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ビデオ「阿賀に生きる」

新潟県阿賀野川流域の村で暮らす人々を撮ったドキュメンタリー。
フィールドワークというのは、そこに住む人々との間に本当の信頼関係が生まれないと成功しないものだと思う。ましてビデオカメラを使ったものとなるとむずかしいだろう。人はカメラの前でかまえるものだし、たいていの場合、自分のふだんの生活をカメラの前にさらしたくないものだ。この映画は、佐藤真監督はじめ7人のスタッフが阿賀野川沿いの家に3年間住み込んで、地域の人々の田んぼ仕事を手伝ったり、一緒に歌合戦に興じたり、という暮らしのなかで撮られたもの。時々、「おや、撮影しているのかい。こんな年寄りを撮るなよ」というコメントがお国ことばではさまるが、撮影者を拒否している感じではなく、受け入れている雰囲気が感じられる。

四季折々の村の風景が美しい。雪におおわれた山々、緑豊かな川沿い、などの自然の景色はもちろん、夏祭り、小さな民家、干し柿のつるされた家の中、など、これを撮っている人が自分の見ているものに感嘆しているのが伝わる。人の表情もそうだ。この映画に登場する方々はほとんどがかなり高齢の方たちなのだけど、それぞれ自分らしく生きておられる様がステキだ。船大工だった人、重労働であるコメ作りを続ける人...これを撮っている人が、ほんとにすごいなぁ、と尊敬と共感の目で見ていることが伝わる。

この映画を撮ろうとしたきっかけは新潟水俣病のことだったのだろう。映画のなかでも、もちろんそのことに触れられていて、それがどのようにして起こったのか、また、人々が集会で話し合う様子や裁判にでかける様子、原告団に加わったことで村でどのように見られたのか、などについて言及されている。でも、映画は「新潟水俣病を告発する」というメッセージを前面に押し出したものではなく、病気で変形した指がふるえる様子が時折映し出されたり、感覚がなくなったために火傷にも気付かないような状態が語られたり、と、それが生活に与えた影響を静かに見せるだけ。メインとなっているのは、阿賀野川沿いで営まれている豊かな(金銭的にではないけれど、人々が関わりあって、自然と、古くからの風習が大切にされている)暮らしだ。

現代社会では、「年をとることは社会のお荷物になる」という印象が強い。施設で暮らしたり、一人暮らしだったり。でも、そうじゃない暮らし方もある。自分がしてきたことに誇りが持てる、そんな人生。「たいしたことないよ」「つまらんことだよ」と言いながら、でも、昔の自分も今の自分も否定することはない。なんでも「昔はよかった」と言うつもりは毛頭ないし、この映画のなかで、お年寄りに比べて若い人が少ない村の姿に、これでいいのか、という思いもある。ただ、少なくとも、こういう暮らしが記録され、私たちがそれを見ることで、今の都会生活が失っているものに気づかせられる。

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