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本「ベーシック・インカム入門」by 山森亮

「ベーシック・インカム」とは、すべての人に無条件で給付されるお金。
このところの派遣切りとか内定取り消しとか、暮らしていくことが大変という人がたくさん生まれてきているなか、「ベーシック・インカム制度を導入すべきだ」という声を聞くようになり、「何それ?」と思って入門書を読んでみることにした。

すべての人に無条件で?
つまり、お金持ちにも、お金のない人にも、一律、人間らしく暮らしていけるだけのお金が支給される。お金持ちにお金を支給するなんてばかげているのでは?
働かなくてもお金がもらえるわけ?じゃあ、誰も働かなくなるのでは?
第一、そんなお金がどこから出てくるわけ?財源は?...
と、??だらけの考え方だ。

でも、じゃあ、今の制度はどうか。失業したら?失業保険がもらえる。生活保護を申請することもできる。実際、このところ生活保護申請が急増しているというではないか。だけど、申請したからといって認められるとは限らない。いろいろプライベートなことが調べられ、めんどくさい手続きがあり、...なんといっても、生活保護を申請することに抵抗を感じる人が多いのではないか。とりわけ、若い独身の人が生活保護を申請したら「いい若いもんが」と白い目で見られる、ということはありそうだ。でも、働きたくても仕事がないのだ。小さい子どもを抱えた若いシングルママにしても、仕事をして少しでも収入が得られるようになれば生活保護は切っていかれる。子どもを保育園に預け、働きづめの生活。長時間働いても低賃金でぎりぎりの生活だ...。そして複雑な年金制度。保険料を払い込んでいるはずなのに記録がなくなっているとか...現在の日本では、生活保護と社会保険制度ですべての人に健康で文化的な最低限度の生活を保障しようとしているようだが、うまく機能しているとはいえない。この本によれば、日本の状況は「100世帯中、10世帯が生活保護基準以下の生活をしているが、実際に保護を受けることができているのは2世帯」(p.32)で、諸外国に比べても極端に低い数字なのだという。

最初にあげたいくつかの疑問について、この本では、たとえば、「お金が払われなくても、人々は子育てなどの重要な仕事をしてきた」と言う。「働かざる者食うべからず」よりも「衣食足りて礼節を知る」という立場だ。「ベーシック・インカムが導入されれば、きつい、汚い、危険という3K仕事に従事する人がいなくなるのでは」という問いには、「需要と供給の関係で、そういう仕事の賃金は上がるのでは」ということを言っておられる。生きていくためにやりたくもない仕事をしている人は、とりあえず食べることはできるのだから、仕事をやめればいい。無理に仕事をしなくてもいいのだ。そして、人気のない仕事の給料はあがり、なんとしてもお金が必要、という人はそういう仕事につく、という選択だってできる。大学教員の給料より3K仕事の給料のほうが高い、ということが起こってくれば、そちらを選ぶ人も出てくるのでは...。そしてもちろん、お金よりも研究を選ぶ人もいるだろうし。

さらに、財源については、「ベーシック・インカムを導入することで、生活保護やそのほかの年金制度などをなくすことができるのだから、たとえばまずそれらをあてることができる」と言う。ただ、具体的な金額のシミュレーションなどはないので、この制度が本当に夢物語ではなく実現可能なのかどうかはなんともわからない。

職場の休憩室で読んでいたりしたので、「何の本を読んでるの?」と訊かれることがあり、ベーシック・インカムの考え方について、理解しているかぎりのところを説明しても、「働かないでお金をもらってる人っていやだわ」というような反応が返ってくる。「子どもを何人も産んで、働けないからって、お金をもらい続けるなんて。それって私たちの払ってる税金なのよ。何か仕事をするべきよ。」...そういう人に対してベーシック・インカムの利点を納得させられるほどには、この考え方を十分には理解できなかった。経済学の教科書的な記述の部分はやや退屈(^^;)で、私には消化不良の部分もあったけど、これが「ベーシック・インカムを巡る初めての包括的な入門書」(毎日新聞の書評)だそうなので、とっかかりにはいいのかもしれない。今の制度のままでいいとは思えないし、確かにこういう方法を検討してみる価値はありそうに思える。

4334034926ベーシック・インカム入門 (光文社新書)
山森亮
光文社 2009-02-17

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コメント

私もちょっと前に読んでいました! 興味深い考え方で検討してみる価値は十分あると思いました。人を肯定的に捉えているところがいいですね。

投稿: saeki | 2009.04.09 03:50

あ、saeki さんも読んでおられましたか(^^)。
そうですよね。共産主義とか社会主義とかが失敗してきているけど、こういう方法はありかもしれないな、と思いました。人間の自由な活動は阻害されないし、むしろ、生活の心配をしなくていいなら、自分の本当に好きなことがやりやすくなりますものね。

投稿: じゃりんこ | 2009.04.09 06:33

じゃりんこさん

はじめまして。

私の名前のところにアドレスを入れましたが、
ベーシック・インカムについて、関曠野さんが本格的な講演を行ってくれました。

山森さんの本では弱かった理論的裏づけがなされています。ぜひご覧になってみてください。要約版から読まれると、さらに理解が進むと思います。

投稿: homeya | 2009.05.27 16:10

homeya さん、はじめまして。

「ベーシック・インカム・実現を探る会」ってあるんですね。

今は8月の保育士試験に向けた勉強で手一杯で、ちょっとベーシック・インカムのことを勉強する余力がありませんが、また気力が満ちてきたら勉強したいと思います。ご紹介ありがとうございましたm(^^)m。

投稿: じゃりんこ | 2009.05.27 19:56

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