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映画「シリアの花嫁」

「もう二度と帰れない。それでも私はこの境界を超える。」-このキャッチコピーを見て、花嫁はそれほど深く相手を愛しているのかと思ったら、彼女が嫁ぐのは実際には会ったことのない相手なのだ。

舞台はゴラン高原にある村。ゴラン高原はもともとシリア領だったが、1967年の第三次中東戦争でイスラエルが占領し、1981年には一方的にイスラエルに併合してしまった。というわけで、ゴラン高原に住んでいた人たちはイスラエル国籍を取得できるわけだ(ユダヤ教徒でなくてもいいんだろうか?イスラエルはこの人たちを追い出しはしなかったんだろうか?)が、自分たちはシリア人である、と思っている(事実そうである)人たちはイスラエル国籍を取ろうとはしない。というわけで、彼らは無国籍となった。花嫁のモナも無国籍だが、シリアに住んでいる男との縁談がととのったのでシリアに行くことになった。いったんシリア人と結婚するとシリア国籍を取得することになり、イスラエル領である(と言っているのはイスラエルだけで国際的には認められていない)ゴラン高原には二度と帰れない。イスラエルとシリアには国交がないからだ。それなのに何故会ったこともない相手のところへ嫁いでいこうとするのか、というのは、私たちには理解しにくいことだけど、パンフレットで臼杵陽さんが解説しているところによれば、それはこの人たちがシリア人であるという民族意識を持っているから、というのがひとつ、また、アラブ社会では親戚同士で結婚するという慣習が残っているから、というのがひとつ。花婿のタレルは人気タレントで、モナもテレビでは見たことがあり、おそらく好感は持っていたのだろう。

何にせよ結婚はめでたいことだ。というわけで、妹の結婚式のために、外国へ行っていた兄弟たちも戻ってくる。ロシア人と結婚したために(同じ宗教の相手ではないため)勘当された長男。イタリアで商売をしている二男。家族は彼らを大喜びで迎える-が、父親は長男を許そうとはしない。その父親は親シリア派のため当局からにらまれているし、モナの姉は夫との間に問題を抱えているし...と問題山積みの家族。重苦しい話になりそうな状況だが、結構随所に笑いがはさまる展開で、暗くならないのだ。

暗くならないのはやはり人間のあたたかさが描かれているからだろう(暗い映画はダメだというのではないが)。家族を隔てている壁の存在はもちろん非人間的な状況だし、ばかばかしい規則にふりまわされるのもそうだ。でも壁を作ったのも規則を作ったのも人間で、人間がそれにふりまわされるのではなく、人間がそれをコントロールすることができるはずなのだ。

シリア社会の事情が私にはよくわからない部分はあったものの、とても好きな映画だった。
個人的には長男のロシア人のお嫁さんに特に好感を持った。一所懸命片言のアラビア語を覚えてコミュニケーションをはかろうとする。そこの社会のやり方を尊重しようという姿勢が感じられて。でも、必要なときには自分の医師としてのスキルを活かせる。長男は自分の意思で結婚したし、二男も女性に対して積極的にアプローチするタイプで、必ずしも伝統的な結婚方法に従わない例が出てきていることがわかる。
結末は...とにかく印象的だ(^^)。

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コメント

遅蒔きながら、下高井戸で今日観て来ました。 「扉をたたく人」でとても素敵だったヒアム・アッバスが主演だということも楽しみにしていたのですが、やっぱり素敵でした。(^^) 特にあの最後の長いショット…。

後は自分が男であるせいもあって、長男と父親との関係の部分が一番印象に残りました。

ちょっと気になったとすれば、やはり外部者の視点あるいは価値観が感じられたところでしょうか。(娘を大学に行かせるよう夫を説得するシーンで、自分が大学に行くことを止めたように娘も止めるのかというようなセリフがあったのは、なかなかよかったですが…。)

警察署長は、多分「迷子の警察音楽隊」にも出演していたと思うのですが、この映画も、シリアはともかくとしても、エジプトで上映されたのかどうかが気になりました。 そう言えば「迷子の警察音楽隊」も「約束の旅路」も同じようにフランス・イスラエル…映画でしたが…。

投稿: axbxcx | 2009.07.13 22:12

axbxcx さん、

ご覧になりましたか(^^)。
これ、私はとても好きな映画でした。

ヒアム・アッバスって誰?って思ってしまったんですが(^^;)、おねえさんなんですね。「パラダイス・ナウ」にも出ていたんですね。ちょっとスーザン・サランドンと雰囲気が似てるかな、と思います(^^)。
最後のシーンは、私はやはりモナの行動にあっと思いましたが...。

外部者の価値観、というのは私はあまり気にならなかったのですが、この点に関しては、私はまだまだ鈍感なのでしょう。

「扉をたたく人」、見たいですが、保育士試験の勉強がすすんでいないので、やっぱり映画は試験が終わるまではおあずけです。それまでやっていてくれるといいんですが。

投稿: じゃりんこ | 2009.07.13 23:14

なぜかわからないのですが、実はモナの行動にまったく驚かなかったんですよ。 もちろん予想していたという訳ではないんですが、自然に感じたんです。 内心、それを待っていたとでも言うか…。

ヒアム・アッバスですが、最初から最後までさすが主役と思って見ていました。 格が違うとでも言いましょうか…。 私はあの佳作「画家と庭師とカンパーニュ」に出ていたのを知ってビックリでした。

モナの最後の行動、確かにドラマティックなのかも知れませんが、私はむしろ姉だけがそれに気づくところ、そして姉がモナを見送る表情、さらに最後のロング・ショットで延々と姉の表情の変化を撮るところ、それがエンディングだと感じたんです。 モナがこれからどうなるかよりも、村に残った姉(たち)と、そして村の将来に思いを馳せていた私でした。 いずれにせよ、たくさんの人物が登場しながら、それぞれがきちんと描きこまれていて、とても身近に感じられる映画でした。

同じ映画を観て、そして気に入って、なおかつこれだけ観ているところ感じていることが違うんですから、映画って面白いなあと思います。

投稿: axbxcx | 2009.07.14 00:07

axbxcx さん、

>同じ映画を観て、そして気に入って、なおかつこれだけ観ているところ感じていることが違うんですから、映画って面白いなあと思います。

ほんとですね。で、
>たくさんの人物が登場しながら、それぞれがきちんと描きこまれていて
というところも、そうだなぁと思いました。

もう一度見てみたくなりました(^^)。

私は先月からツタヤディスカスを休会して、テレビ放映された映画を撮りためたものを見ています。今日はヒッチコックの「知りすぎていた男」を見たんですが、おもしろかったです(^^)。

投稿: じゃりんこ | 2009.07.14 01:22

じゃりんこさん、「パラダイス・ナウ」を観たときはまだヒアム・アッバスを認識していませんでした。 主人公(サイード)のお母さんの役だったんですね。

http://www.youtube.com/watch?v=tg66q9aX6wo&NR=1

投稿: axbxcx | 2009.07.14 08:00

axbxcx さん、

私も全然でした(^^;)。
やっぱりスーザン・サランドンと雰囲気が似てるなぁと思ってしまいました(^^)。

パラダイス・ナウ、分割はされていますが、ネットで見られるんですね。
「泥の河」もないかな、と思ったのですが、さすがに全部は見られませんでした。でも、さわりの部分がアップされていて、やっぱりネットはすごいなぁと思いました。

投稿: じゃりんこ | 2009.07.14 20:14

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