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映画「ルート181」

副題は「パレスチナーイスラエル旅の断章」。ルート181という道がパレスチナ/イスラエルにあるわけではない。1947年、国連は当時イギリスの委任統治領であったパレスチナを分割して「ユダヤ国家」と「アラブ国家」を建設するというパレスチナ分割案を採択した。これが国連総会決議181号だ。そして翌1948年5月にイスラエルは独立を宣言する。しかし、イスラエルは分割案で提示されたものよりはるかに多くの土地を占領して国境を定め、さらにその後1967年の第三次中東戦争でガザとヨルダン川西岸地区も占領下に置いたたため、181号による分割線が実際の国境となることはなかった。この分割ラインを「ルート181」と名付けて、2002年の夏、ユダヤ人とパレスチナ人のふたりの監督が南から北へと旅をした。この映画はその記録である。

全編270分の長編だが、南部編・中部編・北部編の3編に分かれていて、そのたびに休憩を取ってくれたのでありがたかった(^^;)。延々と続く殺風景な分離壁。ふたりの監督が出会った人々が話す。特に何の解説もないので、なかなか事情がのみこめない。

「ルート181」は現在そのほとんどがイスラエル領になっているので、出会う人々はイスラエル在住の人たちだ。でもイスラエルに住んでいるのは「ユダヤ人」ばかりではない。

国連の分割案ではパレスチナの52パーセントをユダヤ国家が、残りをアラブ国家が所有することになっていた。しかし、当時、パレスチナでユダヤ人が所有していたのは7パーセントにすぎなかった。(それなのにどうしてそんな分割案になってそれが可決されてしまったのか、というのはアメリカの力によるところが大きい。)そしてイスラエルが建国されたときにはイスラエルはパレスチナの78パーセントを所有していた。当然、イスラエル国内にはアラブ系の人たちがたくさん住んでいる。そこでイスラエルはその人たちを追い出しにかかり、その結果多くの難民が生まれた。しかし、そんななかでもイスラエル領土内にとどまった人たちもいるのだ。さらに、イスラエルは国内のユダヤ人比率を上げるために移民を奨励する。ヨーロッパからだけではなくアフリカなどからもたくさんのユダヤ人を受け入れた。だから映画のなかで出会う人たちもイスラエル礼讃をする人ばかりではない...

映画の後、岡真理さんの講演があり、こういう事情などが詳しく話されて、映画の背景が少しわかった。何の予備知識も解説もなく見るのはちょっとしんどい映画だ。事情がわかると、映画が今のイスラエルの様子をよく映し出しているんだなぁということがわかる。最後のほうのおばあさんの言葉が印象的だ。「イスラエルには何でもあるようだけれど、生きる喜びがない。」この人はチュニジアから移住してきて、もう長くイスラエルに住んでいる。チュニジアではアラブ人もユダヤ人も仲良く暮らしていたのにここでは争いばかり。息子はイスラエルの兵士となって亡くなってしまった...。この人の旦那さんはモロッコの人で「モロッコに帰りたい」と話す。もうモロッコの言葉も満足に話せないのに。

世界各地に散らばったとされるユダヤの民は約束の地に戻ってきて...幸せを実感できないのなら、それは隣人の幸せを犠牲にしているからだろう。ユダヤ人だけの国を作るよりも、ユダヤ人もアラブ人もみんなが仲良く暮らせる国を作るほうが、誰にとってもーつまりユダヤ人にとってもいいことに思える。

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経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

町田まで行ったのですね!
私は放送大学の課題が終わらず、苦しんでました。。。笑

以前、朝鮮半島問題について取材をしていた時に思った事なんですが、どちらの国の住民も理想は「みんなが仲良く暮らせる国」なんですよね。。。だけど「その理想を実現出来ないのは僕たちのせいじゃないんだ!」→「あいつらのせいだ!」→「あんな奴らとは暮らせない!」になってしまう。。。

相手を悪く言う事で、自分たちの正義に説得力を持たせようとするので、まとまる話しもまとまらなくなってしまう。。。個人レベルでは、みんな平和を求めていることは変わりがないんですけど、、、どうすればいいんでしょうかね。。。。。。。また、落ち込んできました。笑

投稿: tabe | 2008.12.02 22:05

tabe さん、

うん、この映画はずっと見たいと思ってたし、岡真理さんは憧れの人なんで(*^^*)。岡さん、感じのいい人でした。文章がとてもわかりやすくて頭の良さを感じさせる人なんですが、人あたりがやわらかくて...でもって説明がわかりやすく明快で。

イスラエルは「みんなが仲良く暮らせる国」をめざしてはいないという気がします。明らかにアラブ系の人たちを差別しているので。ユダヤ人が優位である国でなければならないと考えていると思います。でも、そういうイスラエルの方針がしっくりきていない住人も少なからずいるんだなぁ、と感じました。でも、平和がほしいのは誰もがそうでしょうね。そのためには「ユダヤ人が優位の国」ではなく、どんな人も平等に扱われるべき国を作るべきなのでは...と思います。

放送大学、3科目登録していたんですが、また1科目捨ててしまいました(^^;)。職場のほうで研修課題があって今週中に提出しなければならず、そっちにちょっと時間をとられてしまったので...。今ようやく終わりました。

ガザ封鎖の解除を求める署名が昨日から始まって、そのブログパーツをはったのでそれについての記事を書くつもりだったけど、明日(ってもう今日か(^^;))以降にします。

投稿: じゃりんこ | 2008.12.03 00:54

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