« ハマスとイスラエル | トップページ | right »

米がイスラエルのガザ侵攻を支持する論理

今朝、P-navi info を読んでいたらイスラエルで反戦運動をした人たちが逮捕されている、というコメントがあり、記事をさがしたら「デモクラシー・ナウ!」(北米500局以上で放送されている非営利の独立系ニュース番組)というサイトで以下の人たちがイスラエルのガザ侵攻について討論している記事 を見つけた。アメリカがイスラエルの侵攻を支持する論理、そしてその欺瞞性がよくわかる記事だと思ったので、翻訳してみた。かなりの量があるため、逐語訳ではなく、少し端折っているけれど(それでも長い(^^;))、大筋に間違いはないと思います。(もし間違いに気づいたら教えて下さい)なお、文字の色を変えているのは私であって原文では同じです。また、記事は1月12日のものなので、死者の数はここで言われているよりさらに増えています。

**************************************
討論者:
エイミィ・グッドマン(以下):デモクラシー・ナウ!の司会者
ラニー・デイビス(以下):元クリントン大統領の特別顧問弁護士。イスラエルプロジェクトのスポークスマン。
ニーベ・ゴードン(以下):イスラエルのベングリオン大学政治学部長
**************************************

:ラニー・デイビスさん、あなたは今回のイスラエル侵攻を支持しておられますが、どうしてですか。

:自衛権です。テロリズムが無実の市民を意図的に殺害しようとしたら、それを防ぐために攻撃を仕返さない文明国なんてないでしょう。あるグループが無実の市民を意図的に政治的な目的で殺すために攻撃し、また自らの市民をも政治的な目的のために死の危険にさらす、そういうのをテロリズムと呼んでいるのです。こんなことが起きたら自衛するのは当然の権利です、アメリカだってそうするでしょう。もしロチェスターがモントリオールから攻撃されるようなことがあったらアメリカはじっとしていませんよ。自衛権というのはテロに対する第一の基本的な権利なんです。

:均衡の問題についてはどうですか、つまり死者の数の違いです。900人近いパレスチナ人が殺されています。200人以上が子どもだし、亡くなっているのは圧倒的に市民です。それに対し、イスラエルの死者は13人。10人が兵士で、そのうち4人は二次的な火事の被害者です。

:確かにたくさんの無実の方がガザで亡くなっておられます。人間として、アメリカ人として、子どものころからパレスチナ国家を支持し、そうではないイスラエル政府に対して批判的であったユダヤ人として、深い悲しみを覚えます。しかし、「不均衡」という言い方は解せません。
まず第一に、もしあなたの子どもがテロリストに意図的に殺されたとしたら、自国の政府に対応を迫るでしょう。それに対して、ロケット攻撃をしている人たちは、その発射台を学校とか病院の近くに置くわけですよ。それこそがハマスのしていることなんです。悲劇的な死は、市民を死の危険にさらそうとするハマスの計算された作戦であり、ハマスに責任があるんです。もちろん、だからといって無実の市民の死を悼む気持ちには変わりはありませんが、イスラエルでは一人の子ども、パレスチナでは100人の子ども、というような問題じゃないんです。どの死も等しく悲劇なんです。数の問題ではありません。

:ニーベ・ゴードン教授はハマスのロケット攻撃にさらされているベングリオン大学の爆弾シェルターで一日の大部分を過ごしておられるわけですが、この侵攻をやめるべきだとおっしゃっていますよね。なぜですか。

:そもそも侵攻など始めるべきではなかったんです。ここではつい一時間前にロケットが着弾したばかりですが....ラニー氏のおっしゃることのいくつかには同意できます。まずは自衛権ということです。自衛権が基本的な権利であるということには賛成です。自衛権というのは暴力から自分を守る権利です。そして私たちが理解しなくてはならないのは占領そのものが暴力である、ということなんです。150万人もの人を、基本的な食糧も移動の自由もなしに監獄に閉じ込めておく、というのは暴力です。電気もない、清潔な水もない状態で。だから人々は抵抗しているんです。彼らの抵抗の仕方には反対ですが、彼らの暴力は私たちの暴力に対して行われているという点を見逃してはなりません。

ガザからイスラエルへのロケット攻撃が始まって8年間の間にイスラエルでは10人から20人の人がそのために亡くなりました。その間、交通事故で亡くなったイスラエル人は4000人です。でもだからといってイスラエルの路上でテロに対する暴動は起きていませんよね。しかしこの20人が亡くなっているということで、私たちはガザに侵入し、監獄にいる人たちに空から爆弾を落とし、275人の子どもを殺すことが許されているというわけです。ラニー氏は数の問題ではないとおっしゃいますが、数は問題です。不均衡というのは国際法上の用語であり、ラニー氏がそれに同意されないのだとすれば、それは国際法を無視しているということになります。

イスラエルは、国際法や国際条約、国際的な決定などを1967年、あるいはそれより以前からずっと無視してきました。そのひとつが「イスラエルはこの領土を返さなければならない」ということです。この地を暴力的な方法で支配下におくことによってイスラエルはガザ地域のほとんどすべてのドアが閉じられているような状況を作り出してしまった、と、ハマスの創設者であるアハメド・ヤシン氏が言っています。イスラエルはガザのすべてのドアを閉じてしまった、モスクのドアを除いて。教育のドア。経済のドア。医療のドア。それらをみんな閉じてしまって、そしてびっくり、私たちはハマスに対峙することになった、というわけです。

ですから、こうした暴力的なやり方を変えなくてはならないと思うのです。政治的な問題や外交上の問題は交渉や話し合いによって解決すべきです。イスラエルが席についてハマスと交渉を始めるべき時です。ハマスはパレスチナの人たちによって選ばれた政府です。彼らのことを好きになる必要はありません。私だって好きではありません。でも彼らが選ばれた政府なのですから、私たちは彼らと話し合うべきであって爆弾を落とすべきではありません。

:ラニー・デイビスさん、いかがですか?

:まず第一にゴードン教授に感謝します。私たちはおそらく同じ心情を持っていると思いますし、ふたつの国家建設という同じ目的を持っていると思います。ゴードン教授はご家族とともに爆撃の危険にさらされているのに、私はこうしてワシントンでのうのうとしているわけで、批判的なことを申し上げるつもりはないのですが、事実に即して見た場合、教授はいくつか誤解なさっている部分があると言わざるをえません。

まずは国際法の問題です。市街地からロケット弾を発射するのは国際法違反です。これはジュネーブ条約53条に規定されていますが、教授はこのことについては触れられませんでした。意図的に市民を狙わないのであれば、自衛することは国際法違反ではありません。ハマスは意図的に市民を狙っています。教授は自衛することと意図的に市民を殺すことの違いについては述べられませんでした。

そして最も重要なことは、教授がおっしゃったように私も交渉をしたいと思っているのです。先ほども述べましたように、私は子どものころからパレスチナ国家の独立を支持してきましたし、今もそうです。しかし、ハマスの公式見解はイスラエルの破壊なんです。テロリストを送り出しているグループと交渉の席に着く文明国なんて世界にありません。「おまえたちを認めない、おまえたちをつぶしてやる、おまえたちの子どもをテロの歯牙にかけてやる」と言っている相手と話し合いをするなんて不可能です。ファタハとは交渉の席につきました。アブー氏(原文のまま)と交渉を始めたのですが、ハマスの軍事クーデターによって追放されてしまいました。

ですから、教授と私が討論していることについて、少なくとも現状認識を一致させなければならないと思うのですが、とりわけ、ハマスの意図がテロリズムであり、無実の市民を殺すことであるということ、彼らのめざすものはイスラエルの承認ではなく破壊であり、パレスチナとイスラエル、ふたつの国家の共存など望んでいない、ということについては教授も否定されないのでは、と思います。

:ゴードン教授、いかがですか?

:問題はーそうですね、「意図」は大切です。しかし、「事実」はもっと大切です。そして事実は、イスラエルがハマスより多くの市民を傷つけている、ということなんです。この2週間で275人の子どもを殺したのはイスラエルであってハマスではありません、意図はしていなかったかもしれませんが。学校のことをおっしゃいましたよね。学校からロケット弾が発射されている、というビデオをばらまいているのはイスラエルです。そしてこれは2年前に撮影されたものなのに、あたかも2日前に撮られたものであるかのように宣伝している。確かにハマスは市街地から戦闘をしかけています。しかし、イスラエルはそれに対し、市街地に爆弾を落とすか落とさないかの選択をすることはできるわけです。そして、市民の上に爆弾を落とすことを意図的に決定している。ですから、「意図的」ということを問題にするのであれば、イスラエルはテロリスト国家ということになります

そして、私はというと、親イスラエル派です。私はイスラエルが中東地域において、最初の60年間だけでなく、今後も存在していてほしいと思っています。そしてイスラエルが中東で存在し続けることのできる唯一の方法はこの地域に対するアプローチの仕方を変えることです。私たちは敵と対話をしなければなりません。たとえイスラエルの存在を認めないような相手であっても。ファタハのことをおっしゃいましたが、PLOだって長年イスラエルを認めていませんでした。しかし最終的には私たちは彼らと話し合いをして、今では彼らは私たちのパレスチナ人のパートナーです。ハマスにも現実的に考えられる人がいれば、そして私たちが彼らと交渉を始めれば、何年か後には彼らもイスラエルの存在を認めて共存できるようになるのではないかと思うのです。もし彼らと話し合いを持たず、暴力の応酬を続けるのであれば、やがてイスラエルは滅ぼされるでしょう。現在私たちが彼らよりも技術的に上回っているということは最終的には意味のないこととなるでしょうから。私は100年後もイスラエルが存在していてほしい。そのためにはシリアやレバノンやパレスチナの人たちと平和的な関係を築いていかなくてはならないんです。

*************************

ここでいったん休憩となる。ハマスが意図的に市民を殺害している?ハマスにとって市民を殺すことが目的なんかじゃない。2005年にイスラエルがガザにプレスセンターを設けてガザから「撤退」する様子を大々的に報道させた後も、国境はイスラエルに管理されてガザの人たちの暮らしは悪化する一方だった。ガザは巨大な監獄となったのだ。討論の後半部分では、こうした封鎖の実態や、イスラエルが報道機関をガザに入れていないこと、この攻撃に反対したイスラエル人が逮捕されていることなど興味深いことが述べられています。かなり長くなったので、後半部分の翻訳はパスします(--;)が、これ だと、英語の知らない単語にカーソルを合わせると日本語が出てくるので読みやすいかと思います。(グーグルツールバーで辞書を有効にしている場合だとややこしいことになるかも)

イスラエルは一方的に停戦を宣言したけれど、ガザの封鎖を解除しようとはしていない。ガザの人たちは最低限命の保証はされたからよかった、と胸をなでおろしてはいられない。何百人の人が命を失って初めてニュースになるガザ。封鎖解除を求める署名も、この攻撃が始まる前までは毎日ほんの少しずつしか増えなかった。攻撃が始まってからさすがに署名も増えたけれど、イスラエルが攻撃をやめたことで忘れられてしまっては何もならない。封鎖が解除されない限り、ガザの人たちが人間らしい暮らしを取り戻すことはできないのだ。

|

« ハマスとイスラエル | トップページ | right »

ニュース」カテゴリの記事

コメント

BBCのレポーターは現地に入ったようですね。

http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/7834419.stm

投稿: カルロス | 2009.01.18 22:41

カルロスさん、

ガザにジャーナリストが入ることをイスラエルは禁止してきましたが、現地NGOの人たちでガザに残ることを選んだ人もいます。現地の人たちが苦しんでいるのに自分だけここを出ることはできない、と。そういう人たちと連絡をとることで現地の声を伝えてきた日本のNGOもあります。
今回、BBCの記者はエジプト側から入ったとのことですが、停戦を予定していたからイスラエルは許可したのでしょうかね。
休みなく攻撃が起こっているときにイスラエルがジャーナリストたちをガザに入れなかった理由は想像がつきますよね...

投稿: じゃりんこ | 2009.01.18 22:54

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/17663/43782454

この記事へのトラックバック一覧です: 米がイスラエルのガザ侵攻を支持する論理:

« ハマスとイスラエル | トップページ | right »