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ビデオ「A Walk to Beautiful」

舞台はエチオピア。産科フィスチュラ(ろうこう)に苦しむ女性たちの姿を描いたドキュメンタリー。

産科フィスチュラというのは、産道と膀胱の間などに穴があいてそこから糞尿が漏れる、という状態。出産に際して骨盤が狭くて難産になった結果として起こる。先進国では、そのような状態が予想されれば帝王切開をしたり、などの対応が取られるけれど、病院での出産が一般的でない地域だと、出産が長引いて赤ちゃんも死産となり、「母親」はフィスチュラとなって...

私がフィスチュラのことを初めて聞いたのは、FGMの学習会でのことだった。FGMのことは何度か書いたことがあるけれど、女性性器切除と訳される行為で、今もアフリカなどで行われている(詳しくはこちら)。FGMを行なうことで起こる弊害のひとつとして、ろうこうがとりあげられていて、「膣と膀胱、膣と直腸の間に穴が開いてつながってしまう疾病」などと説明されていた。でも、そう聞いても、想像力の乏しい私には具体的にどんなものかはイメージできていなかった。それがどんなものなのかを実感させてくれるのは映像の力だなぁと思う。

穴があいているわけだから、自分の意思で糞尿(どちらか一方の場合もある)をコントロールすることができない。つまり意思とは関係なく、尿が勝手に流れてきたりするわけだから日常生活に不便があるのはもちろんで、肉体的につらい病気だ。しかし、ことはそれだけではない。そんな状態だから、生産的な作業にあまり関わることができない厄介者となるし、いつも異臭が漂うし、家族や地域社会の人たちから疎まれる。多くの場合、死産を経験しているわけで、それだけでもつらいのに、離婚となることもある(離婚したほうがよいと思われる場合もあるけれど)。外出もままならず(バスに乗るのは大変だ)、友達と過ごすこともできず、自分用の小さな小屋でひとりぼっちで過ごす日々...

そしてそんな日々を過ごしているのは10代の若い少女(年齢には幅があるが、早婚のため、10代初めに出産をしたりしている)だったりする。自分を無価値な存在と感じ、希望を持つこともできず、死を考えることもある...我が家の娘たちと同世代の少女たちがこんな思いをしているのだと思うと胸が痛くなる。

でも、フィスチュラは多くの場合、手術で治療可能なのだ。基本的に穴を縫えばいい。首都アジスアベバで、フィスチュラに悩む女性に無料で治療を行っている病院がある。その話を聞いた少女は一大決心をして出かけていく。幹線道路まで6時間、土の上を歩く彼女は裸足だ。そこからさらにバスに乗って17時間...ようやく着いた病院で、彼女は、この病気に悩んでいるのは自分だけではないこと、たくさんの仲間がいて、たくさんの人が治療に成功し、人生を取り戻していることを知る。

3度の手術をしても完治しない少女がいた。自暴自棄になる彼女に、スタッフは、バルブを使って穴を人工的に開け閉めすることを提案。これが功を奏して、彼女は尿をコントロールすることができるようになった。村に帰っても身寄りのない少女はここで働きたい、という意思を伝え、やがて孤児院で働くようになる。居場所を見つけた彼女が嬉々として働く姿を見て私もうれしくなった。なんといっても同業者だ(^^)。必要とされている、という充実感が人を生き生きさせる。

フィスチュラジャパンの解説 によれば、婚姻年齢を引き上げることが最大の予防になると考えられているという。映画では、誘拐されて結婚させられた、などの例も話されていた。10代初め、あるいはそれより早い結婚は、どう考えても本人の意思ではないだろう。本人が自分で望んだ結婚ができるようになっていくことを願う。そして、不幸にもフィスチュラになってしまった女性たちが、ひとりでも多く手術を受けて人生をやり直すことができるように、少しでも助けになることをしたいと思う。

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コメント

じゃりんこさん、エチオピアにはこれまで3回、計6ヶ月も滞在しながら、フィスチューラというものがあることすら知りませんでした。 バングラデシュ、ナイジェリア、ニジェールなどほかの国にもたくさん患者がいて、200万人あるいは300万人いるかも知れないというのですから驚きです。

エチオピアでは公的には18歳未満で結婚できなくなったとか言われるのですが、村で聞き取りをしている限りそんなものではありません。 13歳で結婚して14歳で離婚したという少女にも話を聞きましたし、まだ10歳以下で結婚することもあると言います。 それでは難産にもなるでしょう…。

ドキュメンタリーですが、結婚させられても何度も逃げ出した、お母さんが生きていれば結婚させられることもなかったろう、家には絶対に帰りたくないと言っていた少女が、孤児院で働けるようになったというところで、何だか救われました。

投稿: axbxcx | 2009.03.18 00:39

axbxcx さん、

やはりこういうことは隠せるものなら隠そうとするわけで、なかなか表に出てこないのでしょうね。フィスチュラホスピタルに行った少女自身が「こんなに仲間がいるんだ」って驚いていましたね。

10歳以下で結婚する話、映画にも出てきていましたが、まだ初潮も迎えていない状態で結婚することが、出産に際して困難を引き起こす原因のひとつになることは考えられますね。

私も、あの孤児院で居場所を見つけた女の子を見ていて、よかったなぁ、と思いました。手術で治すことができるのだから、苦しんでいる人たちがみんな手術を受けることができるようになるといいなぁと思います。

投稿: じゃりんこ | 2009.03.18 17:13

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