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映画「リダクテッド」

2006年、イラクで実際に起きた、米軍兵士による14歳の少女に対するレイプとその家族殺害事件をもとに作られたフィクション。米軍兵士によって撮影されたビデオが中心、という設定で、ドキュメンタリー風に撮られている。兵士たちの語り口調が自然な感じで、最初に「これは事実に基づいたフィクションである」というテロップが流れるのだけど、それがなければドキュメンタリーなのかと思ってしまいそうだ。

初めのほう、兵士たちが検問所の任務についているあたりの描写を見ていてどうも眠くなり、「なんか勢い込んで作っているけど空回りかな」と感じていたのだが、後でパンフレットを読んで、それも監督の狙いだったのだとわかった。兵士たちの退屈な日常...。自分のしていることは役にたっているのか...。そしてこの任務はいつ終わるのかもわからない...。兵士たちの退屈で鬱屈した気分を観客も感じることになるわけだ。

しばらく前、DVDで、この映画の監督であるブライアン・デ・パルマが1989年に撮った「カジュアリティーズ」を見た。これは、ベトナム戦争での兵士による少女に対する暴行事件を描いていて、やはり現実にあったこと(1969年)をもとにしている。40年近くたっても、同じ過ちが繰り返されているのだ。

「カジュアリティーズ」では、マイケル・J・フォックスとかショーン・ペンとか、大物が出演しているので「映画」であることを見間違えようがないけど、「リダクテッド」には大物俳優は出てこないし、「素人が撮影しました」風の画面が現実感を感じさせる。「映画学校に入りたい」という願いを持つ兵士が、イラクに駐屯している兵士たちの生活を撮影している、という設定で、不自然さを感じる場面がないわけではない(たとえば人を殺してしまった兵士に対してあんな質問はしないだろう、とか)けど、イラクの米軍駐屯地の雰囲気はある程度わかる。そして戦争という状況において、人間らしい判断ができなくなっていく人が生まれてくる過程も...

「リダクテッド」のもとになった事件について、アメリカではあまり報道されていないらしい。ベトナム戦争の時と比べて、情報が当局の監視下に置かれ、残虐な映像やアメリカ人が聞きたくないような事柄は報道されない。人々のもとに届けられるのはリダクト(編集)された映像ばかり。アメリカの人たちは、イラクで何が起こっているのかを知らなければならない、と、監督はこの映画を作ったのだろう。監督の思いがアメリカの人たちに届くといいのだけど。

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映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

じゃりんこさん、お久しぶりです。 昨晩、無事帰国しました。

アディスアベバからドバイに向かう機中でGulf Timesとか言う新聞を読んでいたのですが、第一次世界大戦中に戦闘を拒否して上官の命令で銃殺された兵士たちのことが記事になっていました。 英国が620人、フランスが700人、ドイツが50人という数字だったと思います。 その記念碑がベルギーの村にあるそうです。

日系の元陸軍参謀総長Eric Shinseki氏が退役軍人長官になるそうですね。

投稿: axbxcx | 2008.12.07 18:01

axbxcx さん、

お帰りなさい(^^)。
今回は特に体調を崩したりケガをすることもなく、順調にお仕事がすすめられたのでしょうか。

いったん兵役について戦闘を拒否するというのは大変なことでしょうね。上官の命令に逆らうのはそれなりの覚悟が必要でしょう。でもそうして亡くなっていった人たちがそんなにいるんですね。「カジュアリティーズ」では、自分は少女に対し暴行をしたくないのに上官の指示に逆らえない兵士が登場しています。

Eric Shinsekiってどういう人なのか私は全然知りませんが、オバマさんの人事で本当にチェンジができるのか、という声を聞いたことはあります。でも、日系の人が退役軍人省の長官になるのは初めてだそうですから何か変えることができるでしょうかね...

投稿: じゃりんこ | 2008.12.07 20:34

じゃりんこさん、いろいろ苦労はあったのですが、おかげさまで無事に終えることができました。 エチオピアの人は一般に「論理的思考」がお好きなようで、質問やコメントは厳しいのですが、きちんと説明すると受けがよいような気がします。 いずれにせよメンバーに救われました。

オバマ人事は中道(=共和党との対立を避ける)、民主党左派は冷飯と言うのが田中宇の評価ですね。 とは言え、やはり彼が大統領になるというのはスゴイことだろうと思います。 当選のニュースはエチオピアの片田舎マケデラ・ワレダで聞きましたが、もう大変な騒ぎでした。 恐らくアフリカ中が沸いたと思います。

投稿: axbxcx | 2008.12.08 11:09

axbxcx さん、

>いずれにせよメンバーに救われました。

それはよかったですね(^^)。
どんな人とチームを組むかで、仕事の楽しさ、やりやすさはずいぶん違いますものね。

オバマ大統領の誕生は、うちのクラスの黒人の保母さん(19歳)が「歴史的だわ」と喜んでいました。黒人の人たちはみんなオバマ支持という感じですが、白人の人たちは選挙についてもあまり話題にしたがらない感じでした。で、訊いてみると「マケイン支持」とか、テレビに映ったオバマさんを見て「大っきらい」という人もいました。ふだんそれほど黒人・白人ということを意識しないのですが、今回はわりとそんな感じでした。でも、黒人以外の人の支持も集めたからこそオバマさんは当選したわけですよね。パレスチナ問題に関する発言にはちょっとびっくりしましたが...でも、「人の話を聞こう」という姿勢でのぞまれているようですから、そういう気持ちでがんばってほしいと思います。

投稿: じゃりんこ | 2008.12.08 20:14

じゃりんこさん、私はオバマ氏のお母さんにとても興味があります。 インドネシアの村の鍛冶屋の研究で人類学の博士号を取った人です。

メンバーと言うのはエチオピアの役所の人にアシスタント3人です。 参加型ワークショップを春はワレダ(県と郡の中間)で2日×8ヶ所、村で1日×8ヶ所、今回ワレダで2日×8ヶ所やりましたが、最初は役所の人が主役だったのがそのうち監督になり、最後はアシスタントの一人が監督で彼はプロデューサーという感じでした。 おかげで私は様子を見ながら、要所で質問に答えたり説明したりするだけで十分でした。

私の親友(ユダヤ系)もオバマ支持でした。 奥さんはヒラリー支持でしたが…。

マケインのしゃべり方・対応の仕方はあまりに旧時代人でした。 ペイリンには本当に呆れました。

投稿: axbxcx | 2008.12.08 21:21

axbxcx さん、

人類学をやった人っていうのはおもしろそうですね(^^)。

メンバーっていうのは写真で見たサポーティングスタッフの3人の方かと思っていたら、そうではないんですね。写真の方たちも感じのよさそうな方たちですね(^^)。

私のまわりのアメリカ人は結構オバマ支持じゃない人が
多いな、という印象でした。でも熱烈にオバマを支持している人もいるので、反オバマをあまり声高には言わないという感じで...今、職場が全員女性になってしまったせいもあるのかもしれませんが、政治的な話題はあまり出ません。

投稿: じゃりんこ | 2008.12.08 21:54

じゃりんこさん、メンバーですが、一人を除いてブログのいまのプロフィールの写真に写っています。

向かって左の白い布を被っているのが州政府の人でインドへの留学経験を持ちます。 私の右の黒い皮ジャンを着ているのが監督、昔農業省やドイツのNGOで働いていました。 その隣りの二人は春のドサ回りのドライバーで、右端が一番若いテクニカル・アシスタントです。 彼は小学校の先生を3年くらいやった後、いまはジャーナリズム専攻の学生です。 参加型開発に目覚めて、そういうことを勉強したいと言っています。 写真を撮ったのはロハ・ホテルという世界遺産の町ラリベラの政府系高級ホテルです。 といっても打ち上げで食べたセット料理は飲み物スープ付きで40ブル(400円)、それが町で一番高い料理でした。

米国の場合、民主党が強い、共和党が強いと言っても得票率で6割程度ですから、ある意味、健全とは言えます。 ところが例えばケニアの場合、選挙区によってキバキ大統領支持が99%、オディンガ首相支持が99%と分かれてしまったりします。 国を合計すると微妙な差になるのですが、微妙な差の選挙区というものは多分存在しないか、存在したとしても大都市の一部なのです。 それでは衝突が起こって当然と言うか…。

投稿: axbxcx | 2008.12.09 01:26

axbxcx さん、

プロフィールの写真はちょっと小さくて(笑)。

確かにアメリカでは一応ものを言う自由が保障されているし、選挙の結果を受け入れて政権交代があるし、やっぱり民主主義の国ではありますよね。
ケニアではそういうふうに票が分かれるといっても、そういう選挙区がモザイク状になっているんですか。それともふたつの国に分けられそうな感じなんでしょうか。
ひとつの国のなかに違う意見の人がいて、それでも国としてやっていけるというのは理想だとは思います。オバマさんが「違う意見の人の話を聞く」と言っているのはいいなと思います(^^)。でも、対立する意見を昇華するのは言葉でいうほど簡単ではないでしょうけれど...

投稿: じゃりんこ | 2008.12.09 07:11

じゃりんこさん、何十もの民族がそれぞれ分かれて住んでいる状態というのはケニアに限らずアフリカの多くの国で普通だと思います。 それどころかアジアでも周縁部の人たちには国家意識がなくても不思議ありませんし、標準語がしゃべれる方が少ないかも知れません。 国境線が後から引かれただけと言うか…。

ケニアの場合は、県の名前そのものが元々民族(=言語)の名前ということも多いようです。 ただ最大民族のキクユ(ムバキ大統領。ナイロビ周辺)や二番目のルオ(オディンガ首相、オバマ次期大統領。ビクトリア湖周辺)になると多くのの県にまたがっています。 またオディンガ首相はナイロビ市内のルオの住んでいる地域の選出です。

今回の大統領選の混乱でも数百人の方が亡くなりましたが、基本的にはルオとキクユ、ツゲン(モイ元大統領。リフトバレー)とキクユの衝突だったろうと思います。 ただ1994年の総選挙の時のような大衝突にはならずに済みました。

またエチオピアの場合、例えばアムハラ州には主にアムハラ語を話すアムハラ人、オロモ州にはオロモ語を話すオロモ人が住みます。 アムハラ語はアラブの流れを汲んでいて、見た目もお隣りのケニヤやスーダンの人たちとは違います。

アムハラ州からアディスアベバの大学に行って、初めてオロモの人を見てビックリしたという話も聞きました。 オロモ人は国全体の人口の4割を占める最大民族なのですが、アムハラ州に住んでいる限り、ほとんど出会うことがないということでしょう。

逆にオロモ人とケニアの北部の人たちは共通ですし、またスーダンにはルオとほとんど同じ言語をしゃべる人たち(ルオは元々スーダンからナイル川に沿って南下した人たちです)がいるそうです。

投稿: axbxcx | 2008.12.09 20:27

axbxcx さん、

詳しい解説をありがとうございましたm(_ _)m。
そうか、国境線は人為的なものなんですよね...
そんなにたくさんの民族が、人為的に決められた「国」の中でうまく暮らしていくのは簡単ではなさそうですね...

それでもオバマ大統領の当選には、おそらくアフリカ中が沸いたのですね(^^)。

投稿: じゃりんこ | 2008.12.09 21:06

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