、トルコとギリシャが戦争をしている真っ只中を突き抜けて脱出していました。

またこの映画を思い出したのは、私の頭の引き出しの整理の仕方のせいだろうと思います。 共に私立のいい大学に行っていた、つまり割と裕福な白人の、純粋な、ときにはちょっとナイーブな好青年で、異なる(厳しい)環境の中で何かを得た…、そんな実話の映画化、まあそんなところです。(だから余計に共感したかどうかは別にして…^^;)

最近観たInto the WildとThe NotebookとThe Mistなどの原作は今日着くはずです。 Into the Wildを観て、Jack Londonを読み直したくなりました。 映画の中でもペーパーバックの表紙が映ってましたね。

投稿: axbxcx | 2009.01.14 11:51

axbxcx さん、

ミッドナイトエクスプレス、刑務所内で様々なものの調達をする人や刑務所長や弁護士、などトルコ人はみんないやなヤツという感じに見えました。アメリカ人から見たトルコ人の印象なんだなぁと思いました。私の場合、トルコの印象がとてもいいので、違和感を覚えたのかもしれません。
ラストが確かにあまい感じでしたね。原作は違うんですね。そっちのほうがかっこいいと思うんですが、めんどくさかったんでしょうか(^^;)...

イントゥザワイルドを見てミッドナイトエクスプレスを思い出されたのはそういう理由だったんですね。なるほど。自分から望んでそういう環境に入ったか、望まずしてそういう環境に入ったかの違いはありますけどね。

ミストはおもしろかったという感想とつまらなかったという感想と両方聞きました。原作を買われたということは、axbxcx さんはおもしろいと思われたんですね。ノートブックは、以前、「タイタニックが好き」という話をしたら、ぜひこれを見るべきだ、と勧められて見ました。恋愛ものにあまり反応しなくなっているのは、心が貧しくなっているのかもしれません(^^;)...

投稿: じゃりんこ | 2009.01.14 17:01

おっしゃるとおり「アメリカ人の見たトルコ人の印象」なのは間違いないでしょう。 未開地の探検と同じですから…。 ただ異文化に初めて接した当事者の目で描けばそうならざるを得ないとも思います。

また監督のアラン・パーカーは「ミシシッピ・バーニング」とか「バーディー」を撮った人、また脚本のオリヴァー・ストーンはその後「サルバドル」や「プラトーン」「7月4日に生まれて」、カストロの「コマンダンテ」(未見です)を撮った人ですから、悪気はないはずで、逆に言えばそれが彼ら(メジャーで「社会派」と呼ばれるような映画人)の限界だったのかも知れません。

「ミスト」は典型的なB級映画です。 Stephen Kingはそれが好きなんですから、それでよいと言うか…。 私もストーリーはつまらないと思いますし、突っ込みたくなるとこだらけです。 でも脇役がいいんです。 「ショーシャンク」とか「グリーンマイル」で見た顔なんかが…。

The Notebookは「ラースと、その彼女」がよくて、同じ人が主演していたので借りて来ました。 それと例によって沢木耕太郎が書いていましたから…。 正直、ストーリーは「臭い」と思いましたけれど、主役のライアン・ゴスリングはやっぱりいいですね。 それと身につまされるんです。 背景は極めてリアルですから…。

これからInto the Wild読み始めます。

投稿: axbxcx | 2009.01.14 23:35

axbxcx さん、

確かに悪気はないのでしょうね。麻薬所持というだけで(という気分だったと思います)何年間も刑務所に入れられることになったわけですから、トルコ人がみんな悪者に見えても不思議じゃないとは思えます。

ライアン・ゴスリングってカナダの人なんですね。「ノートブック」での印象がほとんど残っていません(^^;)。「ラースとその彼女」は、どこかの劇場で予告編を見ましたが、この映画を見たら記憶に残ると思います。

投稿: じゃりんこ | 2009.01.15 20:32

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