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映画「小さき声のカノン-選択する人々」

 福島の原発事故からもうすぐ4年が経とうとしている。被曝を恐れ、いったんは福島から避難したものの、家族が離れて暮らすストレスなど、様々な理由から、福島で暮らす選択をした人達がいる。線量計で通学路の放射線量を測り、できる限りの除染をし、食べ物に気を配って、子ども達を被曝から守ろうと精一杯のことをしている。政府は年間被ばく量の基準値をひきあげた。食材も100ベクレル以下なら大丈夫だといって福島産の米を給食に使うと言う。本当に大丈夫なのか。不安はつきない。
 避難生活を選択した人もいる。子どもが「足の裏が痛い」と言いだし、このままでは子どもが死んでしまうのでは、と不安になった。強制避難区域でなければ「自主避難」と言われ、政府からの支援はほとんどない。帰還をすれば90万円もらえると言うが、とても帰る気にはなれない。
 映画は、チェルノブイリ事故の後のベラルーシの取り組みや、放射線の影響のない場所で一定期間保養することが子どもの体内の放射線を排出するのに効果があることについて紹介していく。
 福島の事故の後、様々な選択をせざるをえなかった人達に対し、民間からの支援はある程度あるものの、公的な支援がほとんどない実態。除染も住民が自主的に行っていることが多いし、保養が公的に推奨されていることもない。復興支援のためのお金はそういうところにこそ使われるべきではないのか。

 映画の後、監督の鎌仲ひとみさんと歌人の俵万智さんの対談があった。震災の後、仙台から石垣島へ引っ越すことになった俵さん。「あなたが仙台を離れることが、『仙台が危険なところである』ような印象を与える」などのように言われたりした。被害を受けた人達が分断されてしまっている。それぞれの人に事情があり、みなそれぞれの場所で精いっぱい生きているのに。

 「ヒバクシャ」「六ヶ所村ラプソディ-」「ミツバチの羽音と地球の回転」とずっと放射能の問題を追ってきた鎌仲さんは、SPEEDIが六ヶ所村で訓練を行う様子も見たことがあったという。128億円かけて作られたというSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)だが、福島の事故の時には機能しなかった。「ミツバチ-」では持続可能エネルギーの利用について紹介したり、原発に頼らない社会の可能性を示されていたけれど、自分の映画はまだまだ力が足りなくて、とおっしゃる。
 
 「小さき声のカノン」はたくさんの人に見てもらいたい。福島にとどまることも離れることも、どちらも簡単なことではないのだ。当事者の必死の思いの選択に対し、「○○すべきだ」などの言動は当事者のストレスを増すだけだ。とどまった人達には、せめて子ども達が被曝の影響を少しでも減らせるように保養事業などの支援をすべきだろうし、避難を選択した人達にも金銭的、精神的な支援が必要だろう。当事者がしてほしい支援を公的な機関が後押しできるように、私達も声をあげていかなければならない。そして、こんな苦しい選択を迫られる人が出ないよう、原発の再稼働ストップに向けて声をあげていかなければ…。

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