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ビデオ「星の流れる果て」Not without my daughter

ひと月ほど前のこと、休憩室のテレビに映った映像を見て、フィリピン出身のAが「大嫌いよ、この人たち」と言った。「誰なの?」と訊くと「イラン人よ」という。「どうしてイラン人が嫌いなの?」と訊くと、そんなこと訊かれるのは意外だ、というふうに、「イランってひどい国だもの、知ってるでしょ。」具体的にどうひどいのかを聞くと、少し考えて「イランでは女性はひどい扱いを受けてるのよ。そうそう、映画があったわ。サリー・フィールドが出てるやつで。イラン人と結婚してイランに行くんだけど、そこでだんなさんはだんだん暴力的になっていくの。彼女はアメリカに帰れなくなるのよ。」その場にいた白人のBも私たちの会話を聞いていて「私もその映画見たわ」と言う。実話だそうだ。というわけで、この映画を見ることにした。

ベティ(サリー・フィールド)はイラン人の夫ムーディ、娘のマータブとともに幸せな生活を送っていた。ムーディは医師だが、イラン人であることで職場でいやがらせを受けている。もう何年も故郷のイランに帰っていないムーディは、イランの家族からの強い「帰ってこいコール」を受けてベティを説得、2週間の休暇を家族でイランで過ごすことにする。テヘランの空港に降り立った彼らはムーディの家族から熱い歓迎を受けるが、時はイラン革命が起こったばかり。イスラムの戒律の適用が厳格化していて、外国人であるベティもチャドルを着用するようにいわれる。慣習の違いなどに息苦しさを感じていたベティは、帰国直前になってムーディから「もうアメリカには帰らない」と告げられる...。離婚すれば帰国は可能だが、その場合、子どもは夫のもとに残していかなければならない。イランの法律では子どもは夫のものになるからだ。娘と離れたくないベティはなんとかして娘と共に帰国の途を探ろうとするのだが...

これはベティ・マムーディという人の実際の体験をもとに書かれた本を映画化したものだ。映画化にあたってドラマチックな要素が加えられた部分があるにせよ(映画の最後にそういう断り書きが出ていた)、彼女が嘘をついているわけではないだろう。イランで密出国が見つかったら死刑、というのも本当なんだろうし、彼女が監禁されたり暴力を受けたのも事実なんだと思う。でも、だからイランはひどい国、と結論してしまえるだろうか。これは彼女の見たイランであって、彼女が知り得なかったこともたくさんあるのではないだろうか。

インターネットムービーデーターベースでは、「この映画は現代におけるナチのプロパガンダみたいなものだわ」という書き込みがあった。曰く、「この映画では、テヘランは路上で羊が鳴いている町として描かれているけど、1890年頃から後はテヘランに羊なんていたことはない。撮影されたのはイスラエルの田舎町で、人々に「イランが遅れた国である」という印象を持たせようとしている。役者のなかに誰一人イラン人はいなくて、誰もまともなペルシャ語を話していない。イラン人はいつも怒っているかのように描かれているけど、イラン人は基本的にあたたかい心の持ち主だし、とりわけ外国人に対しては親切だ。映画の中で言及されているイラン人の慣習についても、そんなのは聞いたことがない。確かにイランの女性はスカーフやマントをつけなければいけない、などの決まりがあって、それは人権を侵害していることだと思う。公的な立場においては男性と同等の扱いをうけていない。しかし、家の中のことに関して責任を持っているのは女性であり、他のどの国よりも強力な権利を持っている。公の場と現実の人々の生活とを分けて考えなくてはならない。結局この映画は、イランに対して間違った印象を作り出しているのだ。そして、それに気付いていない、ということが最悪だ。」...

映画はテンポよく進んでいくし、少し前の私だったら、映画が実話に基づいているということで、映画の内容を無批判に信じていただろう。そして、映画を現実だと思い、イランはひどい国、という印象を持っているアメリカ人は少なくないのだ...「この映画を見たよ」とBに話したときのBの反応からそう感じた。このことについてはまた近いうちに書きたいと思う。

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受信: 2009.03.05 22:43

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今回は普通の映画:Not Without My Daughter今朝のラジオで浜村淳が解説していました。調べてみると結構古い映画なんですね。近々日本で再上映??Not Without My DaughterNo.1 No.2 No.3 No.4 No.5No.6 No.7 No.8 アメリカ...... [続きを読む]

受信: 2012.03.31 15:30

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