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ビデオ「アマロ神父の罪」 El crimen del Padre Amaro

神父は女性と個人的な愛情関係を持つことが許されないのに人を愛してしまったことに苦悩する、ということなのかと思ったら、本当に罪な神父の話だった。でも、確かに神父であるがゆえの悩みだった、という面はあるのかもしれない。

メキシコの小さな村に赴任してきた若き神父アマロ(ガエル・ガルシア・ベルナル)。神父として人々の役にたちたいという希望に燃えた彼は、ベニト神父のもとで修業することになるが、ベニト神父が愛人を持っていること、麻薬組織とつながりがあること、などに気付いていく。やがて彼自身も教会の熱心な信者である少女と恋におちて...

登場人物ひとりひとりに存在感があっておもしろかった。DVDでは、カルロス・カレラ監督とガエル・ガルシア・ベルナルが映画を見ながらその場面の思い出などを話していて、これがまた興味深いものだった。カトリックの神父は妻帯することを許されていないのだが、かつては許されていた。ところが、教会の財産を子どもが継承する、ということになると、子どもにその気がない場合、めんどうなことになる。そのため、神父の妻帯が禁止されたのだ、とガエルが話せば、監督は「いや、神父は神にのみ仕えるべきだ、と考える人もいるよ。純潔を大事だと考える人もいる」と返し、でも、実際は経済的な理由のほうが精神的な理由よりも重要だったのだ、という話になったり、メキシコでは神父が愛人を持つのは公然の秘密だ、などという事情が語られたり、それについてどう思うか、などが話されたり。さらに麻薬組織の金でも病院建設などの良い目的に使えばいいのか、という問題や、教会の圧力ゆえ真実を書けない新聞の話や...。また、「へぇ、このカットはそういう思いで撮っていたのか」とかなどもわかっておもしろい。

結局(以下完全ネタバレ)

アメリアの死、という最悪の結末を迎えるわけだけど、そうならずに中絶が成功したとしても、アマロ神父の罪は軽いものとはいえないだろう。「神父という職業に就いていたら人を救うことができる。だから神父の道をあきらめたくない」と言ったって、目の前にいるひとりを絶望のどん底に突き落としているのだから、神父としては失格だ。

この映画の原作が書かれたのは19世紀だが、映画はそれを下敷きにして現代のメキシコを描いている。19世紀ならいざ知らず、避妊についての知識が人々の間にかなり広まっている現代において、妊娠の可能性をまったく考えていなかった、という筋書きにはちょっと無理を感じるけれど、単純に良いとか悪いとか割り切れない人間という存在の複雑さ(たとえば、アマロ神父は最低のヤツ(と、ガエルが言っている)だけど、根は善人だ)や、その人間が作り出す社会の複雑さを描いていて、いろいろ考えてしまう。
教会から破門されても自分の信じる道を歩もうとするナタリオ神父はかっこいいし、あこがれるけど、私自身、そんなに純粋に生きているわけじゃないものなぁ...。

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コメント

ガエル君は「モーターサイクル」だけじゃないのですっっっ。「アマロ神父」も良い作品ですよね。ただ、彼独特のニヤニヤ笑いを見せてくれないので、その点は不満です。。。

私の勝手な憶測ですが、ガエル君は社会や人間の矛盾、複雑さをテーマに出演作を選んでそうなんですよねえ。どの作品も、善と悪、男と女、現実と妄想、天使と悪魔、それらの狭間のお話しなんす。しかも、インタビューとか聞いてると、ちゃんとその問題について考えてんです。そういうところが、惚れポイントです。ぽっ。
  

投稿: tabe | 2009.02.28 01:39

tabe さん、

うんうん。DVD の解説を聞いてたら、賢い人なんだなぁと思って私も惚れてしまいました(^^)。自分の考えをしっかり持ちながら、でも押しつけがましくないところもいいですね。

「モーターサイクルダイアリーズ」でガエル・ガルシア・ベルナルに注目したけど、その次に見た彼の作品が「バッド・エデュケーション」で、「何、これ?」と思ってしまって(まぁ、私に理解できなかった、というだけのことです(^^;))...「天国の口」を見たのはそれよりもっと前で、これも私にはよくわからない作品だったという印象しかないけど、今見たらもうちょっと何かわかるかなぁ。また他の作品も見てみたいと思います。

投稿: じゃりんこ | 2009.02.28 09:41

ガエル君の両親は左翼思想の持ち主で、小さい頃から家にマルクス主義者とか民族解放運動をしてる人が出入りしていたのだとか。

「天国」は私も理解できません。。。「バッド」は、スタイリッシュな演出がテーマの良さを殺してる気がしなくはない。。。笑
最近の作品だと「キング 罪の王」は、「アマロ神父」と似た感じです。孤独な退役軍人ガエル君が、家庭の愛を求めてえげつないことする話です。
あと2001年の作品で、奇をてらった感はありますが「ブエノスアイレスの夜」も良かったです。

どうやら、ガエル君初監督作品が、日本でも上映されるらしいですっ。ふふ。

投稿: tabe | 2009.02.28 14:05

tabe さん、

私もウィキペディアで、ガエル君の両親の話とか「1994年にサパティスタ民族解放軍のデモに参加」っていうのも読んで、ガエル君ってそういう人だったのか、と思いました。ゲバラが好きっていうだけじゃなく、なんらかの行動にも移しているのはステキですね(^^)。

「ブエノスアイレスの夜」は見ました。ペルー行きの前にスペイン語に耳を慣らそうと思っていくつかスペイン語のDVDを見たなかのひとつでした。ガエル君って、ほんと、役の幅が広いよねぇ。レオナルド・ディカプリオがちょっとはすっぱな役をやると、なんか無理してるな、っていう感じがするんだけど、ガエル君は何をやってもそれなりにはまってしまうというか...っていうほどたくさんは見てないけど、神父だとか医学生だとか男娼とか...。でも、この3つに関して言えば、どれも青臭いというか未熟な感じは共通してるか。アモーレスぺロスや天国の口にしても、若いっていう感じはあったよね。退役軍人...となると、また違ったガエル君が見られるんでしょうか。でも、あんまり見たい感じのする話じゃないなぁ...(^^;)。初監督作品は楽しみだね(^^)。

投稿: じゃりんこ | 2009.02.28 20:10

近年は神父牧師シスターなども、婚姻してる人も、
いますけど、自由な恋愛をしてもいいのではないかと叫ばれてる今、この映画は神髄なんだろうと思います。
やはり、人を愛している人間が多くの人に愛をかけられると思いますね。

投稿: 雲 | 2012.07.13 23:58

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